見出し画像

【アニメ感想】響け!ユーフォニアム 1期〜アンサンブルコンテスト

『けいおん!』『聲の形』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』など数々の名作で衝撃と感動を与えてくれた京都アニメーション。
そして『ラブライブ!』『Steins;Gate』『宇宙よりも遠い場所』でシリーズ構成と脚本を手掛けた花田十輝氏。
この組み合わせは一定のクオリティを確約されたような作品なんだけど、なかなか手を付けられず。

吹奏楽ってのがね…。
姉が中学の時に吹奏楽部に入ってたくらいで、自分とはほぼ無縁の世界。
「ていえん」が庭園じゃなくて定期演奏会だってのは知ってる。
ただ、ユーフォニアムが楽器名と知っていたかどうかは怪しいレベル。

4月から3期が始まるということと、スタッフへの信頼で観てみることに。


第1期

序盤はコミカルでのんびりした雰囲気。
そもそも主人公が吹奏楽部への入部を迷ってるし…。
そして周りに流されて入部。
部も全国大会を目指すようなレベルや雰囲気ではない。
多数決で目標決めるのってどうなのって思っちゃったけど、部活ってそんなもんだよな。

辛辣な言葉を吐く顧問を見返すために団結し、練習すれば上手くなれることを体感。
顧問にもそれが認められてさらに上達していく。
滝先生優秀やわ。
最初は淡い目標だった全国大会出場が少しずつ明確な目標になり、青春部活アニメの様相を呈していく。

部員がだんだん本気になって頑張る姿にはグッとくる。
トランペットのソロオーディションでのそれぞれの想いのぶつかり合い。
演奏させてもらえなくて「もっと上手くなりたい」と悔しがる久美子。
みんな本気でやってるからこそ胸を打つ。

すっかり世界に入り込んでしまって、オーディションの結果発表はドキドキしたし、コンクールの結果発表は画面の前で一緒にお祈りしてた。


第2期

現2年生の大量退部の詳細が明かされる。
南中出身者たちは最後のコンクールでの銀賞の悔しさから、不真面目な3年生と衝突してしまったのかな。
そもそも今は強豪校でもない北宇治に入学してる時点でリベンジは厳しいのでは…。
「私たちが北宇治を変える!」って意気込んで入学したのだとしたら、心が折れるのもしょうがないか。
あすか先輩の言うように3年生の卒業まで待てば良いのに、それができないのはすぐに結果を求める若さゆえか。
時間の無駄だし。
退部しただけで転校したわけじゃないなら出戻りする人がもっといてもいいと思うけど、コンクールへの出場人数が決まっている以上、さすがに遠慮するか…。

希美先輩とみぞれ先輩のすれ違いで生じたゴタゴタ。
お互い向き合って言葉を交わし、和解したシーンは泣けた。
『ラブライブ!サンシャイン!!』の「ハグしよ」を思い出しちゃった。
希美のキャラデザが果南に似てるのもあるけど…。

優子先輩も良い動きしてた。
1期では「香織先輩マジエンジェル」ってウザかったけど、人となりを知っていくにつれてええ子やなぁってなった。
周りの人間を思いやれる彼女は部長に相応しい。

夏紀先輩は1期からずっと好き。
気だるい感じの登場だったけど、オーディションに選ばれた後輩をフォローする優しさ。
今回の件でも優しさが溢れてた。


関西大会直前の緊張感と高揚感、本番演奏時の熱と回想の演出に乗せられて涙が止まらない。
全国大会代表選出発表の瞬間は一緒に嬉しくなった。


中盤以降から、あすか先輩の内情が明かされる。
1期からずっと掴みどころがなくてミステリアスだったけど、今までの言動にも納得させられる背景。
久美子の姉の件とも絡み合う素晴らしいシナリオ。

この歳ごろは自我が存在するのに経済力が無いから、ある程度は親に従わざるを得ない人がほとんど。
何も言わずに従えば、久美子の姉のように自分で選択したかのように親には認識される。
親としては「自由に選ばせること」よりも「自分で選択したと自覚させること」の方が重要なんだな、と教わった。
でも実際問題、10代で将来の選択ってキツくね?
自分は高三で読んだ『ブラック・ジャック』に憧れて医療系に進んだけど、そんな一時の熱で選んで良かったのかな…。
まぁ過去の選択の良し悪しなんて、現在の満足度で変わるから考えてもしょうがないか。

あすか先輩への叫ぶような久美子のセリフには心が震えた。
声優さんのすごさを見せつけられた。

全国大会での結果発表も一緒に祈ってたけど銅賞て…。
ちょっと笑っちゃった。
まぁ現実はこんなもんか。

黄前姉妹の関係が良かった。
仲良し姉妹ばかりアニメで見てきたけど、これが一番リアルだと思う。

卒業式後のあすか先輩との別れ。
めっちゃ寂しい…。
内情が明かされたことでいつの間にか魅力的な存在になっていたみたい。
全国模試で30位以内とか只者じゃねえし。
別れのシーンもかっこいい。

あすか先輩の父親からもらった曲名が「響け!ユーフォニアム」って…。
こういうシナリオと演出めっちゃ好き。
そしてこの曲もめっちゃ好き。


リズと青い鳥

時系列的には続編なんだけど、登場人物と舞台設定が同じ別作品を観ているかのような感覚に襲われる。
すぐに目に付くのがキャラクターの線の細さ。
動きも繊細。

突然やってきた青い鳥(希美)を手放したくないリズ(みぞれ)だったのが、自由に羽ばたける青い鳥(みぞれ)を送り出すリズ(希美)に変わっていく。
この2人の心情変化が美しく描かれている。
描写が直接的ではなく、セリフ少なめで表情や動き、音楽で描くのが印象的。
ラストの足音が重なるシーンは素晴らしい。

久美子麗奈コンビの使い方も上手い。
パッとしないみぞれの演奏に苦言を呈す麗奈だったり、このコンビが掛け合いパートを演奏するのを希美とみぞれに聞かせて揺さぶったり。

上質な映画を観たって感じ。
薄味のようで旨味がしっかりあるから何度もお代わりしたくなるような…。
直木賞じゃなくて芥川賞のような…。
この表現はテレビアニメではできないだろうなぁ。
『聲の形』のメインスタッフが制作と知って納得。
公式HPにあるスタッフコメントで語られている内容がしっかりと表現されている。

2期からもうちょい時間空けて観れば良かった…。
毛色が違いすぎて観始めてからしばらく頭の整理が追いつかんかった。


誓いのフィナーレ

作風が戻って物足りなさのようなものを感じつつ、同時にやっぱりこれも好きだな、と思う。

久美子の恋愛エピソードもあって、青春全開で良き。
クセのある1年生に翻弄されつつも久美子らしく向き合っていく。

オーディションの件で再び一悶着あるのは、吹奏楽部あるあるってことか。
下級生が出ることで上級生の出場機会を奪ってしまう。
スポーツのように途中交代できれば思い出出場して溜飲を下げられるけど、それは無理だし結果も最後まで分からないから難しいところ。
評価基準も曖昧だから結果が出なかった時に明確な戦犯が発生しにくく、それゆえ「だったら○○が出てれば良かった」となる。
それを恐れる奏と、自信と信念があるから恐れない麗奈。
オーディションでは当落したそれぞれがしっかり納得することが重要なんだけど、気持ちは見えないものだからこの問題はずっと続くんだろう。
でも実際、3年生が最後の大会に出られないってなったら結構キツいな。
ただ下級生としても最大で3回しかチャンスがないから、学年関係なくベストメンバーで挑みたいよね。
全国大会金賞を目標としたならばお互いが腹括るしかない。

美玲の悩みは部活あるあるかな。
いや、先輩に気に入られるかどうかって社会人になっても続く気が…。
性格や相性の問題だからしょうがないんだよ。
美玲と気が合う先輩もきっといるはず。
こういう壁に最初にぶち当たって悩むのが青春って感じがして良き。

『リズと青い鳥』でのやり取りを匂わす希美とみぞれの描写や、「ハッピーアイスクリーム!」も出てきてニヤニヤ。

関西大会会場でのOB登場は胸熱。
やっぱりあすか先輩は偉大だな。

希美とみぞれのことを想うとダメ金はちょっと切ない。
まぁゴタゴタのあった学年だし、しょうがないか。
奏の「悔しくて死にそうです」には思わずにんまり。


アンサンブルコンテスト

ワンカット目からいきなりユーフォニアムの質感がえげつない。
前作までももちろん美しかったけど、楽器作画監督が変わってさらにクオリティが上がった。

久美子が伸び悩むメンバーに的確に助言し、麗奈から部長への適性を認められて少しずつ自信をつけていく成長の物語。
3期への助走って感じ。

麗奈にアンコンのグループに誘われた時のやりとり、その後のぶっちゃけトークがすごくいい。
自分が認める相手に認められるってスキップしちゃうくらい嬉しいよね。

自由にグループ決めって酷…。
あぶれた子たちどうすんのよってハラハラしてたけど、受験を終えた3年生3人が助っ人って。
最高かよ。

1時間とは思えないてんこ盛りな内容。
あっという間だけど濃密で素晴らしい脚本。


全編通して、作画の美しさはさすがの京アニクオリティ。
金管楽器の光沢とか…。
何気ない校内風景のワンカットですらため息が出るほど美しい。
OPとEDのアニメーションも京アニっぽくてすごく好き。


『けいおん!』や『聲の形』と同様に、今作も非現実的な設定が無い中で高校生活と彼らの心情を丁寧に描いている。
登場人物一人一人に人間味があってリアリティが高い。

『ラブライブ!』や最近観た『ようこそ実力至上主義の教室へ』は同じ高校生を描いていても印象が異なる。
フィクション設定が一つあることで、自分で線を引いてしまうだけかも知れないけど、登場人物は"キャラクター"って感じ。偶像と言ってもいい。
フィクションの世界で生きる登場人物たちが見せる人間臭さに共感したり魅力を感じて、"推し"ができていく。
「描いたことが全てですので、この中からどうぞ推しを見つけてください」と言われてるような。

でも今作は現実世界を生きる彼女たちの一コマを見ているかのような錯覚に陥り、"推し"ではなく現実世界で接する相手に抱くような"好感"が生まれる。
現実世界だと人間には表裏があるし、全部が好きって人間はなかなかいない。
だから登場人物に好感を抱いたとしても、全てが描かれているわけではないと思うから「全てが好き!!この子が推しです!!」とはならない。
全てを知ったわけではないと思わせられるからリアリティがあるのか、リアリティを感じているから全てを知ったわけではないと思うのか。

結局、自分の見方次第だと思われ。
偏見と言ってもいい。

今作は特に会話のやり取りがすごく好き。
声のトーンの高低にリアリティを感じる。
特に久美子の低いトーンの声が好き。
黒沢ともよさんの声質が好きなだけかもしれないが…。


吹奏楽についての知識が得られるのも楽しい。
そもそも音を出すことすら難しいのね。
木管楽器は屋外に出せないからマーチングでは使用しないとか。
無縁だからって敬遠してたけど、無縁だからこそ見聞が広がる良い機会。
正直今は「吹奏楽最高!」ってなってる。

なんで学校って吹奏楽なんだろ。
弦楽器はコンバスくらいしかない。
ヴァイオリンって何億円もする名器があったりするから、単純な演奏技術だけで競わせるためかな。
いや、管楽器にも名器はありそう。
となると練習量を測る目的で、管楽器の方が練習量による演奏レベルの差が大きいとか?

Yahoo知恵袋によると弦楽器は習得に時間がかかるから、とのこと。
なるほど。
たしかに北宇治でもコンバス奏者は経験者だし、みどりの入部以前は不在だった。
管楽器は部活で初心者から始めても、3年である程度まで上達できるらしい。

弦楽器が安易に習得できて演奏レベルに差が出ないと思ったが、全くの逆。
弦楽器奏者の皆様すいません。
練習で演奏レベルの差が出るという意味では当たらずとも遠からず。


青春ものってやっぱり良いな。
まだ何者でもなく、何者かになれるだろうかと悩み、奮闘する姿は尊い。

久美子と麗奈が最初の頃にギクシャクしてたのが遠い昔に思える。
今はお互いが一番の理解者として盟友のようになってる。
ちょっとしたきっかけでくっついたり離れたり。
限られたこの期間はかけがえのないもの。

果たして久美子たちはどのように高校生活を終えるのか。
彼女たちの現在(いま)にようやく追いつけた。

この記事が参加している募集

アニメ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?