星井七億

兼業ライター。ジャンルは百合と怪文書

同性愛を悩まなかったあの頃の私に

20歳だった私の自転車のカゴの中には、一冊のもらいものの聖書が置いてあった。
 外に出しっぱなしの自転車は雨でずぶ濡れになって、カゴの中の聖書はしわしわになっていた。
 結局一度も読むことなく、私は濡れた聖書を捨てた。

 自分が同性にも惹かれる人間であることに気付いたのは12歳の頃だった。
 Sという名の同性のクラスメートに、恋心とも劣情とも、その頃の私にはラベリングができない感情を抱いていた。

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とんねるずをちゃんと擁護できる人がいない理由

B級映画マニアという人々がいる。自分の好きなものを悪し様に言われると大体の人間は怒るものだけれど、例えばB級映画を観た人が「この映画は駄作だ!」と評したとしても、B級映画マニアの方々は怒らないどころかその意見を喜んで肯定することが多いだろう。それは「批判的意見も批評のひとつだ」と言った心の余裕からくるものではなく、そういうものだから魅力を感じるのであって、「その通りだ。だから面白い」と頷くだろう。

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1本800円で書かれた走れメロス

メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の野党を除かねばならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。が、インターネットには真実が載っているのでそれだけで充分であった。
 妹の結婚式のための衣装を買いにシラクスの市にやってきたメロスは、民衆の空気が暗いことに気付き、街人に理由を訊ねた。
「王様は人を殺します」
「なぜ殺すのだ」
「日本人が嫌いだからです。これは個人ブログ経由の情報ですが、実は王様は在日外

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特別ではない結婚をして

今年の七月に結婚して二ヶ月が経った。以降、結婚相手のことを「相方」とちょっとイタい感じの呼称で書かせてもらう。

 私がツイッターの相互フォロワーだった「相方」と初めて出会ったのは2015年の夏コミ会場。突然、相方からツイッターでDMが届き「よかったらお茶でもしませんか?」と誘われたことがきっかけだった。ときおり写真のモデルをしていた相方は、インスタグラムにプロのカメラマンに撮ってもらった自分の写

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あの子の強さに甘えてはいけない

両親が離婚して母子家庭になり、それゆえ家がとてつもない貧困になってしまい、それを理由に学校でいじめられた子供がいた。両親が別れてしまったのは、父親がどうしようもないろくでなしだったため、未来を考えると母も子も幸せにはなれないと母が決断したからだ。
 もしここに外部の大人達が、いじめの加害者を批判するより先に、被害者に対する慰めの言葉をかけるより先に「子供がいじめられたのは親が離婚したせいだ」と口を

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「君の名は。」を百合厨視点で読み解く

新海誠監督の「君の名は。」が現時点で興行収入150億超えのメガヒットとなっている。私は2回観た。最初はひとりで、2回目はまだ観てないという知人の付き添いで。

 作品の基本情報は今さら語らないとして、本作は予告編を、いやポスターだけ見てもわかるように互いに惹かれあう男女の関係がシナリオの下敷きにある。主人公の瀧と三葉の関係のみならず、瀧と奥寺先輩、奥寺先輩に憧れる男達、テッシーとさやちゃん、三葉の

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