2016年劇場で見た映画ランキング

 2016年の始めに「週に一度映画館に行く」と決め、元日から「スターウォーズ/フォースの覚醒」で映画初めを済ませた。
 結局週に一度観に行くことは叶わずに、昨年劇場で観た映画は全41本。2016年は邦画の当たり年、特に東宝がでたらめに稼いだ年になったという。自分で言うのも何だけれど私も一般的な人達よりはそこそこ観ている方ではないか。東宝の隆盛も9割くらいは貧乏暇なし雀の涙な私が貴重な時間とお金を貢いだおかげだと思ってもいいのかなと思う。

 先日、映画評論家としても知られるラッパーの宇多丸氏が自身のラジオ番組で今年観た映画をランキング付けしていた。興味深いラインナップだった。私はといえば毎年百合漫画ランキングなどを書き記しているけれど、なにぶん他人の付けたランキングを見るのが好きなうえランキング形式で自分の好きなコンテンツを発表するのが好きな性分。ついでに映画のほうもランキング付けしていきたい。
 今年公開された作品では観たくても予定が合わずに観られなかった作品も多かった。「トランボ 」や「ブルックリン」「裸足の季節」「葛城事件」「淵に立つ」など、これらも観ずにランク付けなぞするのもおこがましい気がするもののどうか赦してほしい。あと公開開始が去年であっても劇場で観たのは今年、という作品もあるのでご了承のほどを。


20位 ドント・ブリーズ

 盲目の老人の家に侵入する若者の強盗三人組。しかし老人の正体は暗闇の中でも敵をサーチアンドデストロイできる殺戮マシーンだった、という話。

 実は去年最後に観た映画だった。あの手この手の演出を用いて「音を立てることの恐怖」を観客に植え付けてくる、緊張と緩和のノンストップ波状攻撃。ツイッターで誰かが言ってたか「ホーム・アローンLv.100」。実は相当屈折していた殺戮じいさんが、次第にフランケンシュタイン的に可愛げのあるキャラクターに見えなくもな…‥…。



19位 パディントン

 ジャングルを追われた子熊がロンドンに住む一家の元へお世話になり、自分を剥製にしようとする老婆とドンパチする話である。 

 名古屋の映画館で観た。正直ほとんど期待していなかったのだけれど、パディントンの可愛らしさと盛り上げどころをわかっているまとまったシナリオに、ファミリームービーとして極めて平均点の高い作品だった。映画に慣れた大人には展開が読めてしまう部分も多かったのだけれど、子どもがいる家族がクリスマスに観る作品としては百点満点だ。



18位 劇場版探偵オペラミルキィホームズ~逆襲のミルキィホームズ~

 おなじみのミルキィホームズの面々が、トイズでドンパチする話。人気アニメの劇場版にして完結編。

 TVアニメ版の1期が良作であったものの、続編が作られる度に面白さが右肩下がりしていったこのシリーズ。こうなったら最後まで付き合ってやると思って観に行った劇場版は、TVのテンションをそのままに、キャラの魅力を充分に活かしながらグダグダになりつつあった設定や伏線をきっちりまとめあげ、完結編として申し分ないクオリティに仕上がっていた。あれだけ引っ張っていた森アーティの扱いがさっぱりしてるのは気になるところだったが……。



17位 ヘイトフル・エイト

 賞金稼ぎや女盗賊、執行人に元将軍など、色々ワケアリな八人が雪山のロッジでドンパチやる話。

 近作の「イングロリアス・バスターズ」や「ジャンゴ 繋がれざるもの」が非常によかったのだけれど、それらにあったようなカタルシスを期待すると肩透かしをくらうし、ましてや日本が宣伝で謳っているようなミステリー要素を期待してもガッカリしてしまう。しかしタランティーノの作家性や持ち合わせのメッセージ、それらをバッチリに活かすシナリオの巧みさや演者のオーラはやはりどれも一級品だった。好き嫌いはハッキリ分かれそうだ(タランティーノの作品って大概そうだけれど)。



16位 TOO YOUNG TOO DIE!若くして死ぬ

 修学旅行のバス事故で死んだ神木隆之介が好きだったクラスメートに出会うためだけに地獄でバンドを組む話。

 日本で一番稼ぐ声優になってしまった神木隆之介の手にかかれば、映画監督作ではなかなかヒットを飛ばせなかったクドカンを興行収入ランキングで1位に押し上げることすらできるのだ。ドラマではそれなりの質をあげてくるものの、映画では原作が付かないといまいちなクオリティに納まってしまうクドカンの脚本が、これまででもっとも嫌味のない出来に仕上がっていて面白かった。他者の性欲の発露に極度な嫌悪感を抱くタイプの人には厳しい作品かもしれない。



15位 レヴェナント 蘇えりし者

 息子を殺され雪山に置き去りにされたディカプリオが、復讐を誓って満身創痍でドンパチする話。

 ディカプリオが初のアカデミー賞主演男優賞を取ったり、イニャリトゥがに年連続で監督賞を受賞したりして色々と話題になった本作。身体を張れば演者の質に結びつくわけではないけれど、これが変にアクション俳優とかではなく、いい感じの滋味を蓄えてきた今のディカプリオだからこそ演じられたいいタイミングの役どころだったと思う。



14位 サウルの息子

 ホロコーストで殺される同胞の死体を処理する業務に就いているユダヤ人の男が、「息子」の死体にユダヤ式の埋葬を施すために奮闘する話。

 サウルの姿をカメラが追い続けていく演出は徹夜明けの身体になかなか辛く、一度目の鑑賞は船を漕ぎながら途切れ途切れで観てしまい、DVDで再鑑賞。サウルの緊迫感とじわじわと広がりゆく収容所の混乱と狂気を訴えながら尊厳を取り戻していく様を描くのに、この演出は極めて真実ともいえる手法だったのだろう。本作を押さえてパルムドールを受賞した「ディーパンの戦い」はイマイチだった。

 


13位 ズートピア


 新米警官のウサギと詐欺師のキツネがカワウソを探して長めのデートをする話。

 こういう誠実なコンテンツが生まれ、ヒットして評価される土壌がこれから奪われないことを祈る。ネットの無責任な言葉じゃ逆立ちしても敵わないほど、シナリオからキャラに至るまで極めて高いバランスによって作られている。こういったものを作ってもらえる国に生きていること、きちんと観ることができる環境にある国に生きていること、きちんと評価してもらえる国に生きていること、それだけで多少は恵まれているのだ。



12位 ルーム

 誘拐犯によって監禁されている親子が小さな部屋から脱出し、産まれてからずっと狭い部屋の中しか知らずに生きてきた男の子が「世界」に触れる話。

 世界が広がっていくことの興奮と恐怖、求めてもないのに得ていくものと気が付けば失っていたもの。誰もが通り過ぎていく時期を冒険譚ではない形でここまで感覚に訴えるレベルで表現してくれるなんて。こういうのはキッズ向け映画だけの仕事ではないんだなと再確認。子役の演技が秀逸すぎるだけにますます。




11位 ストレイト・アウタ・コンプトン

 アメリカで一世を風靡した伝説のヒップホップグループ・N.W.Aの結成から解散までを記した話。ドンパチもあるよ!

 本国では興行収入ランキング1位、さらに日本ではラップブーム到来と宣伝さえガッツリしていればこちらでもヒットしていてもおかしくないものだけれど、特にしなかった。宣伝しづらいコンテンツなのは確かなのだけれど。いつだって青春の儚さとは理不尽への怒りこそが核にあるのだと気付かされる、極めて正しい青春映画。我が身を振り返れば日本の警察もまた、ファックしたくなるような案件ばっかりだ。




10位 ちはやふる 上の句/下の句

 競技かるたをテーマにした人気漫画の実写化。競技かるたの魅力に取り憑かれた少女と仲間たちが、畳の上でドンパチする話。

 漫画の実写映画化となると拒絶反応を示す人がやたら多いけれど、こと少女漫画に関しては成功例が非常に多い。特に今作はここ数年でも最高レベルの完成度だったと思う。単に原作をなぞるだけではなく、魅力的な演者をしっかりと活かして極めて質の高い青春スポ根映画兼アイドル映画を造ってくれたことがただただ嬉しい。松岡茉優の強烈なオーラにも注目。あと邦画屈指の指フェチ映画でもあった。




9位 怒り

 三人のそっくりな塩顔のうち誰かが殺人犯である話。

 ある実在の有名な事件のエッセンスが入っているため、それを知っていれば誰が犯人なのかは簡単にわかる。本作の軸や核はそこにない。愛する人を疑うこと、愛する人に疑われること、信じきれなかったことと信じてもらえなかったこと。やりきれない感情は誰に話せばいいのか、誰から話してもらいたいのか。誰ならば受け止めてもらえるのか。どうやって受け止めればいいのか。直視するのも厳しいシーンはあったものの、それ以上にきちんと見据えなければ見失ってしまうことも多いのが人間の距離感というものかもしれない。




8位 君の名は。

 実質百合映画。

 ポスト宮﨑駿の話題になると、一応名前は出てくるものの商業的成功の面で幾分下の扱いを受けがちな新海誠が、たった一作でレースの先頭に躍り出た。ツッコミどころの多いシナリオを情緒の力技でカバーした作品ではあるが、よくできたシナリオより圧倒的な風情のほうが繰り返し鑑賞するための魅力や強度を持っていたりするものだ。





7位 恋人たち

  妻を失った男、親友の男に恋する男、夫がいながら怪しい男に惹かれる女。「恋人」の幻影に囚われる人間達の話。

 公開は2015年なのだけれど、見逃してしまったところ横浜シネマリンで再公開されたのを鑑賞。思わず自分と重ね合わせて身悶えをしてしまうような苦悩の波がキャラを襲うたびに、上から目線で申し訳ないけれど如何ともしがたい運命こそ人間を愛おしく見せるのだと再確認する。画面やシナリオの節々にささやかに込められた風刺的演出もニクい。主演の篠原篤が本当に良かった。





6位 オデッセイ

 火星にひとり取り残されたスーパーポジティブ男がDASH星を作る話。

 科学力と笑いは人間の特権、ということがよくわかる作品。私なら2日で自害するような環境においても、自分が携えてきたものを信じてあがき続ける主人公のキャラクターに引き込まれる。個人的には今年No.1のナイスキャラだった。自分の中にある可能性と生きる活力に賭けたくなる、観るエナジードリンクである。鑑賞時にはポテチかフライドポテトを用意しておくように。




5位 永い言い訳

 妻がバス事故で亡くなっても全く泣けなかったクズ男が、ある家族の面倒を見ていくうちに亡き妻への愛情に目覚めていく話。

 西川美和は「ゆれる」も「ディア・ドクター」の素晴らしかったのだけれど、今作は個人的に最高傑作だと思う。要所要所でハッとさせられるような場面を本当にさり気なく入れるのが達者な監督なのだけれど、ここにきてだいぶ極まってきた気がする。それにしても子役・白鳥玉季の演技とそれを囲む演出。まるでドキュメントを観ているかのようなリアリティだった。今年のNo.1子役は「ルーム」のジェイコム・トレンブレイかと思っていら、こんなところにとんでもない逸材が。




4位 キャロル

 写真家を目指す女・テレーズが複雑な問題を抱える人妻・キャロルと出会い、やがて惹かれあっていく話。

 本国で話題になっていた頃からずっと公開を楽しみにしていて、今年最も期待値を上げて望んだ作品。そして期待以上のものを与えてくれた作品だった。それは私が百合厨だからとかではなく、ただただ高いレベルで編まれた普遍的な愛の物語を噛み締めた。脳が私に「これは幸せな体験だぞ」と囁いてくれる。鮮やかなラストまで、ひとときも目が離せない。




3位 リリーのすべて

 世界で始めて性別適合手術を受けた「女性」と、それを支えた妻との試練を描いた話。

「ファンタスティック・ビースト~」の公開でますますファンを生み出しているエディ・レッドメインが演じるリリーの姿があまりにも美しい。そしてこだわり抜かれた構図で作られる画面の数々がこれまた美しい。映画を観て感動しても滅多に涙を流すことのない私だけれど、今作は主人公とその妻のどちらもにも感情移入しすぎるあまりに数年ぶりに泣いてしまった。感情移入って何より大きな要因なんだなあ。



2位 シン・ゴジラ

 突然現れた超巨大生物と日本がドンパチする話。

 開始数十秒から始まるカタルシス。必要と不要、快感と不快、醜悪と華麗、破壊と構築、情報と暴走、安心と不安、あらゆる要素が間髪入れず最高のタイミングで叩き込まれる緻密な作品だった。無人在来線爆弾を始めとするヤシオリ作戦、ああいうギミック活かしまくりの戦術、本当に大好きすぎて脳がとろけそうだった。ガルパンに通ずるものがあった気がする。
 俗に言う「怪獣プロレス」からゴジラがちゃんとした意味で脱却した作品であったし、これからの怪獣映画の新基準が出来てしまったのかもしれない。アメコミヒーロー映画における「ダークナイト」的なポジション。ハードル上がったぞ。



1位 この世界の片隅に

 日本が盛大なドンパチをしている中、懸命に生きる人達の姿を描いた話。

 色んな人やメディアが1位に据えているので今さら「これが1位です!」と差し出すのも恥ずかしいのだけれど、本当に良かったんだから仕方ない。今年唯一、三回以上鑑賞している作品だった。
「戦争を知らない世代が作った戦争ものはリアリティがない」というクソ陳腐な言説を、徹底した資料と調査で煮詰めて、これまでの戦争モノよりははるかに身近な感覚と共感を訴えてくる。誠実さがそっくりそのまま作品の力に繋がっている。
 失っていくものや得ていくもの、奪ったものや奪われたものの尊さやどうしようもなさに振り回されながら懸命に生きる市井の人の愛おしさ。今さら私が言うでもなくとっくにそうなっているのだろうけれど、これからもっと多くの人の目に届いてほしい物語だった。
 


 これは昨年末に書いたものの下書きとして眠らせていた記事だったのだけれど、今日ちょうど「キネマ旬報」が毎年恒例のランキングを発表したので、アップすることにした。1位と2位がキネ旬とかぶってしまって新鮮味が薄れてしまったのが恥ずかしいところだ。もっともそこまで異質な順位ですらないのだけれど。
 私は昔から「ランキング」というものが好きで、それによって世相を読み取ったりするのも好きだし、色んな人の嗜好を感じるのも好きだ。ランキングのシステムが疑わしいものやランクインに至る経緯がきな臭いものだって少なくはないが、それも含めて楽しむ立場を維持しようと心がけている。みんなどんどん、自分の好きなものをランキング付けしてくれと思う。見る側の私としてはそこから知らなかった多くのことを学ぶことが出来、出会いもある。
 私は表に出す出さずに関わらずいろんなものをランク付けしているのだけれど、ときどき自他のランキング結果を見た人から「◯◯が入ってないからこのランキングはダメ」という何から目線なのかわからない言葉をもらう。他人が付けた格が気に入らない、比較して不満をもらせるほどコンテンツをインプットしているのなら自分でランキングを作って差し出してみろ、という気がしなくもないけれど、こういうケースは往々にしてインプットも少ないのに他人の格付けにケチをつけているだけの場合が多い。自分の中でハッキリとした格付けを出来ている人は、わざわざ他人の格付けに一方的な不平を言わない。
 こういう人にあなたのランキングを見せろと言っても無理なのだ。たとえばコンテンツを2つしか知らない人にTOP10は組み立てられないし、比較対象がないからその2つが強い基準になり、高い価値を自分の中に据える。しかし引き出しが少なくとも権威のようなものを誇示したい、もしくは権威に噛みつきたい。そうなると「◯◯が入ってないからダメ」と言うようになる。自分の中に格付けを据えることができない状況で「自分が好きなものを差し出す」という、人によっては極めて高いハードルを越えようとすると無知をひけらかして終わるに留まることはわかりきっているのだから、とりあえず他人の格付けを否定することに価値を見出すことになる。

 今年も見たい映画が目白押しで今から楽しみだ。とりあえず今年はまだ映画館に足を運んでいないので「ローグ・ワン」あたりでも観てこようかと思う。

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星井七億

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