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雑記:色即是空で聴く椎名林檎楽曲3選

1998年。陽キャは宇多田ヒカルに、陰キャは椎名林檎に、ギャルとオカマは浜崎あゆみにハマっていった…とあるオカマは言った。
(とか言いつつ、2丁目では今でも宇多田ナイトや林檎ナイトが開催されている)

こじらせ高校生だった私は予想通り椎名林檎にドはまりし、評論ジャンルで同人誌をしたためるほどだった。今、彼女が国家的イベントの中心となろうとは当時の誰が予想できただろうか。

私は東京事変あたりで何となく離れてしまっていたが、最近改めて椎名林檎の曲を聴くようになり、歌詞の世界観に閃光が走った。それはジャジーなサウンドでありながら、ほぼ色即是空の境地なのである。

今回は、そんな意味で3曲をごく個人的なセレクトにてお勧めする。

1.「人生は夢だらけ」

昔、私の尊敬する人が教えてくれた。
人の視座は「主観→客観→超主観」の順に上がっていく、と。要は自分を客観視し、そのうえで自分自身を生きていく、ということだと理解している。

この歌のBメロ部分にまさにそれが表れているように思う。

「実感したいです 喉元過ぎればほら
酸いも甘いもどっちも美味しいと」

「痛感したいです 近寄ればかなしく
離れればたのしく見えてくるでしょ」

目の前の出来事に右往左往することなく、一瞬を生きながら一つ一つをかけがえのない時間として積み重ね、人生を織りなしていく、そんな絶妙な距離感が伝わってくる。

富士山のように泰然自若とありたいというスケール感と、自然体での個人的な感情の肯定の対比も気に入っている。

2.「ありあまる富」

この歌の趣旨はサビの一節に詰まっている。

「何故なら価値は生命に従って付いている」

真実を見据えた長い旅路の末に自己の中心にたどりついた時、実は自分はすべてを持っていて、そこから見ると物質的なものは何一つ重要でなかったと気付く。

身に降りかかる理不尽ともいえる出来事や、浴びせかけられる言葉に疲れ果てることもあるけれど、その一つ一つが本来の自分を取り戻すための大切な経験ーーそう知っていても、耐え難い時もある。

そんな時、たとえ意味がわからなくてもとりあえず寄り添ってくれているように思える、温かみに溢れた曲。

3.「キラーチューン」

冒頭の「贅沢は味方 欲しがります負けたって」「貧しさは敵」が戦時中のフレーズを反転させておりキャッチーだが、これは次段の「贅沢するにはきっと財布だけじゃ足りないね だって麗しいのはザラにないの 洗脳(わな)にご注意」を引き立たせるための伏線と思う。

本質的に価値のあるものは、自分で見抜き、選び取らなければならない。その眼がなければ、すてきなものはどれだけお金があっても買えない。

そうして本質を見る目を養い、見つけたものは… それが人なら、どれだけ素晴らしいことか!

「探し出してくれて ありがとう」

感謝の思いが溢れて止まらない。

サビで歌い上げられるフレーズ、「貴方は私の一生もの」/「私は貴方の一生もの」は共感する人が多かろうとは思う。

一般的には恋愛や結婚に結びつけるのが一番イメージしやすいところではあるが、一期一会の人間模様が織りなす人生の喜びを高らかに歌い上げる人生賛歌として、私はこの曲を特に推していきたい。

私個人としては、縁づいた人はどのような形であっても、すべて運命の出会いだと思っております。

そんなわけで、示唆に富んだ時間を与えてくれた椎名林檎に感謝。

まだここ10年分くらい到底追い切れていないので、また聴きこみます。

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