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権利が先か、義務が先か?

義務や責任を果たしてこそ、権利を主張することができるのか?
何はともあれ自身の権利を主張することが大切なのか?

とある経営者の人とお話ししている時に「最近の子は勘違いしている人が多い。まずは義務や責任を果たしてこそ、権利を主張できるというものなのに、何もせずに自分の権利ばかり主張しようとする子が多いんだよね」と言っていた。

そう言われれば最もらしく聞こえ、周りの人も皆ウンウンと頷いていたのだけど、どうしてだか当たり前に聞こえるその言葉が耳に残った。

こういうふうに考えている人はきっとこの経営者だけではないだろう。世間一般でもよく耳にすることのように思う。

家に帰ってまだ彼の言葉が頭に残っていた。どうしてそんなに引っかかったのだろうか?

フランスに住んでいる時は、義務も責任もなんのその、当然のこととして堂々と自分の権利を主張している人たちを見てきたから、権利を主張することを当然とする空気にあてられていたのかも知れない。そう、権利を主張することは決して悪いことではないはずだ。

一日じっくり考えてみて、何に引っかかっていたのかに気がついた。私が引っかかったのは、彼の言った言葉が、経営者という立場で、雇われている人について語った言葉だったからだ。

「まずは義務と責任を果たしてこそ、権利を主張できるのだ」

聞こえの良い言葉である。最もらしい。論理の筋も通っている。

それでは「まずは義務と責任を果たしてこそ、権利を主張できるのだ」と従業員に言うときの経営者自身の義務と責任とはなんだろう?

それは従業員の権利を守ることではないだろうか。

立場を逆転させれば、経営者の義務と責任こそ、従業員の権利を守り、それを主張する自由を守ることだ。その義務と責任を果たしてこそ、従業員に十分に働いてもらうという経営者の権利を主張できるのではないか?

従業員が義務と責任を果たすべきであるのと同様に、経営者自身も義務と責任を怠ることがあってはならない。そして常に経営者とは雇われている側よりも社会的に強い立場にあるという自覚を忘れてはならない。その声はひとりの従業員の声よりも大きく響き、遠くまで届く。従業員を解雇できるという力もある。だからこそ、従業員に義務と責任を問う際には同様に、自分自身も義務と責任を果たしているのか、と問うことを忘れてはいけない。

これは国と国民の関係にも似ているように思う。
私たちはついつい政府に対して権利を主張することを忘れてしまう。権利を主張することは当たり前のことなのだ。それなのに権利を主張することは悪いことや浅ましいこと、ズルいことのように思い込まされてしまっている。
大変危惧すべきことだと思う。



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