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あの日旅したウクライナへ

ウクライナは個人的に思い入れのある国です。

パリに暮らし始めて2年目の頃、一緒に暮らしたシェアメイトがウクライナ人のDでした。ウクライナではほとんどアジア人を見たことがなかったDにとって、初めて関わる日本人が私。私にとっても初めて出会ったウクライナ人がDでした。
お互い全く異なる性格、性質、生活文化を持っていて、何度も大喧嘩しました。しかし私が本当に困った時、誰より親身になって助けてくれたのもDでした。
一緒に暮らしたことで、Dからは本当にたくさんのことを学ぶことができました。

Dのお陰でウクライナ人のMとも友だちになりました。Mがキエフに一時帰国する時、遊びにおいでよと誘ってくれて初めてウクライナへ行きました。
Mの両親はアパートの一室に私のためのお部屋を用意してくれていて、お父さんは毎朝豪華な朝食を作ってくれました。ちょうど私の誕生日をキエフで迎えると知ると、お母さんは素敵なウクライナ料理のレストランへ連れて行ってくれました。言葉は全然通じないのだけれど、温かい心は通じます。

Mが忙しい時は、パリにいたDがキエフ中の友人に声をかけ、毎日誰かが私のお供をしてくれるよう手配してくれました。正直こんなにたくさんの人が興味を持ってくれて、入れ替わり立ち替わりお世話をしてくれるなんて、驚きました。

日本人に会うのは初めてなの!日本のこと聞きたい!と言ってくれる子。
英語全然上手く話せないんだけど、でもぜひキエフを案内したいんだ!と言ってくれる子。

その頃私は自分の英語力に対して劣等感を感じることも多く、盛り上がらなくて迷惑かけないかなあなんて、会う前は少し緊張していたのですが、そんな私のみみっちい不安を吹き飛ばすような大きな心で迎え入れてくれた優しい友人たち。もちろん巧みに外国語を操れることは大切です。でも言葉を超えた純粋な好奇心とホスピタリティは何より心地よく、DやMのおかげでいろんな人と出会えた、忘れられない旅となりました。


その後Dはウクライナに完全帰国。パリを離れてしまってからはしばらく会うことがなかったのですが先月末、2年ぶりにパリに遊びに来ると連絡をくれ、つい2週間前に久しぶりに一緒に過ごしました。

話題は自然とウクライナとロシアについて。情けないことに私は世の中の事情に疎く、有意義な議論ができるほどの知識がありませんでした。
かつてパリで一緒に過ごした友人と、「キエフへミサイル攻撃があったらどこのシェルターに逃げるべきかわかっているから大丈夫だよ。避難勧告が出た時に持って逃げるものも準備してる」、そんな話をしていることにただただ愕然としました。彼女はシェルターや避難勧告という言葉が必要な日常生活を生きているのです。
それでもまだ実感を得ることができず、どこか遠い場所の話のように聞いてしまっていました。


そして今、ウクライナはロシアに攻撃されています。

ウクライナの友人たちがインスタグラムやFacebookに投稿する記事を読んでいます。「外国人が今できること」として投稿されていたのが、「ウクライナ軍への寄付」でした。この時初めて、ああ本当に彼の地で戦争が起きているんだとようやく痛みを伴って実感が沸きました。攻撃されるか、攻撃するか。つまり殺すか、殺されるか、と言うことがもう始まっているのです。

Dのインスタグラムのストーリーを見ると、キエフにいるDと家族はシェルターに避難していました。


私には何ができるのでしょうか。

困った時に一番使い勝手が良いのは現金だと思うので、何か寄付できる確かな機関があるか探しています。他にも何か良い方法をご存知の方は教えてください。

少なくとも今私にできることは、ウクライナで起きていることに関心を持つこと。情報を見ること。そしてこのことについて周りの人たちと話し合うこと。無関心にならないこと。

私たちには何もできないよ、戦争を止めることもできないよ、と言われると、確かにその通りなのです。でも、それでも、何もできないし何も変えられないと言う空気が世界中に充満してしまうことは避けたい。

無関心になってしまったら、それこそ大きな力の思い通りになってしまう、漠然とした恐怖を感じます。

何も具体的な行動を起こさずこんなことを書くのは偽善でしかなく、ウクライナの誰も助けることにならないことは十分承知しています。私が安全なパリで遠くからこんなことを考えているのは、生きるか、死ぬかと言う切迫した現実を生きる人たちにとっては、役に立たない机上の空論の理想主義です。
こんなことをここに書くだけで、良いことしたつもりになりたくないし、こんなことでは誰の助けにもならないでしょう。

でもみんなが何かを考えたり、声をあげることが波紋のように広がっていってほしいです。その波の一助になればと願い、ここで私も小さな声をあげます。


私は戦争に反対です。



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