姫毛が揺れる、それが魔法にかかる合図。

思い返せば私が魔法にかかってしまったのは、多分もう7年は前の、あの日だったと思う。姫毛が大胆に揺れる小さな顔に華奢な体、少し大きい制服を身に纏って彼女が言った言葉を、私は忘れたことがない。

私の “大丈夫” には理由がある。

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あの日私は、あなたを見て思っていた。私はこの子と絶対に分かり合えないと。あまりにも背筋を伸ばして立つあなたに嫉妬をしていたんだと、今では思う。何か選択をするとしたら、どうしても少数派というものが生まれてしまう。あなたは迷わずそれを選んでいた。何を言われようと、絶対に自分を曲げなかった。ただただ羨ましかった。自分の中に守れるものなんて、そのときの私にはなにひとつ、なかったから。

明らかにあなたは、私の前を走っていた。いつからだろう、気づけば引き寄せられていて、今あなたのちかくにいるつもり。軸は違うけれど、勝手に並走しているつもり。追いつけたかな、追いつけないな、追い抜けるかな。そんな感覚が最高に心地良いと勝手に思っている。

気付いてるよ、ちゃんと。大丈夫だと言い聞かせていつも頑張っていることも、ついてしまった傷に絆創膏をはってもなかなか治らないけど、見ないふりをしていることも。弱音をはいたと思えばあなたはいつも、それをおもしろおかしく昇華しちゃって笑いにかえてしまう。それはあなたの才能。でもその才能が、時々あなたを少し苦しめていることも、知ってる。

あのね、なんで私がオタクを好きか知ってる?私が絶対にすくいきれない大海にそれはコポコポと沈んでいるから。なんとなく私が手を伸ばしたって、そこに届きはしないから。苦労して溺れたことでしか、人は人を救えない。体験したことでしか、人は人を理解することなんかできない。多分、溺れた先で見つけた光を、人は運命と呼び、奇跡としてそれを歩いて行くんだと思う。

それに、好きなものにこだわれることって最高だ。自分のなかでこだわりを持てない人間に、何が守れるもんか。
「マニアックは褒め言葉です」
なんて言ったあなたを、私はいつまでも越えられない。あなたはいつだって私のヒーローだ。胸を張っていいたい、オタクが世界を救うんだよ!って。

正解に向かって歩くより、自分の好きなものに手を伸ばしながらもがいていたいね。上手に泳いで速さを競うより、溺れそうな境目で誰かが目を奪われる一瞬の何かを生みだしたいね。あなたは、そんなものをいつだって生み出している。私はそう思う。

だって私はいつだって、あなたの姫毛が揺れるたびに心を奪われていた。ああ、羨ましいなって声を出して言えてしまう数少ないひと。どうか、そのままでいてね。

そういえば、私の愛するaikoもいつも、姫毛を揺らして私に魔法をかけるんだ。


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Takanana.

宛名のない手紙

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