見出し画像

セーラームーンの台詞からみる非現実と憧れの創造


日本は世界視点で見ても稀に見る漫画大国である。幼少期からいたるところで様々なジャンルの漫画を読む機会があった。魔法少女シリーズはいつの時代も幼い女の子を中心に絶大な人気を誇り、中でもセーラームーンシリーズは1990年代の女の子の圧倒的支持を得た。そんなセーラームーンの役割は、敵の邪悪なオーラを浄化し、ムーンスティックで癒すことである。

主人公うさぎは平凡な中学生であり、むしろ天然で勉強もあまりできない。一方で家庭環境は都内麻布十番に家があり父は雑誌記者、母は専業主婦、弟1人という中・上流家庭というところだろう。ハイカルチャーとポップカルチャーを織り交ぜて世界を描くことで実現したのは、広い読者の獲得だけでなく、様々な属性の人々の妄想を掻き立て、憧れを抱かせたことだった。

それらの設定や物語の展開を楽しむことができるだけでなく、登場人物たちが変身し、戦う時に用いる台詞こそが憧れの世界を創出している点においてセーラームーンを楽しむこともできる。例えば「ムーン・ティアラ・アクション」という台詞を幼い女の子が日本語としてイメージする時、「月、キラキラした王冠、謎のカタカナ」という捉え方をすることが多いだろう。他にも「スターライト・ハネムーン・キッス」「ムーンプリズンパワー!メイクアップ」など、長い呪文の中に必ずひとつは、子供でも私生活で馴染みある横文字が並んでいる。

日常会話においても、いきなり分からない話をされても聞く耳を持つことは難しい。しかし、分かる事柄と並んで新しい情報が提示されたとき、「なんかかっこいい」という感情が掻き立てられ、興味をそそられてしまう。セーラームーンの台詞構成も、子どもたちのそれと同じ構造になっているのだ。セーラームーンの台詞は、コミュニティにおける振舞のメタファーと言っても過言ではないはずだ……!


と、なんだか難しい話をしてしまったが、単純に魔法少女シリーズが大好きで今回筆を執った。ちなみにわたしはおジャ魔女どれみ世代で、変身のときの音楽をピアノで弾きまくって先生に怒られた記憶がある。大人になっても幼児向けコンテンツを好きだ、というと未だに馬鹿にされることもある。
そんな文化知らねえ〜!大人には大人の楽しみ方もあるんだ!とか言ってみたくて書いたのがきっかけだ。好きなものを、もっと好きだと言える社会になりますように。カバー写真は魔法少女大好きなエビちゃんにお願いしました。ありがとう!

読んでくださってありがとうございます。今日もあたらしい物語を探しに行きます。