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amazarashiの曲のCメロだけを集めて語るnote


タイトルそのまんまの内容です。
この文章を書くに至ったきっかけは、Micaさんのこちらのnote。

エモいと言われる曲には必ず至高のCメロが存在しているはず」という仮説を自ら検証してみるという熱量にあふれた内容。
ぜひこの読み応え(聴き応え)たっぷりの楽しいnoteをまずは読んでいただきたい。


Cメロは、物語の起承転結でいうところの「」的存在だと私は認識している。
曲調が変化したり、歌詞が展開したり、クライマックス(大サビ)へ向けての布石のような役割のパート。

物語も人生も、そして曲も「転」があるとグッとおもしろくなる(と思う)し、個人的にもそういう曲が大好き。
(もちろん、Cメロがなくても素晴らしい曲、好きな曲もたくさんあるよ)


私に初めてCメロという概念を教えてくれたのは、BUMP OF CHICKENだった。
(Micaさんのnoteでも、BUMPの『天体観測』が取り上げられています)
中学生の頃に出会いのめり込み、曲を聴いていくうちになんとなくその存在を気に留めるようになった。

なんだろう…… この、曲の雰囲気がガラッと変わる部分。感情が爆発してるような部分。なんて言うんだろう……?
なるほど、Cメロっていうのか。

(※中には「サビ」のことを「Cメロ」と呼んで、いわゆる「Cメロ」のことを「Dメロ」と呼ぶ人もいます。
どっちも間違いじゃないっぽいから、分かりやすくて使いやすい方でいいんじゃないかな。多分。
ああ、あの部分ね!って伝わればOKかと)

BUMPって、ほとんどの曲にCメロがあるんですよね。
語り出したら止まらなくなりそうだし本題からずれるので控えておきますが。

BUMPの曲はストーリー性のある歌詞が多いのも魅力のひとつだと個人的には思っていて。
ストーリー性のある歌詞だから、より「転」のパートである「Cメロ」が活きるのかな。
そもそもBUMP OF CHICKENっていうバンド名からして、「臆病者の一撃」みたいな感じですもんね。
ぼくら臆病者だけど、「それでも」みたいなニュアンスが曲にも表れているような。
名が体を表すがごとく、名が曲を表してる。


それで、です。
本題のamazarashi。amazarashiの名前の由来も
「日常に降りかかる悲しみや苦しみを雨に例え、僕らは雨曝しだが“それでも”というところを歌いたい」という感じで。

そういう意志をもって作られた曲たちには、やっぱり「それでも」の精神が宿っているというか。
つまり、amazarashiもとても曲の中に「転」が、「Cメロ」が多いアーティストだなって思っていて。

そんなamazarashiの、Cメロが素晴らしい曲たちを私の独断と偏見で思いつくままに書いてみたくなったわけです。
Micaさんも、ぜひ書いてほしいです!と言ってくださって(やさしい……)

ちなみに私はまだ持っていないCDおよび聴いたことがない曲も多く、歴の長いファンの方からすると「あの曲がないじゃん……!」と感じられる部分もあるかもしれませんが、その辺りはあたたか〜い目でどうか。
逆に教えてもらえるとうれしいです。この曲のCメロもいいよ!聴いてみて!って。
よろしくお願いします。


スターライト(3:16〜)

※()内の時間はCメロのおおよその位置です。でも、Cメロ感を味わうならもう少し前から聴くのがおすすめ。つまりは最初から聴くのがおすすめ。
なお、MVとCD音源とではCメロが始まる秒数が異なる場合もあります。

星めぐりの旅は続く 続く 終わらない
オリオンの右肩で歌う 歌う 鷲は紅い目玉
泣くな 泣くな 旅人よ 故郷の姫りんごついばんだ
鳥になるか 鳥になるか そんな夢を見たよ 涙も枯れたよ


この曲は宮沢賢治さんの『銀河鉄道の夜』がモチーフになっていると聞いたけれど、Cメロにおいては同じく宮沢賢治さんの『よだかの星』も想起される。
(amazarashiのボーカル・ギターである秋田ひろむさんは宮沢賢治さんが好きらしく、『よだかの星』の朗読が収録されているCDもあったり)
宇宙を思わせるような広がりのあるサウンドアレンジも好き。
(Cメロじゃないけど、Aメロでぐいんぐいん鳴ってるベースも最高にかっこいい)

Cメロからの大サビを経てたどり着く最後のワンフレーズが、散々泣きはらしたあとの決意みたいな清々しさ。


ナモナキヒト(3:40〜)

人知れず流した涙 隠していた悔しさ
名付けられる事無い 詠み人知らずの悲しみ
ビルの風に舞い上がり 路上の隅に吹き溜まる
始めから無かったみたいに 忘れるか
僕達の名も無き悲しみは
今こそ讃えて然るべきだ
僕達の名も無き悲しみは
君に見つけられるのを待っている

「詠み人知らずの悲しみ」っていうフレーズが大好き。
あと、「忘れるか」で毎回グッとくるんだよね……。

どうしようもなく疲れて、上手くいかなくて、しんどくてしょうがないときに聴くと秋田さんの優しい歌声と歌詞が「おかゆ」みたいにじんわり心に沁みわたります。
この曲を聴いて泣くだけ泣いて泣き疲れてぐっすり寝たら、また「がんばってみよう」って気持ちになれる気がする。


空に歌えば(2:36〜)

掴んだものはすぐにすり抜けた
信じたものは呆気なく過ぎ去った
それでも、それらが残していったこの温みだけで
この人生は生きるに値する
失意の濁流を抜けて 曇天から射す一条の光
その時、既にもう 雨は上がっていた

Cメロでポエトリーリーディングするパターン。
結構長いので歌詞は一部抜粋。
この後にくる大サビの演出が鳥肌ものなので、ぜひ聴いて(MVを観て)鳥肌体験してほしい。
「雨は上がっていた」という歌詞の後の、曇天を切り裂くような爽快感がたまりません。

Cメロには登場しないんだけど、豊川真奈美さん(キーボード、コーラス)の歌声がまた爽やかで華があって最高なの。


月曜日(3:33〜)

普通にも当たり前にもなれなかった僕らは
せめて特別な人間になりたかった
特別な人間にもなれなかった僕らは
せめて認め合う人間が必要だった
それが君で おそらく僕で
ゴミ箱にだって あぶれた僕らで
僕にとって君は とっくの昔に
特別になってしまったんだよ

月曜日〜〜
とても切ないんだけど、でもこういう関係性素敵だなと思う。
個人的には、高校生のときを思い出す。あの教室の閉塞感とか、居場所が感じられない息苦しさみたいなのとか。そんな中でわずかに見える光みたいな存在とか。
この曲を聴いて具体的に思い浮かべる人物像がいるというのは、ある意味しあわせなことなのかもしれない。


名前(2:16〜)

時には大げさな看板を背負わされて
時にはいわれない不名誉を着せられて
君のこれまでをいっぺんに語ることが出来る
名前なんてそうそうないよな
だから
どんな風に呼ばれようと 好きにやるべきだと思うよ
君を語る名前がなんであろうと 君の行動一つ程には雄弁じゃない

名前…… 大好きな曲。
肩書きとかじゃなくてさ、あなたと話がしたいんだよ。あなたのことが知りたいんだよ っていう。
上っ面だけじゃない心の触れ合いっていうのかな、そんなふうに人と向き合って生きたいなと思う。


ジュブナイル(3:20〜)

そこから一歩も動かないのなら 君は「侮辱された人間」だ
そこから一歩 歩き出せたら 君は「負けなかった人間」だ
怖いとは言うべきじゃないな 辛いとは言うべきじゃないな
どうせ誰も分かってくれない それを分かって始めたんだろう
誇り高き少年少女 それでも曲げぬ自分の意志を
未だ枯れない表現欲と 無謀さを武器に駆ける浮世

私がはじめて聴いたamazarashiのオリジナル曲
(amazarashiを知ったきっかけはアジカンのトリビュートアルバム収録の「夏の日、残像」から)

現役の少年少女だけでなく、かつて少年少女だった大人や、表現・創作活動をしている人にはとても刺さる曲なんじゃないかなって思う。
決して聞き心地の良い言葉ばかりではないからこそ、信じられるものがあるというか。
添付したMVには悪夢的な恐ろしさがあるけれど、最後の大サビの映像があまりに美しくて涙が出そうになる。


あんたへ(4:50〜)

あんたらしい 人生ってのは あんたらしい失敗の積み重ね
一つ一つ 積み上げては 僕ら積み木で遊ぶ子供みたい
あんたらしく 転べばいい あんたらしく立ち上がればいい
他に何もいらねぇよ 他に何もいらねぇよ


さらっと放たれる裏声の美しさ(秋田さんの裏声大好き)
何回も転んで、その度立ち上がって、最後に笑えたらそれでいいのかな。転ぶのも、立ち上がるのも「あんたらしく」っていうところが好きだな。

〈ダメな自分を愛するために まず必要なのは自分を許してやる事
必死に生きるのは得てして無様だから 人に笑われても気にすんな〉

自分にも言い聞かせたいし、そんなふうに生きている誰かにもそっと渡したくなるような。

〈今辛いのは 戦ってるから 逃げないから
そんな あんたを 責めることができるやつなんて
どこにも いないんだぜ〉

というフレーズにも何度励まされたことか。


命にふさわしい(4:54〜)

※MV、人によってはショッキングな内容かもしれないので注意してください。具体的に言うと、人形が次々壊されていきます。衝撃的だったけど、個人的には目を背けられない何かがあるMV。

愛したものを守りたい故に
壊してしまった数々
あっけなく打ち砕かれた 願いの数々
その破片を裸足で渡るような
次の一歩で滑落して
そこで死んでもいいと 思える一歩こそ
ただ、ただ、それこそが
命にふさわしい

秋田さんの歌声の熱量も相まって胸に迫り来るCメロ。
生きていると「心さえなかったなら」って思うこともあるけれど、でもやっぱり心は最後の最後まで手放すわけにいかないな、とも思う。


性善説(4:13〜)

ねえママ あなたは言ったじゃないか
嘘をつけばバチがあたると
神に祈れば救われると 苦労はいつか報われると
ねえママ 僕は知ってしまったよ 人間は皆平等だと
世界はあるがまま美しいと

それらは全くの詭弁であると

最後の一文……。
ともすれば綺麗事にも聞こえるような言葉を並べてその後の歌詞でそれを覆す…… みたいなパターンがamazarashiの曲にはけっこうある気がする。

まるで一本の映画を観たあとのような余韻が残るMV。
物語に引き込まれる分、少ししんどいかもしれない。ラストはドキッとする展開なので人によっては少し注意が必要かも。でもいい曲です。


この街で生きている(4:36〜)

春夏秋冬 変わっていく街の景色
その中で 抗ってる 君も 僕も
希望 誹謗 理想 自嘲
戦ってる相手は 疑う心だ
つまり自分だ

「つまり自分だ」
そうなんだよね。いつだって自分と戦ってる。

サビで繰り返される「この街で生きている」というフレーズが、最後に「これからも生きてく」になるのが地味に好き。

突然プリキュアの話するんですけど(完結してるけど一応ネタバレ注意)
『ヒーリングっど♡プリキュア』で主人公の花寺のどかちゃんの口癖である「生きてるって感じ」が、最終話で「生きてって感じ」になったのすごく感動したんですよね……。
たった一文字の違いなんだけど、彼女の内面の成長とか未来を見据えた決意みたいなものが伝わってくる熱い台詞だったなって。

この曲の最後のフレーズ「これからも生きてく」にもそんな決意みたいな眼差しが感じとれて、あぁ、いいなって何度も思う。


エンディングテーマ(4:16〜)

失い続ける事で 何かに必死になれる力が宿るのなら
満たされていないってのは 幸せなのかな
だとしたら 今の僕はきっと幸せなんだな
なのに
心が痛いよ 涙が止まらないよ

「僕は幸せなのかな」「きっと幸せなんだな」からの「なのに」
「なのに」からの破壊力。
秋田さんの熱のこもった声と歌い方がまた、切実すぎて苦しい。聴いてるこっちの涙が止まらないよ って言いたいよ。

どうしようもないくらいの「生」への執着。
「生きたい」と願えば願うほど避けられない「死」の存在。
生と死、幸か不幸か、その狭間でもがき揺れ動く感情が迫る圧巻のCメロ。
自分は死の淵に立ったとき何を思うんだろう…。


フィロソフィー(3:23〜)

正しいも正しくないも考えだすとキリがないから
せめて望んだ方に歩けるだけには強がって
願って破れて 問と解、肯定と否定
塞ぎがちなこの人生 承認してよ弁証法
悲しみを知っている 痛みならもっと知っている
それらにしか導けない 解が君という存在で

三段回くらいで畳み掛けてくるタイプのCメロ。
理想と現実のギャップ、手にしたこと逃したこと、うれし涙と悔し涙、前進と停滞…。
なんかそういう、人生に行き詰まったときに聴いて自分を鼓舞したい。

悲しみや痛みを知っているあなただからこそ、できることだってあるよって。
どんな形であれ今の自分をまるごと肯定してもらえるような、勇気の出る歌。


空っぽの空に潰される(3:43〜)

弱音を吐いたら楽になるか
泣くだけ泣いたら楽になるか
死にたいと言えば気持ちいいか
そこから踏み出したくはないか
どっかに忘れ物をしたよ
教室か母のお腹の中
恒久的な欠落を 愛してこその幸福だ

曲調も歌い方も感情を爆発させてる感じではないんだけど、歌詞になかなかパンチのあるCメロ。

きっと、だれもがどこか「欠け」ているから。
それを嘆いたり誰かのせいにしたくなったり、はたまた「死にたく」なったり……
そんなこともあるだろうけれど、その欠落を何かで埋めることよりも、欠落を欠落のまま愛することができたら…… 幸せなのかもしれない。

『未来になれなかったあの夜に』の大好きなフレーズ、〈足りない君が馬鹿にされたなら 足りないままで幸福になって〉にも通ずる部分があると思う。


もう一度(3:15〜)

静かな部屋の中 雨音だけが響いている
どこにも行けないのか
どこにも行かないのか
夢 希望 傷だらけで笑い合う友達
あの子の笑顔 何もないよ
始まりはいつも空っぽ
空っぽ

「空っぽ」って一見ネガティブな言葉なんだけど、この曲にはとても奮い立たされる。

2019年に行われた『未来になれなかった全ての夜に』ツアーの大阪追加公演のライブ会場にて聴いたのが、私にとってこの曲とのはじめまして。
このMVの映像が紗幕(amazarashiのライブでは演者の前方、もしくは演者を囲むように薄いスクリーン状の幕があってそこにいろんな映像が投影されてく)で流れてて…
この日のライブで最初の涙の起爆剤だったなぁ…


とどめを刺して(2:46〜)

※MVの最初と最後に大きな音が鳴るので注意。
あと、個人的にはこういう破壊衝動的な映像は観ててしんどい部分があるので似たような方も注意してね。

ねえ カーラジオのボリュームを上げて
ねえ もっと上げて
最高な気分なんだ 笑いが止まらない
どこまでも行けそうだ どこまでも行けそうだ

最高のCメロ。
この歌詞にこのメロディーに秋田さんの声や歌い方(「上げてぇぇぇぇぇぇえ!」のとことか)が合わさって起こる奇跡にも似た何か。

映画のワンシーンみたい。たったこれだけのフレーズでいろんなストーリーが想像できてしまう。
だからこそ、いろんな解釈もできると思う。
MVの内容は正直私の曲に対するイメージとは少し違っていたのだけど、これもまたひとつの解釈としてあるんだろうな。


それを言葉という

明日がある以上終わりじゃない
朝日が愚鈍に射し込む車内
押しつぶされた心はくしゃくしゃで
ホームに吐き出された
もう一歩も動けない 微動だにできない 儚い抗いを弔い
理論武装解除を 丸裸の行動原理を
下らない人間くらいが丁度いい
下らない人間くらいが丁度いい
下らない人間くらいが丁度いい
どうせ下らない世界だ


満員電車に重ね合わせた心の描写が胸に迫る。
どうしようもないくらいの希死念慮ってきっとこういう感じかなって。
この曲はAメロがポエトリーリーディング、Bメロからサビにかけてはメロディアス(使い方合ってる?)な構成なんだけれど、Cメロはちょうどその中間みたいな印象。
私はBメロの旋律がたまらなく好きです。
全体的に静かで落ち着いた印象があるけれど、amazarashiのいいところが詰まっていると感じる曲。


隅田川(4:25〜)

火影に群がる虫として 僕はあなたに焦がれて
幼い強がりかなぐり捨てて 素直になれたらそれでよかったんだ

出会いと別れ、懐古、喪失…

この曲、なぜかとても「懐かしい」と感じる。
秋田さんが生み出すメロディーラインってどうしてこんなに美しいんだろな。
音楽の教科書に載っていてもおかしくなさそうな曲(という表現が正しいのかも分からないけれど)
旋律と言葉のはまり具合、そしてサビの裏声が美しすぎる。
夏の終わりの空気を感じる。

この曲は、いくつになって聴いても「美しい」って感じられるような気がする。
見落としてしまいそうなほど、忘れてしまいそうなほど些細な「特別達」に支えられて私も生きてきたのかな。


令和二年(2:30〜)

優しくすることもできる 傷付けることもできる
武器にも薬にもなるなら 僕はどちらを選ぶだろう
変わる 世界の隅っこで 分かつ 個々の小宇宙
繋がる術を持つ僕らの 心 応答せよ

この後のBメロっぽいところまでCメロなのかもしれない。「残念だな 残念だな」の歌い方が胸にくるんだよね…。

令和二年の「やるせなさ」がリアルに、ストレートに、ある意味淡々と綴られたこの曲の中で、僅かに希望を感じられるのがこのCメロの部分なんじゃないかなぁ。
心が挫けそうになるような日々の中で、最後の希望はそれぞれの心の中に。どうかそれを手離さないで。そんなふうに聴こえる。


未来になれなかったあの夜に(4:39〜)

取り立てる程不幸ではないが 涙は路銀程に支払った
僕の過去の轍を見る人よ ここで会うのは偶然じゃないさ
夢も理想も愛する人も 信じることも諦めたけど
ただ一つだけ言えること僕は 僕に問うこと諦めなかった

ほぼBメロなんですけど大サビ前だしCメロってことでいいですかね?(好きな曲だから入れたかった)

秋田さんの鼻濁音きれいですよね。
文字で表せないんだけど、「不幸ではないが」の「が」とか「路銀」の「ぎ」とか、「がぎぐげご」の前にちっちゃい「ん」が入る感じというか。「な行」にも聴こえる感じというか。音がやわらかくて心地よく聴こえる。
この曲じゃないけど、『季節は次々死んでいく』の「つぎつぎ」とかも。

曲もMVもタイトルもとにかく好きの塊。
出だしの歪んだギターの音も、鼓動みたいなドラムも、夜明けみたいな豊川さんのピアノの音色も。


無題(4:13〜)

木造アパートの一階で 彼は今でも絵を描いている
描きたかったのは自分のこと 結局空っぽな僕の事
小さな頃から絵が好きだった 理由は今じゃもう分からないよ
褒めてくれる人はもういない
増える絵にもう名前などない


「増える絵にもう名前などない」すなわち『無題』なのかな?

絵描きとそれを支える彼女の物語…… という感じで、とてもストーリー性の高い曲。
(ネットで「無題」の歌詞検索するとなぜか最初に「ムカデ」の歌詞が出てくるんだけど絵描きが出てくる方が「無題」です)

絵じゃなくても、好きなことがあってそれで評価を得たいとか認められたいと思ったことのある人には刺さるんじゃないかなぁ。

「信じてたこと 正しかった」が
「信じてたこと 間違ってたかな」という迷いに変わって、最後にもう一度
「信じてたこと 正しかった」ってなるのがもうなんとも言えない。
個人的にも大好きなフレーズ。


✳︎


ここから先はYouTubeに公式動画がない曲たち。
故に歌詞のみでの紹介となりますが、サブスクとかしてる方は気になった曲があればぜひ聴いてみてください。
もちろん、CDをレンタルや購入して聴くのもあり。


月が綺麗

あの惑星まで何万文字費やせば
意固地になるのは己の人生だから
気が狂うほど積んでは崩し 高くなるほどに足場は揺らぎ
重力に抵抗せよ 抵抗せよ 抵抗せよ
その先を見たいわけじゃない
逆らってるだけ 逆らってるだけ


一聴惚れだった、『月が綺麗』
時の流れや憧れの対象、人との心の距離を「文字数」で表現しているところとか。
メロディーの美しさも、秋田さんの声も、宇宙まで突き抜けるような伸びやかさで。どこまでも行けそうな。
武道館公演(ライブビューイング)で聴けたの、ほんとしあわせだったな。いつかまた生で聴けないかな。


吐きそうだ

愚痴は零すな 弱音を吐くな 素晴らしい人間になろうと思うな
我慢するべきだ 身を粉にして 道に迷っても戻りはするな
優しくあれ 義理堅く恩は返せ 借りは作るな
無償の愛だ 無償の愛か? これこそエゴか? なんて嫌なやつだ


私の中で、秋〜冬くらいの空気がキンと冷たく澄んだ朝に聴きたくなる曲。イントロのピアノの音がまさにそんなイメージで。
この曲を思うとコーヒーが飲みたくなるし、コーヒー飲んでるとこの曲を聴きたくなる。最終的にはコーヒー片手にこの曲を聴きたくなる。
ちなみにまだCDは持っていないので武道館ライビュの記憶を頼りにコーヒーを飲む。

〈生きる意味とは何だ 寝起き一杯のコーヒーくらいのもんか
それとも酔いどれの千夜一夜 ていうか二日酔いでもう吐きそうだ〉

どこか気怠くて、鬱々として、噛み付かんばかりの鋭ささえあるのに、とても美しいと感じる曲。
淡々と歌っているけど所々で感情を爆発させるような秋田さんの歌声と、それに寄り添うような豊川さんのユニゾンが本当に美しくて。
ずっと聴きつづける曲だと思う。


バケモノ

僕の背丈を超えた化け物 嘘の塊みたいな僕を
綺麗さっぱり食べてくれないか
「生きるのが辛かった 苦しくてしょうがなかった
だけど辛いと思われることが いちばん辛いことだから」
ようやく本音叫んだら 化け物は見る間に萎んだ
でもね僕はまだ嘘を隠してる 自分さえ騙す僕の嘘を

つづきが気になるタイプのCメロ。
「僕」が最後まで隠し持っている「嘘」とは一体……?つづきは大サビで。

好きなんですよね、こういう曲。
生き物じゃないもの(人間の本質みたいなのとか、感情とか)を生き物に例えてちょっとダークにユーモラスに描いてる感じ……?

サビ前とかサビでところどころ急に音が逸れるところ(なんだっけこういうの、半音下がってるみたいなやつ……「ブルーノート」だっけ?おしえて詳しい人)も曲の雰囲気に合っててカッコイイな。
秋田さん、こういう絶妙な音をよく曲に入れてる気がする。
多分、聴いたらすぐに「ああ、これか!」ってわかると思うのでぜひ聴いてみてください。


雨男

乗るか反るか?行くか戻るか?
雨か晴れるか?やるか止めるか?
勝つか負けるか?立ち上がれるか?
やり直せるか?生きるか死ぬか?
「やまない雨はない」
「明けない夜はない」
とか言って明日に希望を託すのはやめた
土砂降りの雨の中 ずぶ濡れで走っていけるか?
今日も土砂降り

一部抜粋。
「〜か?」の畳みかけがすごい。

「やまない雨はない」「明けない夜はない」
そんな、ある意味聞き慣れた、聞き飽きた、場合によっては綺麗事にも聴こえるフレーズをその後の歌詞で覆す。
先に挙げた『性善説』でも触れたamazarashiの歌詞で私が好きなパターン。

「やまない雨はない」「明けない夜はない」
そんな類の言葉が胸に響くことも、勇気をもらえることももちろんあるんだけどね。私も言うときあるし。
「明日に希望を託すのはやめた」は一見諦めにも聞こえるフレーズだけど、今まさに降っている雨や夜がしんどくて仕方ない人にとってはこっちの方が救いになり得るんじゃないかな。

「土砂降りの雨の中 ずぶ濡れで走っていけるか?」は、心の中で並走してもらってるような感じがある。
傘を差し出すんじゃなく、一緒に濡れてくれるような。
雨曝しなのは君だけじゃないよって、勇気をもらえるような。

この曲は4/7にファンクラブ会員限定で開催されたオンラインライブ『APOLOGIES 雨天決行』へ向けて事前に行われたファン投票(上位3曲はセットリスト入りが約束される)にて、第1位を獲得した曲で。
私は今回のオンラインライブで初めてちゃんと聴いたんだけど、ファン投票で1位に輝いたのも頷けるなって。
今日も土砂降り、だけど、それでも…っていう、amazarashiを象徴する曲のひとつだと感じた。

にもかかわらず、MVもなければベストアルバムである『メッセージボトル』への収録も逃してきた(←最近フォロワーさん経由で知りました)ちょっぴり不遇な雨男。
でも、この度ファンの熱望により投票1位に輝いたの本当におめでとうすぎるでしょ雨男。
ライブ本当によかった。映像化されるといいなぁ。


爆弾の作り方

許されない僕等が 許されるための手段
傷つきやすい僕等が 身を守るための方法
僕は歌で 君は何で?
僕は歌で 君は何で?

リスナーに問いかけてくるタイプのCメロ。
だれもがきっと、その人だけの「武器」を持っていて。
「武器」って言うと人によっては聞こえは良くないかもしれないけど、つまりは「強み」みたいなものかな。
好きなこととか、得意なこととか。
場合によっては「弱点」や「欠点」だと思っていることが強みってことも大いにあるかも。

〈僕らは常に武器を探してる それがナイフじゃないことを祈る〉
鋭くて殺傷能力の高いものだけが「武器」じゃない。
戦う相手は「他人」とは限らない。
磨き上げられた武器は自分や誰かを守ったり救うこともできるんじゃないかな。私もそういう武器を心に持っていたい。


終わりで始まり

日々が過ぎて 年が過ぎて
大切な人達が過ぎて
急がなくちゃ 急がなくちゃ
なんだか焦って つまずいて
もう駄目だ 動けねぇよ
うずくまってても時は過ぎて
考えて 考えて
やっと僕は僕を肯定して
立ち上がって 走り出して
その時見上げたいつもの空
あの頃とは違って見えたんだ
あの日の未来を生きてるんだ
全てを無駄にしたくないよ
間違いなんてなかったよ
今の僕を支えてるのは
あの日挫けてしまった僕だ

長いので一部抜粋しようかと思ったけど無理だった。
集大成みたいなCメロ。
この歌詞の感じと曲調だったらもっと陽気なイメージのアーティストが歌っていてもしっくりきそうだけど、いや、やっぱりそこはamazarashiが歌うからこそグッとくるんだろうな。

〈信じてくれたあなたは正しかったと
言い張るために歌っていたい〉

「自分なんて」
そう思ってうずくまってしまうときはあるけれど、そこで自分を否定しつづけたら「信じてくれたあなた」のことも否定することになってしまう。
それはいやだから、僕は僕を肯定して立ち上がる。

……こういう精神が大好きすぎて。
いつかライブで聴けますように。


未来づくり

今までのことなんて帳消しにしたいんだけれど
今日までの失敗なんて破り捨ててしまいたいけれど
こんな僕だからこそ あなたが好きになってくれたって言うなら
もういいよ もういいよ それだけでもういいよ
胸はって 僕は僕だって 言ったっていいんでしょ
いつだって ここに帰ってきたっていいって言ってよ
僕は精一杯僕を肯定するよ
ただ僕を 信じてくれたあなたを 肯定するために

……。

わたしはね、未来づくりが大好きなんですよ。
初めて聴いた(Spotify無料版のシャッフルでたまたま流れてきた)ときの衝撃ったら。
amazarashiの歌詞に英語が!めずらしい!っていう衝撃もあるにはあったけど、それ以上に。
歌詞、旋律、アレンジ。
やさしく包み込むような低い声から、降り注ぐような高い裏声までこなす秋田さん… 耳がしあわせになる。

もしも歌が人が創り出したものじゃなくて天からの恵の類だったなら、きっとこんな感じなんじゃないかって。
……なんて、そんな大袈裟なことを考えてしまうくらいの曲。その上でのこのCメロ。
Micaさんの言葉をお借りするなら、「すでに100点取れてるのに120点取りにいく」そんな感じ。

最後の一文は、ひとつ前に紹介した「終わりで始まり」のフレーズにも通ずるものがある。
こんな僕を好きになってくれた・信じてたくれたあなたを肯定するために、僕は僕を肯定するよって。
『無題』とかもそうだけど、私は多分こういうフレーズに弱いんだな。

いつか必ず音源(アルバム『千年幸福論』)が欲しくて、初めて聴いたあの日からずっと想い焦がれている曲。
聴いてると、なんだかとっても幸せで満たされる。

いつかライブで聴きたいよ。
そのときは泣いてしまうかもしれない。
MVとか無くて貼り付けられないのが残念だけど、ぜひ聴いてほしい一曲です。

私も、私を信じてくれた人たちのことを肯定するためにも自分を卑下せず否定せず、生きていきたい。


✳︎


本当はまだまだたくさんCメロが素晴らしい曲があるのだけど、キリがないのと文字数も大変なことになってるのでそろそろおしまいにします。

冒頭でも書いた通り私はまだまだ知らない曲も多いので、また「いいな」ってCメロに出会ったらひっそりと追記していくかも。自分のための記録としても。

書いててとても楽しかった。
途中からCメロについて語ってるのか単に曲紹介してるのかMV紹介してるのか分からなくなってきたけれども。

amazarashiの歌は「暗い」と言われることもあるようだけど、私にとってはただ暗いわけでも明るいだけでもなく、「陰(影)」を描くことで「希望」を照らし出す歌。暗闇の向こうの光に「それでも」と手を伸ばしつづける歌…… そんなふうに感じています。
『未来になれなかったあの夜に』の歌詞を引用すると、〈見える人にだけ見える光だ 陰こそ唯一光の理解者〉みたいな。
そして根底には、「人を信じたい気持ち」があるような気がして。
だから、今まさに苦しい人や過去の苦しみを背負って生きる人たちに響くんじゃないかなって。


とにかく書いててしあわせでした。
これを書くために初めて聴いた曲もあったり、書きながら気付いたこともあったり。
何よりも、私はやっぱりamazarashiが好きだということが改めて分かってよかった。

もしこのnoteが誰かにとってamazarashiに出会うきっかけにでもなれば幸いです。

Micaさん、楽しい記事を書くきっかけをありがとうございました!



【おまけの追記】

トップ画像は、2019年8月31日にNHK Eテレにて放送された『8月31日の夜に』の番組内で秋田さんが歌った「僕が死のうと思ったのは」のワンシーンより。
録画したものを見ながら(少し私の解釈とアレンジも加えつつ)描いたものです。
Cメロがないので今回は取り上げることができませんでしたが、とても素晴らしい曲なのでご興味ありましたら是非聴いてみてください。

画像1

ではでは。

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