『すずめの戸締まり』を観た感想(ネタバレ有)

ずっと前から楽しみにしてた『すずめの戸締まり』を観た感想をダラダラと綴っていく。
まず、扉を閉めた瞬間のタイトルカットで鳥肌が立って一瞬で心を掴まれた。
草太が唐突に椅子になる展開には笑ったし、SNSの投稿からダイジンを追うのも現代っぽくて良いと思った。
鈴芽が旅をする中で出会う人達が優しすぎる。民宿で働く同い年の千果、2人の子供を育ててるスナックのルミさん。この2人がいなければ鈴芽の冒険は成り立っていない。お別れの時に千果は洋服、ルミさんは帽子をくれるのは『君の名は。』の「結び」を感じさせる描写だった。

地震と言えばナマズが引き起こすイメージがあったけど、後戸が開くと地震を発生させるのはミミズ。扉を閉じるにはその場所の過去の思い出を想像しないといけない。その土地の人々の幸せな記憶と現存する廃墟の対比が物悲しさを感じさせる。
今作では、現世と常世を繋ぐのが廃墟の扉。『君の名は。』では、この世とあの世を繋ぐのが黄昏時。新海誠は二極化した世界を繋ぐ鍵を作るのが上手いなと思う。

スナックでポテサラ焼きうどんを作るシーンは『天気の子』のポテチチャーハンを彷彿とさせるオリジナルコンボで美味しそうだった。新海誠作品は出てくるご飯が全部美味そう。新海誠作品の特徴で絶妙なエロさを感じる描写が多少ある。今作は、鈴芽が椅子になった草太に座る描写がそれに該当すると感じた。

鈴芽はついに東京に到着して颯太の家に行く。田舎の景色も良かったけど、やっぱり新海誠は都会の景色が得意だなと再確認。草太の部屋には出前館のチラシがあったので大家さんのローソンとかとバイト掛け持ちして全国を周る費用を貯めてたのかなと思った。
芹澤の話から草太が椅子になった事で教員試験を受けられなかった事を鈴芽は知る。その事を草太は今まで顔に出していなかったし、閉じ師としての役目は友達である芹澤に話していない。「大事な仕事は、人からは見えないほうがいいんだ。」というセリフに繋がるのかなと思った。草太の先生になる夢と一族の使命を果たさなければならない板挟みを感じ取れる。

新海誠は日本の伝承や民俗学的なものを現代社会とリンクさせるのが上手いなと感じる。巨大ミミズが出現して、都市直下型地震の危機が迫る場面では、要石となった草太を鈴芽が刺すことで地震を収束させる。ここは陽菜を助けるために多くの犠牲が生まれた『天気の子』と明確に違うところだと思った。

覚悟を決めた鈴芽は草太を助ける旅に出る。ここから第2章が始まったと思った。母親替わりの環さんと芹澤と一緒に行く新たな旅は、『君の名は。』で司&奥寺先輩と糸守を探す瀧を連想させる。芹澤が流すルージュの伝言がよかった。ダイジンが喋らなくなるのも魔女宅のジジを彷彿とさせる。友達の為に東京から東北まで車飛ばせる芹澤いいやつすぎんだろ、、、。
新海誠作品には、明確な悪役は存在しないと聞いたことがあるけど、今作は出てくる人全員が良い人ばっかりで人の温かみを感じる描写が多かった。

パーキングエリアで親代わりとなった環さんが胸に秘めた不安を吐露するシーンは残酷だなと思った。長文LINE送るくらい心配して東京まで追いかける人だから本心じゃないんだろうけど観てる方も心にきた。

草太役のSixTONES松村くんの演技が上手い。草太が生きたいと自分の想いを叫ぶところはほんとに良かった。

幼少期の鈴芽へ椅子を託し送り出すシーンは、序盤に鈴芽が草太に会ったことがあると感じた伏線になってたんだなと思った。

鈴芽の故郷を綺麗だと言う芹澤。その綺麗さの裏にはたくさんの悲しみもある。被災地の当事者と部外者(地震を知らない人)の感じ方のギャップも描いてるんだろうなと。結構この一言に含まれる重みがすごいと思った。

3.11と言われてもピンと来ない世代も多くなった現在でこの映画の価値は大きいと感じた。この作品では、緊急地震速報のアラートや地震の描写が多くある。大地震を経験してきた自分は、恐怖を感じたし、新しい世代への警鐘の意味も込められてるかもしれない。鈴芽が幼少期の自分へとバトン(脚の欠けた椅子)を渡したように、震災への想いは私たちから次の世代へと受け継がれていくことが大切だと思う。

考察とか色々見たらもう1回見返そうかな
『君の名は。』と肩を並べる面白さだった。
映画館で観るべき作品だった。

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