ナナシロ

詩・写真・エッセイ・水・空気

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最近の記事

ハルシネーション

その年、ぼく、マックス、フィル、デレク、マルコムの五人はアメリカ・オーライト州、ホーキンスタウンのハイブリッジ中学校を卒業し、“五人仲良くそろって”地元のブラウンズベイ高校へ入学することとなった。別にぼくたち全員はそのまま持ち上がりで入学したわけじゃない。それぞれが一生懸命に受験勉強をした結果、そういう形になっただけだ。他の中学の友人たちも少しはいたが、ほとんどがちりぢりになった。ぼくたち、隠れ家のぼくたちだけが“いい感じに”一緒になっただけだ。 だからきっとおおいに楽しく

    • 再び書き始めた理由

      私はほとんどの興味が私の内側へ向いている。 そのことを損な性格だと思ってきた。 だって、美しい風景を見ても、感動する作品に触れても、人から感謝されても心に波風が立たないの、やっぱり損だと思うの。 正確に言うと、心に波風自体は立っている。 けれども、常にその感じているものの先に自分の存在を見出してしまって、スンと凪いでしまうのだ。 私は、風景や作品や人の存在をスナック菓子のように食べている。 ただ、小腹を満たすだけのものでしかない。 そんな人間に、言葉を紡ぐ資格があ

      • 海は わたしは 山は

        みな知らん顔で スマホ見たり 金を数えたり セックスしたりするが かつては半透明の不定形で 青くきらめいて揺蕩っていた わたしたちは海の子孫 みな知らん顔で スマホ見たり 金を数えたり セックスしたりするが もうじきその背は弓形になり 大地に突っ伏して重なっていく わたしたちは山の先祖 暗紫の地平線から 紺碧の海洋を経て 深緑の山となる 生命の道すがら

        • 等号不等号

          ある朝 鏡を見ると 頭が不等号になっていた 困惑して壁に寄りかかったわたしの頭は 締りの悪いサドルのように ぐるりと回って 小なり頭になった 放心のまま外へ出ると 不等号 不等号 不等号の群れ 大なり頭は上等な服を着て くちばしで肉をついばみ 酒を流し込む 小なり頭はというと こうべを垂れ吐きくだすばかり わたしはいつの間にか 首をぐるりと回しながら 大なり小なり飲み歩き 酩酊して裏路地で吐いた アスファルトにぬかずき ぽかりと開いた口から延々

        ハルシネーション

          夜盗蛾の詩

          ごめんなさい 私は手癖が悪いのです 私は手癖が悪いのです 朱夏の背中をくすねてしまった 星影の汀でくすねてしまった ごめんなさい ごめんなさいねと だれの顔も浮かばぬが さざなみに言う

          夜盗蛾の詩

          私たちは、誰かを殺さなきゃならない。

          今朝、精神的にざわついてしまって布団からどうやって出たら良いか分からなくなり、つい横になったままYouTubeをサーフィンしていた。 すると、バンド・水中、それは苦しいの新曲のMVが目に入り、そのタイトルにぎょっとした。 「保育園落ちた、吉田死ね」 分かる人にはきっと分かるだろう。 数年前に話題になった「保育園落ちた日本死ね!!!」というブログ記事のパロディだ。 「保育園落ちた日本死ね!!!」のブログが話題になったときのことは私もよく覚えていて、多くのネットユーザー

          私たちは、誰かを殺さなきゃならない。

          私は性的欲求を他人に対して抱かない。

          私は性的欲求を他人に対して抱かない。 と言うと多くの人は、そんな人いるわけないでしょう、それは単なる思い込みだよ、と言うだろう。 あるいは、多少ジェンダーやセクシャリティーに対して明るい人であれば、アセクシャルかノンセクシャルだろうな、と理解すると思う。 私が何セクシャルであるかはさておき、過去のセックスを振り返ったときに、私は誰かに対してその人がその人だから性交渉をしたい、と思ったことがない。 私と親しい友達は知っていることだけど、私には、こういう顔の人が好き、こう

          私は性的欲求を他人に対して抱かない。

          羽化しない蛹は、額縁の外側の夢を見る。

          ある小説に、目覚めないロボットが出てきた。 そのロボットの製作者は、これだけ高い知能を搭載したのに目が覚めない、とぼやくのだが、その製作者に対して、賢すぎるから目覚めないんじゃない?と返した登場人物がいた。 賢すぎて目が覚めないということがあるのだろうか。フィクションでなく現実で?ロボットではなく人間で? はた、とキーを打つ手を止めて考えてみる。そもそも賢さとは何だろう。 賢さとは私が思うに、額縁の外側について考える力ではないか。 私たちは愛とか美とか幸福といった抽

          羽化しない蛹は、額縁の外側の夢を見る。

          スターバースト三千世界

          私は昔からさまざまなものについて、目の前で爆発する奇妙な心象風景が浮かぶことがある。 爆発に関する明確なトラウマがあるわけでも、とびきり感覚が繊細なわけでもないのに、物心がついた頃からどこか頭の隅にずっとあるイメージ。 この爆発の心象風景は、大きく二種類に分かれる。 何かしらの物質が爆発を引き起こすものと、空間がひとりでに爆発を起こすもの。 例えば前者であれば、車線分離を示すオレンジのポールコーン。じっと見ているうちに突如として爆発して私も巻き込まれてしまうかもしれな

          スターバースト三千世界

          人が死ぬのは、死を目撃したから。

          次々と著名な方々が亡くなっている。 往生であれば取り立てて思うこともないのだけど、パンデミックしているコロナウィルスに罹って亡くなったり、自ら命を絶ったりして、お茶の間で毎日見ていた人が突如として消えていく。 その衝撃にみんなざわついている。 ある統計によると、Twitter上のツイートでここ最近もっとも恐怖の感情を伴った割合が高かったのが、日本が誇るコメディアン・志村けんさんがコロナウィルスで亡くなったときだそうだ。 きっと、つい先日亡くなった俳優の三浦春馬さんの件

          人が死ぬのは、死を目撃したから。

          黒孩子ラーメン

          今日はお昼の一時からWebメディアの打ち合わせがあったので、道中のセブンイレブンで何かご飯を買って食べ歩きつつ、打ち合わせ先へ向かうことにした。 そう心に決めてセブンイレブンに入ろうとすると、すぐ脇にラーメン屋さんがある。 あぁ、ラーメン。ラーメンいいねぇ。 やたらとたくさんののぼりが立っているそのラーメン屋さん。 うちのおすすめはこれです、という強いこだわりがなく、醤油も塩も味噌もなんでもござれ、いっそ煮干しとかイタリアンとか個性派たちも揃えてまっせ、というラーメン

          黒孩子ラーメン