つかんでは流れていく藁を捨てて

「20世紀の心理学者たちは、「人間が1日に使える意思決定の量は限られている」ことを発見しました。つまり、朝、どの服を着ていこうかとか、あるいはLINEでどう返事をしようかと意思決定をするたびに、わたしたちの心はすり減っていくのです。」(石川善樹『疲れない脳をつくる生活習慣』より)

「いつかいずれ人は死ぬ」という至極当然のことも、「だからつまり時間は有限なのだ」という部分にまで思考が及んでいないのであれば、知らないも同然だ。いつどこで何が起こるかわからない、はずなのに、なぜか私たちは明日の朝も今日と同じようにお腹を空かせながら日の光を浴びると信じて疑わない。

"SNS疲れ"のように、ネットによって消耗していく現象も、つまるところ自分の意思決定能力が有限であるということを知らないがゆえの成れの果てである。"自分にとって大切なこと"にフォーカスせずに、その時その時の"目の前のもの"に相対的に心揺り動かされて、いつしか本能でしか判断ができない猿となる。

みんなと一緒に大きな波に流されるのは簡単だ。だが、今、だからこそ気持ちを強く、いたずらに消耗させてはいけない、とも思うのだ。藁をつかむことだけに甘んじていた生き方にうんざりとして、だからこそ取捨選択してきたはずなのに、うっかりすると流されている。あわてて流れにさからう。

泳げない身分で、過ぎたことを考えてしまったのだろうか。自分の時間は、思考は、すべてが有限で、だからこそ未来に生きるしかない。今自分が学ぶことがいつか、苦しみ悩むひとの一助になるように。「私は無力だ」と思い心をすり減らすよりも、「ひとりでも幸せにする」ための意思決定をしていくために。

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