スーパーに勇気とか売ってたらいいのに

私のスーパーでの買い物は早い。毎日食べるものがほとんど一緒なので、すでに最短コースの経路が自分の中にある。スーパーに入りカゴをもち、目当てのものをレジまで持っていく。はかったことはないけど、多分3分とかかっていないし、迷いもない。たぶん、我が人生で一番堂々と胸をはって歩く瞬間はそのときだ。むしろ、それ以外は右往左往しながら猫背で下を向いて歩いている。

知人に、理想の恋人像は?と聞かれて戸惑った。なかったからだ。好きなひと、といったら、顔が綺麗なひと。スタイルがいいひと。でも、だからといって付き合いたいかといえばちょっと別問題というか、それは見ていて飽きないなあとか、ときめきを与えてくれる恋要素であって、“どういうひとと結婚したい?”とか言われると、途端に猫背になって床を見るか、ぼんやりと虚空を見つめるばかりになる。

たぶん、私の中の「結婚したい気はするけど、道のりは遠いだろうな」と思うのは、そういうところに起因するのだ。最寄りのスーパーでは最短経路を突っ走れる私は、こと恋愛となると途端に牛歩のようなスピードまで落ち、道端に咲く花をみて「かわいい〜」と言ってたかと思うと、空を見上げて「太陽……」と呟くような、どう考えても近づいたらヤバイ情緒不安定な人間になってしまう。

理想の恋人像とか、ない。と言ったら、「それって、自分がないってことなんじゃないの?」と言われてうぐぐとなった。

臆病なのかもしれないけど、焦る必要も、まあないかな、と思う。ただ、あのスーパーで歩く速度で人生を歩んだら、どんな景色が見えるのだろう、とかは思うのだ。欲しいものに一目散に向かう、あの足。

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