アクシデント時の冷静さはお金を払ってでも欲しい

生まれて初めて、救急車で運ばれた。なんていうことはない、貧血で意識を失っただけだったのだが、打ち所が悪かったようで、結果5針縫うはめになってしまった。

病院に運ばれて5分後には、麻酔を打たれて縫い付けられていく。奇妙な感覚にぼおっとしながら、つい1時間前までは、テラスでケーキとコーヒーを嗜みながらまったりと仕事をしていたことを思い出した。人生いつどこで何が起こるかわからない、という至極当然なことも、アホな私はすぐに忘れてしまう。

怖くて傷口をまだ見ることができない。見た人は一様に「うわぁ…」と顔をしかめる。父親に「無理して見なくてもいいんじゃないかな」と言われたので、勇気を出すのをやめた。

何度か気を失って倒れたことがあるのだが、そのたびに私は自分があまりにも冷静なことに驚く。周囲がざわつく声で目を覚まして、床も服も血まみれになっていることに気づくのだが、だからといって目をひんむいたりパニックになることもない。思うように動かない体と止まらない血に、「あれ、死ぬのかな?」とぼんやりと思いつつ、iPhoneに手をのばし救急車を呼ぼうとした。(見かねた周囲の方が呼んでくださった)

昔は、「また倒れたりしたらどうしよう…」と不安になったこともあったけど、かかりつけのお医者さまに「人は意外と死なないんだよ」と言われてからは、そのしぶとさを実感している。そう簡単には死なないし、本当にやばいかもと思うと、つとめて冷静に生きる方法を探す、らしい。

救急隊員や外科医に「最後に何を食べましたか?」と聞かれるたび、ぐったりしながら「5時にケーキとコーヒーを……」と言うのはちょっと恥ずかしかったし、「死にたい…」と思ったけど。


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