幻冬舎の本 購入品とおすすめ

幻冬舎の社長がTwitterでいろいろ話題になっている いろいろ思うところはあるが、ふと気になって、いままで購入した幻冬舎の本をブクログで確認してみた

ここ10年くらいで13冊くらい 登録もれもあるかもしれないが、もっとあるかと思っていたのに案外少ない マンガはコミックバーズ関連だが、雑誌は購読できていない

バーズコミックス 深谷陽「バーフバリ」 は ちからわざだったが、残念な出来だった 読後当時のメモを転記する(以下同様)

かなり急ぎで仕上げたようで、絵がラフのまま。画力はある。バンドデシネやグラフィックノベルように年単位で企画してしっかりした作品に仕上げ、年単位で売るといった枠組みではなく、売れるうちに作っておこうという日本らしい使い捨ての企画と思われ、いろいろ残念

イシデ電「私という猫」 シリーズは力作であるが、アクが強い

イシデ電の猫マンガ。劇画的な視点で「飼い慣らされない野性」としての野良猫を題材にしている。
たとえば野良猫の避妊去勢を猫の視点から「自由を奪うもの」と表現する描写や、虐待する人間に出会うエピソードなどは、既存の同ジャンル作品にはほとんど類例をみかけない。
全体的に、動物の世界に外部から干渉する得体の知れない存在として人間が描かれている。
猫マンガのジャンルが拡大したのが00年代以後なので、70年代の劇画に近い演出で描かれたこの作品にはむしろ新味がある。隔世遺伝のように、劇画の遺伝子が時代を超えて発現したかのようだ。
言い換えれば、本作は「人間以外の視点から猫を描いた」ようにみえて、実は非常に人間的な作品である。
それは、標題「私という猫」、そして導入部分、子供である自分が猫の生活に「憑依」してゆくくだりからもはっきり見てとれる。すぐれた画力や細部描写の巧みさから、リアルな作品であると感じられるかもしれないが、観察や外的な体験を主な題材にしたものではない。
あくまでも自分の内面を猫の姿に憑依させることによって描かれている。つまり、本作はイシデ電の私的な内面世界を描いた作品なのである。

ムジカ  (バーズコミックス) かかし朝浩 意欲作だったが打ち切られたようだ

ロベルト・シューマンを主人公にした漫画の第2巻。やたらルパン三世的なベルリオーズとワーグナーが登場する。漫画による音楽表現がおもしろい。残念ながら本巻で打ち切り終了らしく、シューマンの後半生など、さらにドラマチックな部分まで到らず完結してしまった。Naxosさんあたりが続きをウェブ連載したりしてくれないものだろうか・・・

倉阪鬼一郎「怖い俳句」 これがイチオシなのだが、新刊は品切れらしくプレミア付いてるので古書であっても入手すべき 今まで全く門外漢であった自分が、この一冊でがぜん俳句に興味が湧いた 倉阪鬼一郎は幻冬舎からけっこうタイトルを出しているが、時代小説はちょっと読んでいない 俳句・短歌ものの企画は良いが、あまり重版はかかっていない感じがある

これはすばらしい。俳句はあまり知らなかったが、この1冊で、とたんに興味が湧いてきた。俳句とは写生であるという理論もあるが、その場合も描写される現実をあるフレームで切り取るということになり、その構成の中に暗示された「背後の意味関係」が重要になる(それがなければ凡庸な句にしかならない)。そういった暗示性が、たとえば幻想や想念と組み合わさったときに、「怖い」俳句が生まれるのだろう。

ともかく「怖い俳句」を手に取ってほしい、というのが、自分の中での現在の幻冬舎出版物のおすすめということになる。

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