参院選:自民党比例区候補者・山田太郎氏は、表現の自由を訴えるが、緊急事態条項に積極的に賛成する(2/3)

山田太郎 氏は、緊急事態条項案についてはあったほうがむしろ良い、という意見を表明している。35分〜39分くらいを参照。

有事にあっては戦車が道交法を守るようなことはありえない。緊急事態条項があろうがなかろうが、そうなるのなら、条項を書いておいたほうが良い。懸案されるナチスドイツの法案のようなヒットラーを台頭させたほどの力はない。
緊急事態条項があろうとなかろうと、緊急事態になったら国会を通さずに動かねばならない。それなら、条項をさだめておいたほうがむしろ良い。
緊急事態条項は、かんぜんなフリーハンドを許すものではない。それに、緊急事態条項を書いたからといって守らない政府は守らないのではないか。
政府に対する信頼があるなしと、条項の有無は無関係。かえって条項を与えることで縛っておいたほうが良いんじゃないか。

このような内容を語っておられた。

基本的に政府が法を遵守するという前提に立つならば、たしかにこれは一理ある、リアリストらしい意見であろう。ただし、論理の展開をみると、アレッと思うところもある。

山田氏は緊急事態条項が政府を縛る、という前提に立っている。政府が信頼できるならば、たしかに有事のための例外的な法を定めておくほうが良いかもしれない。

しかし政府が信頼できないとすれば、緊急事態条項が政府を縛るのではなく、むしろ権限を強化してしまうという懸念がある。信頼できない政府が自らの権限についてストイックな制限をかけることは考えにくいからである。

この可能性について、この部分の山田氏の説明は十分に触れられていないと感じた。しかしこれは、表現規制に反対する立場であるならば、まず避けては通れないポイントではないだろうか?

たとえばトルコの非常事態宣言は2016年から2年あまりも続き、その間「大量の解雇、拘束、逮捕」が行われ、国際的にも批判されていた

軍の一部によるクーデター未遂事件が起きたトルコで、エルドアン大統領が3カ月間の非常事態を宣言した。大統領は勅令によって基本的人権を制限することも可能となる。既に政府は6000人以上の軍人を逮捕し、政権に批判的な宗教指導者ギュレン師の支持者と見られる公務員5万人以上を解任や解職にするなど大規模な粛清を進めている。(トルコ非常事態宣言 民主主義の終わりとエルドアン体制の混迷への懸念、川上泰徳 2016/7/21(木) 23:08)

ナチスドイツよりも直近のこのトルコで起こった、こういったシナリオについても考えるべきではないか。また、同時期に起こったアメリカの国家緊急事態法についても比較すべきだろう(このあたりは自分でも勉強しなければならない)。

また、「大丈夫だ」という理由で、恣意的に(どんなふうにでも)利用できる法案を通してしまうことの危険性は、表現規制問題で真っ先に指摘されていたものではないだろうか? どうもその点で立場が入れ替わってしまっているような説明である。

他の箇所では、「首相は改憲案をそのまま出すつもりはない、審議会で十分に議論が行われる」と言及している。おそらく山田太郎氏は、現在の自民党政権と安倍首相を十分に信頼しているのだろう。ただ、有権者の側には、そこまで信頼をおけない層もあり、山田氏はむしろ、そういった層を説得しなければならないのではないか。

とはいえ山田氏は現在は自民党から出馬し、なおかつ安倍首相は現在の自民党総裁なので、党への信頼はある意味当然のことかもしれない。そういう意味で、山田氏の首相に対する評価についてもう少し知りたいものである。

これらの点は、私が知らないだけで、他の部分や他の動画などにあるかもしれないので、追って調べてゆきたい。

もう一つ、もし山田太郎 氏が当選して、自民党内で力を持ったとして、表現の自由アピールを「そのまま」続けてくれるのだろうかという懸念もある。山田氏に対する不安や不信とではなく、政治的に可能なのだろうか、という問題である。これについては項目を改めたい。