短評:三島由紀夫作品の成功した映画化のひとつ 〜 「肉体の学校」木下亮 監督、1965年

シネマヴェーラ 「肉体の学校」木下亮 監督、1965年。三島由紀夫の小説を映画化した作品である。

活字を使ったスタイリッシュな字幕。市川崑 作品やATGの映画に同系統の演出が多い。60年代風のモダン調と言えようか。

原作は未読であるが、ほぼ忠実に映画化されているようだ。

下層階級からのし上がってゆこうとするバイタリティあふれる若者=人間的な英雄と、元華族のアラフォー女=天上の女神との関係。英雄は卑俗な情念をぶった切って勝ち抜いてゆくが、ギリシア神話のアキレスのように、最後には弱点を射貫かれてしまう。

三島らしいギリシア神話的な、どことなく作り物めいた演劇的空間であり、岸田今日子はその空間によく似合っている。

同日に観た日本ヌーヴェルバーグ調の「牝」、谷崎潤一郎原作の「堕落する女」と比べるとずいぶんレベルが高い作劇である。

しかしこれは監督の力量というよりも、原作の構成力が大きいようにも思われる。監督が前年に撮った「男嫌い」は同じようなスタイリッシュな映像であったが、作劇はどうも締まりがなかったからである。

本作は三島の原作という芯が通って、おもしろくなったと思われる。三島由紀夫作品の映画化が成功した作品といえよう。