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「枯れた技術の水平思考」というデザイン手法

デザイナーとしての横井軍平

 横井軍平という人がいる。横井さん(会ったことはないのだが、尊敬の念を込めて横井さんと呼びたい。)は任天堂のゲームの黎明期を支えたゲームクリエイターで、ゲームウォッチやゲームボーイを作った人だ。ゲームクリエイターという肩書きが生まれる前から、ゲームを作っていた。自分としては、横井さんは技術とコミュニケーションを活用した、いわゆるデザイナーだと思っている。

「枯れた技術の水平思考」

 横井さんが提唱していたのが「枯れた技術の水平思考」だ。これは「既存の技術(先端ではない技術)を既存の商品とは違う使い方をする」という技術へのスタンスを体現する言葉だ。多分な自己解釈を含みつつだが、これは自分にとってデザインを考える上で大きな影響を与えていると思う。最先端のテクノロジーは、確かに現代においてデザインの大きな飛躍のポイントであるし、テクノロジーがダイレクトに驚きを生み出すパワーは理解している。ただ、同時にそれだけが技術との付き合い方ではなく、既存の技術に別の角度で光をあてることも、それに負けないくらいの面白さを作れると思っている。

技術を扱うデザイナーのセンス

 ゲームウォッチに、当時電卓で使われていた液晶や半導体を活用するなど、技術的には新しくないものを、新しい使い方をするというアプローチはとてもデザイン的ではないかと思う。

 その視点で探してみると、技術としてはそれほど新しくないものを、使い方の視点を変える事で生み出されている新しい家具や照明は非常に多いので探してみると面白いと思う。

 「枯れた技術の水平思考」までいけているかはわからないが、自分の仕事でも、書き味をコントロールする書道筆の技術を洗顔用のブラシに使ったり、店舗内で自動的でポイントを付与したりID取得に使われるiBeaconを都市探索のイベントに使うなど、「最先端の技術」ではなく「技術の使い方」をこそ意識したものは少なくない。

テクノロジーとの付き合い方への示唆

近年、デザインを行う上でテクノロジーを無視することはできないし、新しいテクノロジーを使うことは新しいデザインを生み出す方法論としてとても有効だと思う。同時に「もはや普通の技術」でも、デザインの方法論で同じくらい新しい面白さを生み出す原動力になることを忘れたくないと思っている。


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