313系のロングシート車

静岡の313系はロングシートだが、これもそう捨てたものではない。211系と併結しているとよくわかるが、車内の騒音と揺れが、211系よりもはるかに少ない。電車の良し悪しはこういう基本的な性能によるところが大きい。211系との併結列車に乗ると、313系の方が人気があるように見える。211系も113系との比較では静かで乗り心地が良くてしかも窓が大きくて快適だったのだが、それだけ電車の性能が向上しているということなのだろう。静岡の211系にはトイレがついていないのだが、トイレつきの313系と併結することによって編成中に1箇所はトイレがつくようにしている。

ロングシート車の弱点は、もたれかかる場所がないため、加減速時の衝動を受け止める場所がないことである。そのうえ313系はもともとクロスシート車向けに設計されているので、窓の位置が低く、ロングシート車では背もたれの高さが低い。そのため、正直座り心地は良くないのだが、どうせ静岡では短時間しか乗らないし、それ以外のメリットの方が大きい。このうち、制御器や緩衝器で工夫すれば、加減速時の衝動を抑えることができる。

特筆すべきはその窓の大きさである。3扉車なのでもともと窓が大きいが、固定窓なのでさらに大きく感じられる。東京圏の通勤電車と異なり、視界を遮るものが車内に無いので、クロスシート車と比べても圧倒的に開放感がある。車内の広告も少ないので(どうせ出稿が無いのだろう)、すっきりとしている。そのため、身延線のように車内が空いていればとても眺めが良い。

313系のロングシート車は身延線にも入ってくるが、たしかにラッシュ時には便利かもしれないものの、駅間距離が短く運転速度が低い上、軌道もあまり良くないので、313系の真価が発揮されない。313系が真価を発揮するのは東海道線だろう。

静岡の113系が廃車になる際、下手をしたら中央線の211系のお古が回ってきたかもしれないところ、わざわざ静岡向けにロングシートに設計変更してまら新車の313系が投入されたのは、車種統一化という点では疑問だが、おそらく中央線の211系でトイレつきなのは4両編成だけなので、3両編成2本で6両編成を組むときにトイレがつかなくなってしまうのと、4両編成と3両編成を併結して7両にすると輸送力過剰になるし、電動車比率が異なると性能の低い方に合わせることになるため効率的でないといったことが考えられる。

今後静岡に315系ロングシート車が入って211系が置き換えられると、211系とペアを組んでいた313系のありかたも変わってくるだろう。単純に考えれば従来211系とペアを組んでいた313系3連が313系同士で6連を組むのだろうが、飯田線の213系の置き換えも必要で、そのために静岡の3000番代が飯田線に転属するようなことがもしあれば、身延線御殿場線用に代わりの車両が必要になるので、発電ブレーキ付きの2600番代や2300番代がそれらの路線に充当されることもありうる。発電ブレーキ無しの2500番代は東海道線で3+3で走りそうだが、静岡には転換クロスシートの8500番代もいるので、ロングシートの2500番代と転換クロスシートの8500番代とがペアを組むこともありうる。ロングシート車だけとか転換クロスシート車だけの編成よりも、編成中にロングシート車と転換クロスシート車の両方がある方が乗客の選択の機会があって便利なのではないだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?