レンタカーでヤリスクロスハイブリッドに乗ってみた

レンタカーで一番安いのを予約したら「クラス無指定」のプランだったので、ヤリスクロスに当たった。しかもハイブリッド車でほぼ新車だった。

【大きさと重さ】

サイズはBセグメントとCセグメントの中間くらい。重量はレンタカー向けの一番安いグレードで1160kg。ガソリンエンジン車との差は50kg。普通のヤリスハイブリッドの一番安いグレードの重量は1050kgなので、ヤリスよりも100kg以上重い。

普通のBセグメント車よりも全長が長いので、後席のスペースにも荷物室のスペースにも余裕がある。しかも天井が高くてアップライトに座らせるので、実際のスペースは大したことがないが、それでも広く感じられる。この辺りの空間の取り方はBセグメントSUVで標準的なもの。

【パワートレイン】

モーターアシストがあるので発進時はモーターのみ、ある程度加速するとエンジンが回るが、さほど回転数が高くないのでゆったりと走れる。しっかりと踏めばかなり加速する。高速道路での追越加速もストレスがない。

ノーマルに加えてエコモードとパワーモードがあるのはプリウス以来のトヨタハイブリッド車の標準。ノーマルモードだと体感以上に加速が良い。公道の流れについていくだけならエコモードでも十分である。燃費表示がJC08モードからWLTCに変わってから、3代目プリウスみたいな極端に緩慢な設定をやめてきびきびと走るようになった。

アクセルを踏み込むとエンジン回転数が上がるが、3気筒エンジンなので振動が大きい。BMWのように高く売れる車なら振動を少なくできるのだろうが、このクラスの車なので、エンジン回転数が上がる頻度が低ければ敢えて対策しないという割り切りはありうる。

【ブレーキ】

ハイブリッド車なので気軽にブレーキを踏めるのがありがたい。停止直前まで回生ブレーキが効くすぐれものだが、ブレーキコントロールが一番難しい停止直前に回生ブレーキが油圧ブレーキに切り替わるので、滑らかに停止させるのが難しい。

【足回り】

まだ走行距離が少なくて当たりが取れていないのか、ゴツゴツした乗り味だった。タイヤはヨコハマBluEarth-GTの205/65R16。16インチの割にはごつごつする。

また、重心が高いせいでやや車体が揺れる。着座位置が高くて見通しが良いので、公道の速度域でゆったりと走るのに向いている。

【シート】

ゆったりとしたサイズながらしっかりと体を支えるよくできたシート。室内高の高いSUVなのでアップライト気味に座ると合う。

【装備】

レンタカーなのに追従型クルーズコントロールやレーン保持機能がついているので、高速道路ではすこぶる快適。全車速対応型の追従型クルーズコントロールをつけるため、最近はBセグメント車でも電動パーキングブレーキがついている。電動パーキングブレーキはPレンジと連動しており、Pに入れると自動でかかり、Pから動かすと自動で解除される。シフトレバー操作時にパーキングブレーキを操作しなくてよいのは楽だが、慣れないうちは気持ち悪い。

オートハイビームもついているが、有効化するためのステアリング右下の奥まった所にボタンがあり、不慣れな人にはわかりにくい。オートハイビームは使う人は使うし使わない人は使わないので、そういう位置付けなのだろう。なお、前方の状況に応じてハイビームを照らす範囲をコントロールできるのはLEDヘッドライトだけであり、ハロゲンランプにできるのはオートハイビームまでである。

カーナビ周りは新しいトヨタ車の標準で、Apple CarPlayやAndroidAutoに対応しているのでスマホを接続して普段聴いている音楽を聴くことができる。普段使いではさほどありがたみを感じるわけではないが、レンタカーで普段通りの環境にできるのはありがたい。

ステアリングに各種スイッチがついている。右側はクルーズコントロールのボタンなので、さほど迷わない。左側には上下左右の矢印ボタンがついている。最初は何のボタンだかわからなかったが、適当に押してみるといろいろ出てきた。探し回った末にやっと平均燃費と走行可能距離を表示させることができた。

シフトレバーはアクアと同様に普通のAT車のもの。プリウスも普通のシフトレバーにすればDとRとを間違えることはないはずなのに、どうして頑なに変なシフトレバーを採用するのか疑問。ガソリンエンジン車はDレンジで横に倒すとマニュアルモードになるタイプのシフトレバーがついていて、いまどきのBセグメント車はレベルが高い。ハイブリッド車のシフトレバーがシンプルなのは、エンジンブレーキをかける必要がないため。ハイブリッド車で減速したければフットブレーキを踏むだけで回生ブレーキがかかるので油圧ブレーキの使いすぎを心配する必要がない。一応Bレンジもついているが、エンジンブレーキがかかるので回生ブレーキによるエネルギー回収が減少する。尚、バッテリーが満充電になると、下り坂でブレーキペダルを踏んだときに自動的にエンジンブレーキがかかる。

【質感】

内装の質感も走りの質感もBセグメント車としては十二分だが、Cセグメント車と比較してしまうとやはり車格相応の差を感じてしまう。例えば、扉の内張りの布のように見えるものはプラスチックである。ソフトパッド風のプラスチックはよくあるが、布張り風のプラスチックは初めて見た。しかし、滅多に触れることがないので、それがプラスチックであろうとさほど困らない。

Bセグメント車ベースで広くて装備も充実しているので得した気分になってしまうが、車格が上の車と比べて切り詰めている部分があり、限られた予算の中でどこを切り詰めるかとなると、質感という、無くてもさほど困らないものが切り詰められるのだろう。他のBセグメント車同様、連続して乗車する時間が短ければ質感が乏しくてもさほど気にならないし、日本のドライバーの大半は長距離を走らない。

【燃費】

WLTC平均燃費30.8km/Lに対して、市街地や高速道路や山道等さまざまな種類の道路を走って27km/Lくらいだった。満タン給油での走行可能距離は800km程度。せっかく燃費が良いのに後続可能距離が物足りないが、燃費が良いことを前提に、燃料タンク容量が36Lしかない(ガソリンエンジン車は42L)。満タン給油で使える容量は実際には30L程度なので、これに実燃費を乗じたものが走行可能距離となる。普通のヤリスハイブリッドの燃料タンクは同じく36Lで、車体が軽い分WLTC燃費が5〜6km/Lほど高いので、ヤリスだと満タン給油で1000km近く走れる。

燃費に有利な条件の道から燃費に不利な条件の道までいろいろな種類の道路を走った割には平均燃費表示の数字はほとんど変動しなかった。加速に要するエネルギーの一定割合が回生ブレーキで回収されるし、制御が緻密なので、下手な運転をしてもさほど燃費が悪化しない反面、上手に運転しても燃費改善の余地が乏しい。ハイブリッド車は下手な人にやさしい。

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