嗚呼夏休み
ツイッターで
「#主婦らの夏休み戦争」
なんてタグを作っておいてなんだが、夏休みにはロマンが溢れている。
特に小学生の頃の夏休みといったら、
朝のラジオ体操、午前中は夏休みアニメスペシャルでドクタースランプアラレちゃんや幽遊白書を毎日見れる。(静岡県民にはわかる)
午後は友達と遊び倒して真っ黒に日焼けして。
両親の故郷が東北だったため、お盆は毎年1日がかりで車で帰省して、一週間過ごす。
いとこのお兄ちゃんお姉ちゃんに毎日遊んでもらって、じいちゃんばあちゃん、親戚のおじちゃんおばちゃんにお小遣いを貰う。
おやつには毎日採れたての桃を剥いてもらう。
古い古い家だったため、トイレは外に出なければならない。
深い穴が空いてるだけの暗い空間に紙はトイレットペーパーでなくいわゆるちり紙というやつだ。
お風呂も外に出て、母が薪を炊いてわかしてくれる。
今思えばいつの時代かと驚いてしまうが、平成の世にもこんな家がまだ実在していたし、子供だった私は不便ながらもすべてがスリリングでわくわくする特別な日々だった。
寝室は箪笥の重みで床が沈み、出来た隙間から猫の親子が入ってきたこともあった。
帰省からの帰りはお土産をたくさん持たされて、再び1日がかり。
くたくたになって家に着くと、やっぱり家が一番だー!と笑い、次の日からはまた友達と遊び三昧。
テレビが聞こえなくなるくらいの蝉の声
付きっぱなしのテレビで流れる甲子園
木々の隙間から透けて見える日差し
駄菓子屋さん
ツユクサやオシロイバナで色水作って
夕焼けの空の広さ
花火
夜に聴こえる虫の声と、早朝の空気の匂いから微かに感じる秋の気配
このノスタルジーは、夏休みという概念そのものだ。
あれから幾年。
親となって迎える夏休み。
我が子らの夏休みは、環境が全く変わった。
まず子供の居場所は家ではない。
保育園か、学童だ。
何より暑すぎて外に出れない。
帰省をするが、娘たちにはいとこがまだいない。
家で見るのはもっぱら動画だ。
エアコンを効かせて閉めきった家の中には蝉の声は聞こえないし、秋のにおいも届かない。
なんということだ。
私の大事に抱えているノスタルジーが全滅しているではないか。
我が子たちは、あの楽しくわくわくした思い出すとぎゅっとなるようなつかの間の日々を味わうことが出来ないのだろうかーーー?
などと少しだけ思ったりもしたが、この子たちにとっては今がまさに現実の「夏休み」であり、
この子たちなりに思い出となり、将来ふと思い出してはノスタルジーに浸るような日々になるのだろう。
それがどんなものかは私にはきっとわからない。
不思議で少し寂しくて、面白い。
だから私は私の夏休みを、美しい額縁に入れて心の中に飾り続けよう。
そして私の今のこのいっぱいいっぱいな日々も。
子供の宿題、お弁当作り、送り迎えに仕事に時々子供の病気で本当に毎日が戦争なこの日々も。
いつしか額縁に飾りたくなるような美しく懐かしい日々になるのかもしれない。
そんなことを考えながら、今年の暑い夏が過ぎてゆく。
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