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昔昔のお話

そこには部族がいた。独自の言霊と呪いを操り
様々な儀式を行い、部族を栄えさせる。
そこにいる少年の話。
その少年は誰より優秀や呪いを吐けた。
その少年は誰より純粋な呪いを宿せた。
その少年は誰より痛みを呪いへ孵した。

だがその少年は力の大きさ故に友がいない。
笑い合いたい、くだらない話をしたい、少年はずっとそう願っていた。

少年は成長しやがて青年になった

ある時、青年は王の元へ向かった

王は沢山の馳走、武芸、歌で青年を楽しませた。
青年は人生で1番笑顔になったという
青年は心が踊っていた、いずれ村を旅立ち、王に仕え、戦おう。そう将来を見据えた。

青年が帰る日、少年は地下へと案内された

そこには部族の者達がいた。
青年が不思議に思っていると部族の者達は言霊を唱え始め少年を棺へ封じ込めた。

青年は何故自分以外優秀な者がいないかこの時理解した。

皆、自我を奪われ人柱となっていたのだ。
この国を守るため、災いを遠ざけるため、より大きな呪いで防ぐ部族の因習。

だがその年、青年が完全に自我を奪われる事は無かった。
青年の前の人柱、朽ちるハズの人柱がまだ効力を発揮していたのだ。
不要となった青年の棺は牢獄へと埋められた。

青年はそこに至るまでの全てを呪った
その呪いはそれまでのどんなモノより大きく、部族を滅ぼした、そしていずれは王にさえもその呪いは届くだろう。

青年は小さな虫に貪られる葉のように薄れていく自我を必死に保ち牢獄の底で呪い聴いていた。
悪党の喚き声、忌み子の鳴き声、下衆の嗤い声。
その声が増える度に呪いも増していく。

まだ青年は呪う、来る日も来る日も呪い続ける
まだ青年は待つ、来る日も来る日も待ち続ける

己を棺に封じ込めた全てを。
己を解き放ってくれる者を。

おしまい


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