ざんねんな母、の日#キナリ杯

あれは去年の5月のはじめ

子供部屋を整理していたら
物入れの中から
見慣れぬ小さな紙袋

中にはリボンがついた
クリアケースに入った
小洒落たオイルとクリーム

なんじゃこりゃ?
覚えがないなあ

長女が友達にもらったんかな?
んもーこんなとこに突っ込んで!
なんちゅーガサツなやっちゃ!!

後で長女に聞こうと
とりあえず洗面台に置いた

夕方、長女が帰宅して
ちょうど洗面台にいたから

ねーねー
あのさ、そこにあるやつ
と指差した先には・・・

なんもない
ありゃ?

すると、長女が

あれ、わたしが隠してたの
母の日の・・・
とボソボソ言って
わんわんと泣き出した

んああああああああ!
し、しまったあああ!
やらかしたー

ガサツな母、
ピュアな長女の心
ふみにじり事件発生!!

と、とりあえず長女をハグして

わーっ!ごめーん!ごめんごめん!
ママなーんも見てない
なーんも知らん、知らんでぇ

てゆーかてゆーか
めっちゃくちゃうれしい!
今あなたが泣いてるのも
めちゃくちゃかわいいいいい!

と、支離滅裂の
感情先行型フォロー
いやフォローになってねえ!

はっ!しかも鍋火にかけたままやっ
マ、ママ、ごはん作らなっ
うわーん、ごめんなさーい

とフォローもそこそこに
逃げる始末

料理をしていても
まだ娘の嗚咽が聞こえてきた

そうかあ、そんなに
楽しみにしてくれてたんだよね

ジャジャーン!
母の日サプラーイズ

うわー
なにこれ?いつのまに?
ありがとーーーー!!

っていう感動のシーン

ママをおどろかせたくて
ママの喜ぶ顔がみたくて
ワクワクドキドキ

それなのに、わたしはそれを
ガサツにふみにじった

夜寝る前にもう一度
娘を抱きしめて
ちゃんと謝って
ちゃんと感激を伝えた

言わないでー
また泣けちゃう
でももういいよ
と長女

なんてやさしく
なんてピュア!

そんな彼女を育てたのは?

わたしー!!ドヤドヤッ

お姉ちゃんが号泣中
わたしはなーんも用意してないけどね!
と、ドヤ顔で言い放った次女

そんな彼女を育てたのも
紛れもなくこのわたし

そんな母の日から一年
今年もまたその日がやってきた

今年は台無しにしないよう
気をつけなくては!
と思う反面

何気に期待も膨らんでいた

またサプライズかなあ
何してくれるんかな〜

もう中2と小5やしな〜
プレゼントもレベルアップちゃうかなぁ

コロナ休みで

毎日三食ご飯におやつ
お母さんいろいろ張ってるし

それなりに感謝は
してくれてるはずやで
ムフフ

鼻の穴を膨らませながら
コーヒーを飲んでいると

娘たちがやって来た

ママこれ・・・と渡されたのは

とてもかわいい手紙だった

ママいつもわがまま
言って困らせてごめんね

いつもおいしいご飯ありがとうね

大きくなったら
温泉連れて行ってあげるね

本当にうれしくてかわいくて
涙しながら読んだ

それからお花もくれた
のだけど

夫が娘たちに頼まれて
前日に用意したらしいのだけど

なんとまあ
小さくてしょぼいやつだった

スーパーの隅で300円とかで
売ってるやつ
リボンもない

いやそんな無粋なこと
言うたらあかん
あかんねんけど

娘たちが慌てて前日に夫に頼み
お金も夫が払っていたらしく・・・

めっちゃ他力本願やないか!!
その場しのぎやないか!!
と思ってしまった

そして夫に対しても

この花選ぶかしかし
もうちょっとあるでしょ
せめて1000円くらいの
買ってこいやー
気がきかんなぁ

と内心つっこみまくっていた

いやっでもっだけどっ!
気持ちはありがたいわ
感謝感謝やわっ

もちろん
熱く御礼申し上げた

さて
一連の花と手紙の儀式が終わると
娘たちは各々スマホを触ったり
テレビを見たり

いつも通りの日常・・・

あれ?

母の日といえば
家族がカレー作って
くれるんちゃうの?

マッサージとかは??

そんな思いを抱きつつ

朝ごはんをつくり
洗濯物を干して
お昼ご飯をつくり

モヤモヤモヤモヤ

ママ友からのLINEには
「今日は母の日だからママは
ご飯つくらなくていいんだって」

Facebookには
「今年もおいしいご飯とステキな花束をいただきました〜」

それそれー
そういうやつーー

いいなーいいなー

なんだこの敗北感!!

母の日勝ち組たちの
高笑いが聞こえてくるぅぅぅぅ

負け試合に
心折れそうなわたしは
それでも
サヨナラホームラン的な
サプライズへのかすかな望みを胸に

夕飯の時間ギリギリまで
二階でこもって粘ってみた

んがっ

なーんも起こらんし!
お腹空いたし!!

仕方なくキッチンへ

くそーなんやねん
腹立つわー!
母のに普通に家事するの
なんか嫌やわ〜

キッチンでわざと
ガチャガチャ音たてながら
ハーッとわざとらしく
大きなため息ついたりしながら
夫と娘達の夕飯を作った

お腹空いてたけど
一緒に食べる気分ではなく
階段をドシドシ上り
ドアをバンッと閉めて
二階の部屋にかけこんだ

なんだか悲しいやら
さみしいやら
泣きながら
洗濯物をたたんでいた

なんだこれ
勝手に期待して
アホちゃうか

しばらしくたら
次女がおもむろにやってきて
洗濯物を畳み始めた

どうしたん?と聞くと
「パパに言われたー」

次女よ、
それは言うたらあかんやつや・・・

長女もしばらくして
しょんぼりと部屋に入ってきた

「ママごめんね。もっと何かしてあげたらよかったね。ごめんねごめんね」
泣きじゃくり謝っていた

あれ?
母の日に泣く長女の姿・・・

デジャブ?

私はまたやらかしたやん

母の日に娘の心を踏みにじり事件
シーズン2やん!

子供達なりに考えて
ちゃんとしてくれたのに

勝手に期待して
SNSに翻弄されて
わかりやすく拗ねて
理不尽に当たり散らかして

母の日のあほー

感謝されなあかん
ステキなプレゼントされなあかん
そうあるべきだと
思ってしまうやないか

逆にプレッシャーやねん

いや
アホはわたしや

娘たちの
お母さんでいられること
それだけで何よりも幸せなんだ

娘たちが元気で笑ってくれてること
それが母の幸せの全てなんだ

こんな子供じみた
アホなお母さんなのに
感謝してくれる娘たち

ほんまにほんまに
ありがとうね

来年こそは
お母さんは大人になります
ごめんなさい

追伸

母の日の数日後が
誕生日のわたし

その日は全ての家事を
家族がしてくれました

気ィ使わせまくりやないか!

ほんまごめんね。
でも、めっちゃうれしかったー!!

心やさしい家族へ
感謝の気持ちをこめて
残念なお母さんより

#キナリ杯



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