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2023年韓国競馬施行計画

既に2023年の韓国競馬が始まっていますが、遅ればせながら韓国馬事会(KRA)より年明けに発表された今年度競馬施行計画の内容についてご紹介します。

2023年競馬開催計画:目次
https://race.kra.co.kr/down/raceplan_2023.pdf (PDF, 韓国語版のみ)

I. 基本方針(1p)

競馬産業振興や競馬番組の質向上に向けた取り組みなどについて記載されています。

II. 重要な制度改善事項(2~6p)

年間開催日数の増加(2022年96日→2023年98日)やリステッド競走の新設、重賞競走の賞金増額、ナイター開催日数減少、薄暮開催開始といったことについてのサマリーが記載されています。

III. 2023年施行概要(7~8p)

1.開催日・閉場日

2023年1月6日(金)~12月31日(日)の間、基本的にソウルは土・日曜日、釜山慶南は金・日曜日、済州は金・土曜日に開催されますが、下記日程のみ休止されます。

① 2023年1月20日(金)~1月22日(日):旧正月
② 2023年7月29日(土)~7月30日(日):酷暑期休止(ソウル)
③ 2023年8月4日(金)~8月6日(日) :酷暑期休止(釜山慶南・済州)
④ 2023年9月29日(金)~10月1日(日):中秋

https://race.kra.co.kr/globalEn/racingFixtures.do より

2.開催時間

<昼間開催>
金曜日:1R 11:00 / 最終R 18:00(釜山慶南・済州の場外発売のみ)
土曜日:1R 10:40 / 最終R 18:00
日曜日:1R 10:40 / 最終R 18:00

<ナイター/薄暮開催:2023年7月14日(金)~8月19日(日)>
金曜日:1R 14:00 / 最終R 21:00(釜山慶南・済州の場外発売のみ)
土曜日:1R 13:30 / 最終R 21:00
日曜日:1R 11:40 / 最終R 19:00

ナイター開催は8週間から6週間に短縮され、日曜日はナイターから薄暮に変更したことが昨年度との違いです。

IV. 競馬施行体系(9~18p)

1.競馬編成

・フルゲート:14頭(一般・リステッド)/16頭(グレード)
・クラス編成:6クラス制で、詳細は下記記事を参照ください。

上記はともに前年度から変更はありませんが、一般戦(平場)は概ねフルゲート12頭で運用されています。

2.競走距離

昨年度の表では全て◎になっていた中、今回は説明書きが無いまま◎と○の2種類に分類されていますが、恐らく◎は基幹距離を表すものと推測しています。

3.負担重量

<馬齢重量>(前年度からの変更無し)
”馬齢”という表現ですが日本で言うと別定戦のようなものであり、主要なグレード競走に対し上半期(1~6月)は古馬58~59kg、下半期(7~12月)は古馬57kgを基本として、3(4)歳馬に対しては下表の通り月度と距離のマトリックスで細かく調整されます。(牝馬2kg減・南半球産馬の減量有り。以下同じ)。

しかし、馬齢戦で行われるグレード競走は上表・赤枠囲みの部分しか無く、3歳4~5月の2000m(ヘラルド経済杯G3とYTN杯G3)は6~6.5kgという大きな減量があるとは言え普通はクラシックを目指しますので、実際に適用されるのは4kg以下の減量になると言えます。

なお、2歳馬については実際にそのような馬齢戦は行われません(ただしクラス4~5あたりの下位等級では後述の別定やハンデで古馬混合戦が行われます)。

<別定重量>(前年度からの変更無し)
別定A:日本で言うところの”定量”で、概ね57kgを基本に性齢で調整。

別定B:下記の通り国内レーティング3~4ptごとに1kg幅で調整。

別定C:クラス6のみ適用、2着/3着回数に応じて馬齢重量+0.5~1.5kg増。

<ハンデ重量>(前年度からの変更無し)
日本のようにハンディキャッパーが決めるのではなく、トップハンデ馬を基本重量とし、その馬から国内レーティングが1pt離れるごとに0.5kg減らすという方式です(例:RT差4=2kg減)。これにも牝馬2kg減や南半球産馬調整・見習騎手減量が適用されます。

4.見習騎手減量

前年度からの変更はありませんが、一般競走(平場戦)においてデビューから5年以内且つ通算40勝未満の見習騎手(現地用語では”修習騎手”)に対し下記の通り行われます。ちなみに女性騎手への減量制度はありません

 -4kg 10勝未満
 -3kg 10勝以上20勝未満
 -2kg 20勝以上30勝未満
 -1kg 30勝以上40勝未満

5.レーティングシステム細部運営基準

前年度より変更はありませんが、これは韓国独自の国内レーティングとして1~140ptの間で設定され(1pt=0.5kg)、クラス分けや負担重量の設定、はたまたファンにとっては予想根拠の一つとして用いられるものです。

基本的には4着馬を基準馬として着差(1馬身=2pt換算)や負担重量差に応じて増減させるものとしており、ここだけ見ると国際レーティングと似ている部分もありますが、1着馬には無条件で最低5pt追加したり、昇級後の成績不振馬には着外回数に応じて減点させるなどの独自ルールもありますので、似て非なるものかと思われます。よって、詳細のご紹介は割愛します。

なお、国際レーティングについても都度算定されていますが、KRA公式サイトでは年1回、全所属馬の年間最高レーティングが公表されます。

韓国語版のみですが、赤枠部分が年間最高レーティングです
KRA公式サイトは下記リンク先へ

V. 2023年競馬施行細部計画(19~35p)

1.年間競走数

ソウル 1,052レース(前年比 +81)
釜山慶南 710レース(前年比 +24)

全般的に大きな変更はありませんが、2022年度に比しクラス4~5の競走数が増加しています。

2.入厩(新規登録)基準

2歳時にKRA育成牧場で実施される育成調練審査に合格した馬は3歳6月までの入厩(新規登録)が可能ですが、同審査を経ていない場合は2歳12月までに新規登録しなければなりません。

その他、持ち込み馬に対するインセンティブの一部引き上げについても記載されていますが、詳細は割愛します。

3.(欠番)

前年度はこの項において幼駒市場取引活性化のためのインセンティブや牝馬限定戦・父母韓国調教馬産駒限定戦・新馬戦の拡大、そして厩舎別対抗戦について記載されていましたが、今年度は項ごと無くなっています。

厩舎別対抗戦は本当に実施・機能していたのかどうかが不明ですが、各限定戦や新馬戦の拡大はひとまず初期目標が達成されたため、今年度も同規模での実施という意味で省略されたものと推測します。

4.大賞・特別競走施行概要

<基本方針>
① ブルーブック追加登載やレース格の昇格を目指した大賞競走(グレード+リステッド)の品質強化、② G1競走を頂点としたシリーズ体系の高度化を通じ国際舞台で競争できる最高優秀馬の選抜機能強化、を基本方針としています。

<大賞・特別競走一覧>

上表のExcelファイルはページ下部よりダウンロード可能です
(ご自由にお使いください)
これは筆者自作の体系図です

大賞競走数はG1 5競走、G2 7競走、G3 11競走、リステッド14競走となっており、2022年度と比べて下記の違いがあります。

  • グレード競走への昇格

    • ヘラルド経済杯(L→G3)

    • 国際新聞杯(L→G3)

  • リステッド競走の新設

    • ブリーダーズカップクイーンL(内国産3歳以上牝馬)

  • 開催時期変更

    • トリプルクラウン・ティアラが概ね1か月ずつ後倒し

    • 古馬牝馬シリーズが概ね1か月ずつ前倒し

    • SBSスポーツスプリントG3とソウル馬主協会長杯G3の順番入れ替え

  • 施行条件変更

    • 国際新聞杯G3(内外混合戦→内国産馬限定戦)

    • 慶尚南道知事杯(内外混合戦→内国産馬限定戦)

5.条件別最優秀馬選抜シリーズ競走及び国際競走

<シリーズ競走施行体系>

<古馬スプリンター・ステイヤー・クイーンズツアーシリーズ>
ソウル・釜山慶南の各競馬場でチャレンジ競走が実施され、着順に応じたポイントが付与されます。そして累積ポイント上位7頭(ソウル3頭+釜山慶南3頭+前年度優勝馬)が優先出走権を得て第1関門に臨み、以降同じような形で第2,3関門を経て、最終的な累積ポイント数でシリーズ最優秀馬が決定されます。

<クラシック三冠:トリプルクラウン・トリプルティアラ>
前年度の2歳ジュベナイル(JV)シリーズからポイント付与が開始され、累積ポイント上位15頭(ソウル8頭+釜山慶南7頭)と前年度JVシリーズ優勝馬の計16頭が第1関門に臨みます。その後各関門の間に実施されるチャレンジ競走を勝ち上がってきた馬を含めて累積ポイント順に上位16頭(ソウル9頭+釜山慶南7頭)が第2,3関門に臨み、最終的な累積ポイント数でシリーズ最優秀馬が決定されます。

<2歳ジュベナイル(JV)シリーズ>
チャレンジ競走と第1,2関門を経た累積ポイント上位16頭(ソウル8頭+釜山慶南8頭)が第3関門であるブリーダーズカップルーキーG2への優先出走権を得て、最終的な累積ポイント数でシリーズ最優秀馬が決定されます。

<コリアプレミアシリーズ>
シリーズ6競走(コリアカップG1/IG3・コリアスプリントG1/IG3・グランプリG1・大統領杯G1・KRAカップクラシックG2・Owners’ Cup G3)とその狭間の全競走を対象に着順別ポイントが付与され、コリアカップ・コリアスプリントを除くシリーズ4競走においては累積ポイント上位16頭(ソウル8頭+釜山慶南7頭+前年度優勝馬)が優先出走権を得ます(グランプリは人気投票結果も考慮されます)。そして最終的な累積ポイント数で年度代表馬と最優秀内国産馬が決定されます。

<韓国国際競走:コリアカップ・コリアスプリント>
フルゲート16頭で、海外招致馬は最大8頭です。

韓国調教馬の出走に対しては選定委員会が開催され、これまでの戦績や国際レーティング等に応じた総合的な判断のもとで決定されます。

なお、海外招致馬については早めに韓国入りしてクラス1一般戦を最大3回まで叩き参戦することが可能です。

<海外開放競走>
これまで同様、トゥクソム杯G2・SBSスポーツスプリントG3・YTN杯G3・KRAカップクラシックG2を外国調教馬への開放競走としています。

過去、2015年にはエスメラルディーナがトゥクソム杯で優勝したり、大井所属馬がSBSスポーツスプリントに挑戦したこともありましたが、近年は日韓外交問題や例の感染症の関係で日本からの挑戦馬はゼロでした。今年はKRAとしてその招致に積極的な姿勢を見せていますので、挑戦馬の復活に期待です。

なお、ここは当該部分をフル和訳しましたので詳細は下記ご覧ください。

あとは31~34ページにおいて大賞・特別競走の一覧表が競馬場別・施行時期別・レース格別に掲載されていますが、34ページ統合版の和訳Excelファイルを共有しますので、それをソートするなどしてご参照ください(ご自由にお使いください)。

VI. 競走編成(36~49p)

出馬手続き

「競走編成」という項目名になっていますが内容としては出馬手続きに関するものです。ポイントのみ箇条書きします。

  • 出馬登録

    • 一般戦は1週前

    • 大賞・特別競走は4週前(予備登録)、2週前(1次登録)、1週前(2次最終登録)の三段階

  • 登録料(大賞・特別競走のみ)

    • 賞金総額×0.2%(例:グランプリG1の場合10億ウォン×0.2%=200万ウォン)

    • 予備登録を行っていない場合は賞金総額×0.4%(倍額)

  • 出馬投票

    • ソウルは開催週木曜日の午前10時、釜山慶南は同水曜日の午前10時

VII. 賞金運営(50~54p)

賞金額一覧

下表の通りですが、一般競走に限り見習騎手を起用した場合は5%加算となります。

<出走奨励金>
馬主には9着まで、調教師・厩務員には10着まで支払われます。(騎手には別途騎乗料を支給)

<付加賞金>
登録料を1着から3着までの馬に対し、6・3・1の割合で配分します。ご参考まで、JRAは7・2・1の割合です。

その他、各種インセンティブについても記載されていますが、その詳細は割愛します。

VIII. 一般事項(55~69p)

調教審査・能力検査や装着馬具について記載されていますが、その詳細は割愛します。

ゼッケン色

ただし一つだけ、ゼッケン色についての規定をご紹介します。

グレード競走(2022年11月大統領杯G1)
一般競走(2022年11月)

IX. 施行時期(70p):2023年1月1日付

添付資料(71~103p)

これまでにご紹介してきた内容を補足する詳細資料につき大部分は省略しますが、国内グレードの格付けについてのみ触れることとします。

競走の格付け管理

韓国競走分類委員会(Korea Pattern Committee)が国際レーティングに基づくパターンレースレーティング(PRR:年間レースレーティングの過去3年平均)を基準として管理しています。

下表が昇格・維持基準ですが、PRRが2年連続で3ポイント超下回ったときは委員会の全員一致で、3年連続のときは委員会の過半数以上賛成で降格となります。


以上、昨年度との違いや日本との比較も交えながら、解説交じりでご紹介致しました。ご意見・ご質問等ありましたらお気軽にコメント欄にてお知らせください。ここまでお付き合い頂きありがとうございました。

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