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福島第一原発「20km圏内ツアー」に参加してきました。

2014年4月30日(水)、NPO法人野馬土が主催する福島第一原発「20km圏内ツアー」に参加してきました。

ツアーといってもツアー日程が組まれているわけではなく、希望日時を伝えて先方と調整して日時が決定、という感じ。というわけで参加者も私ひとり。

昨年は約2000名、今年はすでに700名ほど案内しているそうです。
その他ツアーや野馬土の詳細はこちら↓
http://www.projetnomado.com/index.html

(ツアー出発地の野馬土。写真右からカフェ、直売所&事務所、コメの全袋検査機器が設置された倉庫)

案内してくれるのは、野馬土代表の三浦広志さん。
「本当は専業農家だけど、今や何屋か分からない」(本人談)ぐらい色んなことをやっている百戦錬磨のおじさんです。震災前から国と交渉を行っていた経験をフル活用して東電や国と交渉を重ねたり、メガソーラーを作ろうとしたり、こうして連日ツアーをしたりと、精力的すぎます。

しかし、三浦さんご本人も元は南相馬市小高区に住んでいた被災者のひとり。ツアーで三浦さんの自宅にも立ち寄りますが(周辺の家々は津波でほぼ流されたものの、瓦礫の堆積で波が堰き止められ、三浦さんの家は奇跡的に残った)居住はできない区域でした(昼間は入れるが夜は泊まれない)。(今確認したら小高区だけでも帰宅困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域と分かれているよう)。

(ツアーは相馬市を起点に浪江あたりまで行き、戻ってくる。浪江と原発の位置関係はこんな感じ)

ツアーは約3時間。初めて目の当たりにする20km圏内の現実と、三浦さんからマシンガンのように繰り出されるエピソードの数々に頭がパンクし、途中からメモをとる気も写真を撮る気力も失せる(ダメじゃん)。

したがって、以下ではツアーで感じたことの要点を記したいと思います。

三浦さんのお話をほぼそのまま文字起こししてあるブログがありましたので(素晴らしい)、ツアーの詳細を知りたい方は是非下記ブログもチェックしてみてください!
『暖かさと希望を届けたい』よっしゃんさんのブログ
http://urano.cocolog-nifty.com/blog/cat22819414/

<NPO法人 野馬土のツアーはここが良い!>
◎コースが良い!
相馬市から浪江町へと南下していく=原発に近づいていくコースなので、復興の進行度合いの違いがよく分かる。震災から3年経過して、田植えが再開される地域がある一方、震災直後からほぼ何も変わっていないような地域がある。

◎三浦さんの話が良い!
いたって明るくタフな(もはや一筋縄ではいかない)スーパーおじさん三浦さんですが、農業従事者であり、被災者であり、地元民であり、ということでそれぞれの立場からの被災地が見えてくる。東電や国と交渉を重ね(そして要求を勝ち取っ)ている方なので、国や東電の対応もよく分かります。

(いまだ道路脇に津波で流されてきた船や瓦礫が残る)

<福島第一原発「20km圏内ツアー」で感じたこと>
◎起きてしまったことを、なかったことにはできない
人がこつ然といなくなって、壊れた建物も瓦礫もそのままの20km圏内。3年経ってこの状況。ここは今後一体どうなるのか?自分の日常と平行して、このような現実があるということがにわかには信じられない。原発事故がなかったら、今頃元通りに暮らしていただろう。事故さえなかったら本当に良かったのにと思うが、なかったことにはできないのだということを痛感。

◎現実は理不尽で複雑だ
被災者は一人ずつ状況が異なっていて、一枚岩になって交渉にあたることもできない。東電も国も被災者に対して理不尽と思える線引をする。なぜ農業を再開しないか、なぜ故郷に戻らないか、なぜ避難しないか、その理由は私が知らないものばかりだった。三浦さんの話とツアーを通して知る被災地の現実は、ニュースで見聞きする以上に複雑だ。

◎しかしやるしかない
しかし、国や東電が何かしてくれるのを待っていたら何も進まない。だから三浦さんたちは出来ることをやって、実例をひとつずつ作る。そうすると皆が後に続く。そうして復興が進む。現状を嘆くだけではダメで、まずは自分が行動する。それは誰にでもあてはまることだ、と他力本願の自分を反省し、後光がさす三浦さんを拝む…。

…ということで、結論としては今回ツアーに参加してとても良かった、ということ。

ネットで新聞でテレビで被災地の状況を見聞きしても、実際に車で走ってみると、打ち捨てられた町の広さや現実の途方もなさを実感できる。原発がある限り、ここと同じ場所が再びできるかもしれない、と思うと原発に対する考え方も変わってくる。

現地に行くのは自分だけでも行けるけど、ツアーだと現地の人の話を聞けるので、より良いと思います。

三浦さんも色んなところで講演をしているそうですが、やはり聞くだけではわからない、とてもじゃないが想像力が追いつかないから実際に来て見て欲しいということでツアーをやっているそう。

現在、四号機は燃料棒取り出しの真っ最中で、ヒューマンエラーも起きている。いつまた重大事故が起きてもおかしくない状況で、現地に行くのは怖いという人はもちろんいるだろうが、現地を見てみたいという人も一定程度いるはずで、こうしたツアーがもっと増えたらいいなと思った。
商売になってしまうから、ということで三浦さんはあえて料金を設定していないけど、大体の人はカンパをしてくれるそう。私としてはむしろ有料にしてしまっても良いのではないか、とも思いましたが。

「復興にはとにかくお金が要る」と三浦さんは言っていたが、現地を見て実際にそう感じた。ちまちましたお金では、勢い良く新しい何かを興すことは出来ない(一人が寄付するお金は小さくてもいいのだけど、被災地全体に行き渡るお金をケチったのではダメということ)。懐に余裕のある人は是非、現地に行って、スーパーおじさん三浦さん率いる野馬土に資金と被災地の将来を託してみてはいかがでしょうか。

(殺処分を命じられている牛を避難せずに飼い続けている人の牧場。牛はもう出荷できないし、避難しないから賠償金も貰えない。これもまた牧場主の抵抗の意思表示)



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