マーケティングは魔法の杖?!

まず最初に「マーケティング」って言葉の意味からおさらいするために、お約束の AMA (American Marketing Association:アメリカ・マーケティング協会) の定義を引用してみます。

Marketing is the activity, set of institutions, and processes for creating, communicating, delivering, and exchanging offerings that have value for customers, clients, partners, and society at large.
※AMA公式ページの ”Definition of Marketing" から引用

要約すると「マーケティングとは、顧客にとって価値あるものを創り・伝え・届け・交わすための一連の活動」といった感じかな。

一般の人が「マーケティング」と聞くと、テレビの CM や雑誌・ネットの広告などの商品の価値を伝える活動、つまりプロモーション(日本語だと販売促進、略して販促)を思い浮かべるんじゃないかと思います。だからマーケティングに対しては、あまり良いイメージはもたれてないような気がします。
なぜなら、企業が商品を売り込むための活動が「マーケティング」だと思われているから。それはある意味、正しいんだけど、もちろんそれだけじゃありません。

私の専門である顧客関係管理 (CRM) の役割は、顧客満足度と企業収益、それに従業員満足度の三つを向上させることです。顧客満足を永続的に高めていくには、企業は収益を上げなければいけないので、自社の商品を買ってもらうために、企業が消費者に商品を売り込むこと自体は間違ってはいません。
ただ、企業が収益を上げることだけを目指すと、マーケティングは単なる押し売りの手段になってしまうことは事実です。自社の商品がいかに価値あるものだと宣伝してみても、その価値は虚像にしか過ぎなくて、顧客が支払うお金の対価に見合うものでは、所詮ありません。

Twitter でも紹介したことがあるんですけど、マーケティングという活動の本質を理解する上でオススメなのが『エスキモーに氷を売る』(ジョン・スポールストラ著、きこ書房)という本です。
タイトルだけ見ると、消費者が価値を感じていない商品をいかに売りつけるかという、悪いイメージのマーケティングについて書かれた本だと勘違いされそうですが、実際は NBA (北米バスケットボール・プロリーグ) で観客動員数最下位だったチームのチケット収入を大きく伸ばしたマケーティングの手法(ジャンプ・スタート・マーケティング)について書かれてます。

「ジャンプ・スタート・マーケティング」というものには17の原則があって、私が重要だと感じた5つの項目を引用してみます。

① 自分が誰かを見誤るな
② 顧客の購入頻度を高めよ
⑧「誠意ある販売」に努めよ
⑩ 自社の商品に感心をもってくれる人だけをターゲットにせよ
⑯ 大口の顧客と小口の顧客を区別せよ
※項番は本に記載されているままなので間が抜けてます

CRM やマーケティングを深く理解されている方にとっては、どれも当たり前のことで、だからこそ実践するのが難しいことなんだけど、多くの企業はこの原則とは真逆で、以下のようなことをされているかもしれません。

自社の商品の特性を無視して、新規の顧客に対して、無理に売ろうとする。そして自社の商品に感心のない消費者にも売ろうとし、既存の優良顧客をぞんざいに扱う。

これを読んでギクリとされた方、いらっしゃいますよねぇ―(笑)

私がコンサルタントになる前に勤めていたベンチャー企業は、急成長した会社で、当時はマスコミにも取り上げられて、ウィキペディアで検索すれば名前が出てきます。
でも、その会社は今は存在しません。理由は「ジャンプ・スタート・マーケティング」の原則とは真逆のことをしてしまったからです。『エスキモーに氷を売る』の第1章にバーガーキングの話が出てくるのですが、自社の商品の特性やそれを気に入ってくれている顧客のことを忘れて、大手の持つ市場に踏み込むという「悪魔のささやき」に、私のいた会社も耳を傾けてしまいました。

この note を読んでいただいている方で、『エスキモーに氷を売る』をご存じなかった方がいらっしゃったら、ぜひ読んでみてください。そして、あなたの会社が「悪魔のささやき」に耳を傾けてるようであれば、私のいた会社と同じように消えてしまう前に、あなたのできることから行動を起こしてもらえればと思います。
私は経営学部の出身じゃないし、最初に勤めたのがベンチャー企業だったので、マーケティングというものを勉強したことも、誰かに教えてもらったこともなかったので、この note を読んだいただけている方でしたら、あなたの行動が会社を変えることだってできるかもしれません。

さて、そろそろまとめに入りますが、日本では商品を作れば売れた時代が終わってから、四半世紀以上が経ちました。モノ余りの市場で、自社の商品を売るためにマーケティングという活動が注目されて、ネットを検索すればマーケティングについて書かれた様々なページを読むことができますし、書店にいけば専門書もたくさん並んでいます。
それにもかかわらず、CRMコンサルタントとして様々な会社さんとお仕事をさせていただき、普段の生活の中でも一消費者として企業の活動を注意深く見ている私にとって、日本でマーケティングの本質が理解されているようには思えません。

未だにマーケティング=プロモーションと考えられ、テレビや新聞・雑誌からネットの世界に場は移りつつありますが、広告というものを見ない日はありません。しかし、広告だけで商品の価値を、無から生み出すことなんてできないんです。今風にSNSを活用して、インフルエンサーさんを使ってみても、それは同じことです。

ここで、企業にお勤めの方に質問です。

・あなたの会社にとって大切なお客さまは誰ですか?
・そのお客さまは何を望まれてますか?
・その望みに対して、あなたの会社はどんな価値を提供されますか?

これらの質問にすべて答えられるのでしたら、その価値を大切なお客さまに伝え、お客さまの元に届けて欲しい、と私は思ってます。そして、これらすべてに関わる一連の活動こそが、マーケティングと呼ばれるものに他なりません。

マーケティングという魔法の杖は、カボチャを馬車に変えるかもしれません。12時の鐘が鳴っても残ったのはガラスの靴だけでしたが、それはシンデレラの生活を変えました。ただ、ガラスの靴を履けたのはシンデレラだけです。
すべての顧客にとって価値あるものは、マーケティングの手法を使っても生み出せません。出来るとすると、12時の鐘が鳴ったらカボチャに戻るような価値を生み出すことだけです。

最後に、以前の note 『顧客視点は誰の視点?』で書きましたが、顧客は企業にとってだけ存在するものではありません。今回の note が、企業にお勤めされている以外の方にとっても、マーケティングというものに興味を持っていただける機会となることを願ってます。

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本多尚

顧客体験とCRM

誰もが顧客という存在だから、顧客体験(CX)やCRMのことを、より多くの人に知って欲しいと思って、書いてるマガジンです。
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