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「そんなの関係ない」と彼女は言った

話を聞いていて、なんて面倒くさくてつまらない人間なのかと思う。他の誰でもない、自分のことを。

わたしは友達が少ない方だが、いないわけではない。数少ない友達の中でも特に親しい彼女が、「最近、打ちっぱなしに行ってる」と言う。

打ちっぱなし…ゴルフか。

大人になると、いくら仲が良くても、ほんの少しの断片でしか友達の生活を知ることはできない。学生の頃は、一から八くらいまでならお互いに知り合っていた気がするのにね。

だから彼女が前からゴルフをやっていたか、どうだったか、はっきりと思い出せなかった。「いつからやってたっけ?ゴルフ」とたずねると「3日前」だと言う。

3日前から、彼女は早朝に一人で毎日打ちっぱなしに通っているらしい。ここでわたしはつい「最近じゃん!どうなの、ボール飛んでくの?うまくできるの?」と聞いてしまった。

わたしはゴルフクラブを触ったことがないし、なんだかセレブな、やや小難しいスポーツというイメージがあった。だからそんな言葉が口をついて出たのだろう。

それに対して、彼女は笑って言う。「うまくできるかなんて、関係ない。飛んでも飛ばなくても、誰にも迷惑かけないし、自分が楽しければいい」

ガツン、とやられた気がした。

いや、そんなのあたりまえだろうと。わたしはなんて、つまらないことを聞いたんだとイヤになった。

何かするっていう前に「うまくできるかな」「失敗しないかな」「人からどう思われるかな」そんなことばかりをグチグチと考えてしまう。自分でもそれが良くないとわかっているし、改めたいとも思ってるのだけど、なかなか。

…なかなか、なんて言いながら、わたしは年を取っていくのだろうか。何かを始める前に、あれが心配、これが不安、だからできないととってつけたような言い訳を繰り返して。…イヤだイヤだ。ああ、そんなのまっぴらごめんだ。

誰だったか。忘れたけれど、何かを始めるかどうかは嗅覚で決めると言っていた。頭で考えたことは、時にアテにならないからだって。嗅覚、つまり感覚、フィーリングを大事にするってことだろう。簡単なようで、これがけっこうむずかしい。(何がむずかしいの?という人がいるのも知ってるけれど)

けれど感覚を無視し続けた結果、「あれで良かったんだよ」という結論に達したことってないんじゃないかな。本当に欲しいと思ったものは結局買うし、やりたいと思ったことはやる。結果的に「やめときゃ良かった」と悔やむことは、ほぼない。

ならやってみたらいい。思いついたことはとりあえずやってみる。そんなあたりまえのことを思い出させてくれた、友達との時間は貴重だった。

インターネットで過ごす時間がすべてになってはいけない。リアルの中でしか得られないものって、たぶんたくさんあるのだと思う。

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