オルソネロ・コーヒー(orsonero coffee):くまのマークの小さな珈琲店
ミラノに限らず、イタリア半島内に無数に存在するバール。
そこにはイタリア製のエスプレッソマシーンがあり、高圧力で抽出されたエスプレッソは、人々の生活にとって切り離すことができないものである。
このようにすでにイタリア式のエスプレッソが普及していたために、空気の圧力でコーヒーを抽出するエアロプレスコーヒーや、プアオーバーコーヒーなどを提供する店を、あまりイタリアでは見ることがなかった。
その流れが変わったきっかけは、2015年のミラノ万博であった。
この万博によって、世界各国の食文化が紹介された結果、エスプレッソの聖地イタリアでもスペシャリティーコーヒーに特化した店が見られるようになったのである。
オルソネロ・コーヒーの経営者のカナダ人ブレント・ジョプソン(Brent Jopson)とその妻ジュリア・ガスペリーニ(Giulia Gasperini)は、バンクーバーからミラノに移住し、スペシャリティーコーヒーを提供するために、このショップを始めた。
(人の影で見えないが、窓にはくまのマークが描かれている)
伝統的なイタリアンバールの内装と異なって、木のテーブルに白い壁という究極までにシンプルなオルソネロ・コーヒーの内装。
またそのメニューも、エスップレッソベースのドリンク、フィルターコーヒー(ドリップコーヒー)、お茶、あとは少しのクッキーやマフィンなどとシンプルで、この店の主役はあくまでもコーヒーである。
「オルソネロ・コーヒーを見て、他の街で見つけたスペシャリティーコーヒーのお店と同じだ!と思ってほしい。」と言うジョプソン氏。
その雰囲気は、バンクーバー、メルボンヌ、ロンドンなどのコーヒーショップから着想を得ているという。
オルソネロ・コーヒーは、イタリアでもトップクラスのコーヒー豆の焙煎人ルーベンス・ガルデッリ(Rubens Gardelli)の豆をエスプレッソに使っているとのこと。
また、ドリップコーヒーには、カリタ(Kalita)とアエロプレス(AeroPress)の機器を使用。
オルソネロ・コーヒーのドリップコーヒーは3.5ユーロ。
イタリア式のエスプレッソは1.2ユーロ。
それでも街の伝統的なバールに比べてエスプレッソの値段が高いと、異議を唱える人がお客さんの中にはいたという(気軽な街のバールのエスプレッソの値段はだいたい0.8-1ユーロ)。
それに対して、ジョプソン氏は、「これはコーヒー豆の焙煎職人から仕入れた100パーセントのアラビカを使っているからそれだけの価値があるんだ。」と答えたという。
続けて、ジョプソン氏は次のように言う。
「それに対して、外国から来た人はいつも、あまりにこのエスプレッソの値段が安いという言う。おかしなことだね。」
つまりジョプソンがこだわるコーヒーを、イタリア以外の国で飲むとなると、もっとお金がかかるものを、ここはコーヒーの聖地イタリアということで、エスプレッソ1.2ユーロで提供しているのである。
エスプレッソコーヒーの国、イタリアでの勝負は、とても厳しいのである。
「それでもカウンター(bancone)でコーヒーを飲むというスタイルは、イタリアンコーヒーの僕が愛してやまないスタイルであり、それを変えるつもりはない。」というジョプソン氏の言葉通り、ここでは淹れ立てのコーヒーが、一人一人のお客さんに、カウンターから彼の手によって提供されている。
コーヒーのお供のビスコッティは、0.8ユーロから。
ミラノの有名バールに行っても、あまりにお客さんが多すぎて、ラテアートなどしないところ、そもそもラテアートなどないところが大半だが、こちらでは可愛らしいハートを書いてくれた。
それでいて泡はとてもきめ細かい。
ちなみに席に座っても席料はない。
著者が訪れた平日昼間も若者が次々と訪れていたオルソネロ・コーヒー。
香ばしい豆の香りが鼻をぬけるシンプルな店内はとても落ち着き、とっておきの時間を過ごすことができる。
参考:"Italian Espresso Reimagined At Milano's Orsonero Coffee", (SPRUDGE, 2017年6月14日付記事)
オルソネロ・コーヒー(Orsonero Coffee)
住所:Via Giuseppe Broggi 15, 20129, Milano
営業時間:8:00-17:00(火曜から金曜)、9:00-17:00(土曜)、9:00-13:00(日曜)
公式インスタグラム:@orsonerocoffee
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