見出し画像

小さき者への眼差し:すみだ北斎美術館 特別展「北斎アニマルズ」

2019年2月5日から4月7日まですみだ北斎美術館で開催されていた『北斎アニマルズ』(Hokusai’s Animals)。

『冨嶽三十六景』で有名な葛飾北斎が描いた動物や植物をピックアップした本展。

第1章は「生けるがごときアニマル」。


葛飾北斎「鵙 翠雀 虎耳草 蛇苺」(Katsushika Hokusai, “Shrike and Bluebird with Begonia and Wild Strawberry”(1834))



ポストカードの写真の通り、植物と動物など、流れるような動きが再現された絵が並びます。

鳥の他にも、猫、魚、虫など。

中には、虻の飛ぶ様子が、筆の濃淡で再現された作品も。


この時期のヨーロッパの絵画において、何かを暗示するモチーフや背景として無視が描かれることはあっても、虫が主役となる作品はなかなか珍しいはず。


第2章は、「かわいらしいアニマル」。

鮭の切り身をくわえて首をかしげる子犬。

 魚屋北渓「三十六禽続 子犬」 (Totoya Hokkei, “Puppy, from a the series Thirty-six Birds and Animals”, (c. 1818-44))。


他、今回の展示のメインビジュアルにもなっている、ちょっと間抜けな顔の動物たちの絵も。

葛飾北斎「『三体画譜』狛犬(一部)」(Katsushika Hokusai, “Horses, Rabbits, Monkeys, and Puppuies, from A Album of Painting in Three Style”)(1816))

ふさふさした毛、コロコロした体、くるくるした目が一枚の絵に表現されている。


 鳥獣戯画なんかの動物は、わりと妖怪チックだが、このセクションに並ぶ動物はとにかく愛くるしい。

実際にそばに猫や犬を飼っている人なら、分かる仕草などが描かれており、北斎やその門下の鑑識眼は見事である。

第3章は、「絵ならではのアニマル」。

おどろおどろしい妖怪や伝説の動物から、コンパスや図形にディフォルメされた動物までが展示されるセクション。

特に小紋や着物の絵柄にも採用された後者の動物から、北斎の描く図柄は、計算され尽くした完璧なフォルムを持っていることが分かる。

これらの特別展の他、常設展では、北斎が描いたいわば絵の教科書としての『北斎漫画』が楽しめる。

踊る人や滑稽な表情の人などなど、見てクスッと笑えるポーズ集が目白押し。

この『北斎漫画』は、他の浮世絵と同じように、19世紀後半、日本からヨーロッパに送られた積荷の"緩衝材"として雑に使われていたものを海の向こうの人々が発見し、後に、ヨーロッパのジャポニズムの興隆に大いに影響を与えたことは有名な話である。




『北斎アニマルズ』

すみだ北斎美術館

住所:〒130-0014 東京都墨田区亀沢2丁目7番2号
会期:2019年2月5日-4月7日(月曜休館)
開館時間:9:30-17:30
料金:1000円(一般)、700円(高校生・大学生・65歳以上)、300円(中学生・障害者)
※小学生以下無料。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?