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グッチ・ビューティー(GUCCI Beauty):「不完全な美」? アレッサンドロ・ミケーレ監修、グッチよりコスメライン発売開始

1. 世界が待ち望んだアレッサンドロ・ミケーレのリップスティック

2019年5月、グッチ(GUCCI)のクリエイティブ・ディレクター、アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)監修のリップスティックが発表された。

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グッチのコスメティックは、2014年、前クリエイティブ・ディレクターのフリーダ・ジャンニーニ(Frida Giannini)とメーキャップアーティストのパット・マクグラス(Pat McGrath)によって販売開始。

2015年、ミケーレがクリエイティブ・ディレクターに就任して以降、今回のリップを機に、ミケーレによるコスメティックが本格的に展開していくことになる。


昨年9月にGUCCI Beautyのインスタグラムアカウント(@guccibeauty)が公開されてから、ミケーレによるコスメの発売が噂されてきたが、数ヶ月を経て、ついに発表されたということになる。


2019年5月4日には、このリップスティックの発売を記念して、ニューヨークのダブルズ・クラブ(Doubles Club)にて、華やかなパーティーが行われた。

新しいGUCCIのグローバルメイクアップアーティストであるトーマス・デ・クレイヴァ(Thomas de Kluyver)やイギリスのミュージシャンのフローレンス・ウェルチ(Florence Leontine Mary Welch)、アメリカの俳優ジャレッド・レト(Jared Leto)、女優のハリ・ネフ(Hari Nef)らも参加したこのパーティーには、80年代の音楽が流れ、大盛況のうちに終わった。

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リップスティックは、マットな色付きな「ルージュ・ア・レーヴ・サテン」(Rouge à Lèvres Satin)36色、軽やかでシャイニーな仕上がりの「同ヴォワール」(Rouge à Lèvres Voile)18色(「サテン」と同じ色の中から18色)、そしてリップバーム「バーム・ア・レーヴ」(Baume à Lèvres)4色、と3タイプ全58色を展開。

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「ルージュ・ア・レーヴ・サテン」(Rouge à Lèvres Satin)36色。


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「ルージュ・ア・レーヴ・ヴォワール」(Rouge à Lèvres Voile)18色。


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「バーム・ア・レーヴ」(Baume à Lèvres)4色。



そしてこちらは、2020年に新発売されたメタリック9色(右側の星柄のリップケース)。

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同じく新発売されたグリッター2色。

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この2色は期間限定販売である。



アールデコ調のゴールドのケースがサテン、花柄のケースがヴォワール、水色のものがバームとなっており、スミレの香りがつけられているという。

カラーを一部紹介。

「401 スリー・ワイズ・ガールズ」(Three Wise girals)、「403 ラブ・ビフォー・ブレックファスト」(Love before breakfast)、「405 グランド・ホテル」(Grand Hotel)、

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「2 紅蘭」(No More Orchids)、「600. ザ・ファーレン・スパロー」(The Fallen Sparrow)、「602. 妻と女秘書」(Wife vs. Secretary)、

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「200. ブレイズ・オブ・ヌーン」(Blaze of Noon)、「201. 彩られし女性」(The Painted Vail)、「205. 春の火遊び」(Hold your man)、

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「107. ロイヤル・スキャンダル」(Royal Scandal)、「108. シマロン」(Cimarron)など。

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これらはハリウッド黄金期の1930年代前後の映画の名前がモチーフとなっており、他ハリウッド女優の名前もリップの名前に使われている。

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また、ミケーレにとってのラッキナンバーである25をつけた「25 ゴールディーレッド」(Goldie Red)は、鮮やかな赤であり、広告でダニ・ミラーがつけている色である。


価格は、38ユーロ(約4630円、2019年6月末現在)。

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 バッグなどGUCCIの商品が高価格であるのに対し、GUCCIのリップスティックは、38ユーロと買い求めやすい価格に設定したというわけである。


2. リップスティック誕生ストーリー:少年ミケーレの思い出

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リップスティック誕生の経緯についてミケーレは、次のように語っている:

「僕は両親と車の中にいた。

後部座席から、運転席に座るパパの長い髪の毛とママの横顔が見えた。

多分僕は8歳から10歳くらいの時だったと思う。

ママは、エレガントな女性だったから、カバンも持たずにヒールも履かずに家を出るなんて、いつもだったら考えられないことだった。

僕たちが信号で止まった時、ママは叫んだ。

「ルージュを忘れたわ!」

パパは何も言わずに右腕を伸ばして、サンバイザーミラーを下げた。

目にも留まらぬ素早い仕草で口紅をつけたママは、錬金術士のようであった。

なぜ僕がリップスティックのコレクションを作ったかって?

それはママを覚えていたから。

ママはこう言った。

「ルージュがなかったら、私は、鏡にすら映らない。

マニキュアがなかったら、私はゴミ出しにすら行けない。」 

ミケーレの中にはこのエレガントな母が生き続けており、今回のリップスティックが生まれる上で、少年時代の記憶が大いに彼のインスピレーションを掻き立てたのであった。


3. 「不完全な美」(Il bello delle imperfezioni)

「ほんのり薄紅色に色づく陶器のような肌、桃色のくちびるよ、さらば。」

このリップスティックのキャンペーンモデルを務めたのが、ミケーレに愛されるアイコン、パンクバンドSurfbortの歌手ダニ・ミラー(Dani Miller)である。

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彼女の歯は、2本かけているがフォトショップの魔法を使うことを拒んだ。

グッチ・ビューティーの美学は、「真の美」。

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(公式サイトより他のキャンペーンモデルたち)

ミケーレは続けて言った:

「美とは、不完全なものであるが、欠点を変えることもできる。

我々は皆、不完全なのであり、皆、美しい。

それぞれの肌の色を持っている。

今日、モードの世界は変わっているが、メイクアップの世界ははるかに遅れている。

皆同じようにするというよくない傾向がある。

ごまかしのないメイク。

偽造のないメイク。」

技術の発展やSNSの普及により、人々は皆、画面の中での理想の姿に近づこうともがいている。

白い肌、潤いある髪、大きな目、すっと通った鼻筋、ぽってりした唇、引き締まった身体。

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(Gucci Beauty の公式インスタグラムアカウントより)


「美は真なり」(Verità è bellezza)とミケーレにとってそんなものは大事ではない。

グッチのコスメを使う全ての人が、自分の特徴に合わせて、アイテムを選択し使い、その魅力を引き立たせる、これこそが彼の願いである。


4. イタリア・ミラノのグッチ店舗から

こちらは、ミラノのグッチ・モンテナポレオーネ店で購入したもの。


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サテンタイプの401「ザ・スリー・ワイズガールズ」(The three wise girls )。


店員さんによると、イタリアの中でも、2019年6月現在でこのリップスティックを扱っているのは、ミラノの幾つかの大型店舗のみ。



私が、「グッチ発祥の地フィレンツェでも、ミケーレがいるローマでもなく、今ミラノだけで売られているなんでびっくり」と言うと、

店員さんは、「いつもニューヨーク、ミラノ、そしてパリから。

その後少しずつ、色々な店で扱うようになるわよ。

アイメイク商品やフェイスパウダーもどんどん出るから楽しみにしていて」

とにこりと笑って答えた。

また、「髪が黒っぽくて(scuro)肌色が黄色味がかった私のような日本人女性に似合う色はどれですか?」と質問したところ、

「そうね、25の赤、カシスっぽい506、ほらこの302のオレンジも綺麗」(といって次々出してくれたから覚えきれていない)と店員さん。

カラーを見てみたところ、これは紫過ぎる、黒過ぎる、ピンク過ぎると思った色でも、その色がピッタリ合う人がどこかにいると思うとなんだか楽しい。

日本での発売は、来年、2020年からとのこと。

すでに日本のメディアでも取り上げられているため、知名度が高いこちらのリップスティック。

今年イタリア旅行の計画がある方にとっては、一足先に手に入れるチャンスである。

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(2020年8月追記)

2020年7月に店舗を訪れたところ、3月に発売されたマスカラに加えて、マニキュアやフェイスパウダーも発売されていた。

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今後どのような商品が発売されていくか楽しみなシリーズである。



・公式ホームページ:Gucci Beauty Network


参考:

"I nuovi rossetti Gucci riscrivono i codici della bellezza contemporanea e del makeup, e li amiamo per questo", in Elle (2019年5月8日付記事)

"Alessandro Michele: «Essere tutti uguali è mistificazione». La filosofia del nuovo make up", in: Corriere della Sera (2019年5月11日付記事)

 ・「「グッチ」がミケーレ初監修のリップスティックを発売 日本でも一部店舗で展開予定」『WWD JAPAN』(2019年5月8日付記事)

「「グッチ」のメーキャップラインがミケーレにより刷新、新作リップは日本でも発売へ」『FashionSnap.com』(2019年5月8日付記事)


ミラノの主なグッチの店舗

・モンテナポレオーネ店:

Via Monte Napoleone, 5, 20121, Milano/ 10:00-19:30(全日)

・ガレリア店:

Galleria Vittorio Emanuele II, 20121, Milano/ 10:00-19:30(全日)

・リナシェンテ店:

Piazza del Duomo, 20121, Milano/ 9:30-21:00(全日)

(文責・写真:増永菜生 @nao_masunaga



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