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パラッツォ・バルデスキ・アル・コルソ(Palazzo Baldeschi al Corso):豊富なコレクション、ペルージャの隠れた美術館

ペルージャの大聖堂を背に、ヴァヌッチ通り(Corso Vanucci)を進むと、ウンブリア国立絵画館や両替商組合の間など訪れるべき街の名所が目に入る。

さらにこの通りを進むと、パラツォ・バルデスキ・アル・コルソ(Palazzo Baldeschi al Corso)という美術館がある。

何となく入った美術館であったが、ルネサンス期から現代まで、コレクションの数がかなり多く、特に官能的な絵画の数々に圧倒されてしまった。

こちらのバルデスキ・アル・コルソは、同じくペルージャの大聖堂近くのカヴァロッティ広場(Piazza Cavallotti)にあるバルデスキ邸と区別するために付けられた名前だという。

四方をヴァヌッチ通り(Corso Vannucci)、ダンツェッタ通り(Via Danzetta)、バルド通り(Via Baldo)、バリオーニ通り(Via Baglioni)に囲まれ、かなり広い敷地面積である。

基をたどれば、この邸宅には、ペルージャを含めピサ、ボローニャ、フィレンツェ、パドヴァなどの大学で教鞭をとっていた有名な法学者バルド・デッリ・ウバルディ(Baldo degli Ubaldi (or Baldeschi) )が1361年に住んでいた。

 その後、バルドの子孫が住み続けたが、中の装飾は、19世紀に施されたものだという。

思想の間(Sala delle Muse)のフレスコ画は、トレンティーノ生まれのマリアーノ・ピエルヴィットーリ作(1856)。

こちらは、ウバルド・バルデスキが伯爵夫人テクラ・バッレアーニとの婚姻の際に描かれたものだという

 他、「知恵の間」(Wisdom Room)、

真実の間(Truth Room)、


ディアナとエンデュミオンの部屋(Diana and Endymion Room)というロマンチック名前の部屋もある。

(しかし、ギリシア神話でエンデュミオンと恋に落ち、彼の若さを保ったまま眠り続けるようにしたの同じ月の女神の方でもセレネではないのか)


順路を進んでいくと、19世紀に装飾が施され、「ピアノ・ノービレ」(Piano Nobile)という部屋に行き着く。

ここは、カッサ・ディ・リスパルミオ・ディ・ペルージャ財団(銀行)( Cassa di Risparmio di Perugia Foundation)のコレクションの間である。

ペルジーノ作の『聖母子と2人の天使』(This collection features works such as the “Madonna with Child and Two Angels)や


ピントゥリッキオ作(1456-1513)作の『聖母子画』(Madonna with Child)、



ジャン・ドメニコ・チェッリーニ(Gian Domenico Cerrini detto il Cavalier Perugino; 1609-81)の『ユディトとホロフェルネス』。

同じくチェッリーニの『ローマの慈愛』(La Carità romana)。

他にも写真には納めていないが、マッテオ・ダ・グアルド(Matteo da Gualdo; 1435 –1507)、ラッタンツィオ・ディ・ニッコロ(Lattanzio di Niccolò; 1480 – 1527)、ラルンノ( l’Alunno; 1430-1502)の作品が並ぶ。

またここでは、2019年4月13日から11月3日まで「忘れられないウンブリア」(UNFORGETTABLE UMBRIA)という企画展が開かれており、ウンブリア地方にゆかりのあるアリギエロ・ボエッティ(Alighiero Boetti; 1940-94)、アルベルト・ブッリ(Alberto Burri; 1915-1995)、アレクサンダー・カルダー(Alexander Calder; 1898-1976)、ジュゼッペ・カポグロッシ(Giuseppe Capogrossi; 1900-1972)、ピエトロ・ドラツィオ(Piero Dorazio; 1927-2005)、イヴ・クライン(Yves Klein; 1928-1962)、ソル・ルウィット(Sol LeWitt; 1928-2007)、ビバリー・ペッパー(Beverly Pepper;1922-)といった世界各国のアーティストたちの作品が並んでいる。


さらに順路を進むと、アレッサンドロ・マラボッティーニ(Collezione Alessandro Marabottini)のコレクションのスペースに行き着く。

絵画、彫刻、スケッチ、細密画、ガラス細工、陶器などその数は、700点にものぼり、16世紀から20世紀に制作されたものである。

このマラボッティーニ・コレクションは、パラッツォ・バルデスキに常設展示されている。

これだけの美術品を集めたアレッサンドロ・マラボッティーニ(Alessandro Marabottini ; 1926-2012) は、ペルージャ大学の美術史の教授であり、中世から20世紀までを対象にした数多くの著書を執筆した。

彼の美術品は、カッサ・リスパルミオ・ディ・ペルージャ財団に残されたため、こうして財団の所有する美術品とともに展示されているというわけである。


公式HPにも使われているジョヴァンニ・バッティスタ・パッジ(Giovanni Battista Paggi; 1554-1627)の『ヴィーナスとキューピッド』(Venere e Cupid)。


アメリカ、南アフリカ、極東など、ヨーロッパだけにとどまらないマラボッティーニ教授の関心のために、展示室はさながら「驚異の部屋」(Wunderkammer)となっている。

順路に従って下の階に降りていくと、小さな飾り棚が並んでおり、フィレンツェのマラボッティーニの邸宅の居住空間が再現されている。

そこには18世紀から20世紀の風景画、ポートレイト、彫刻、陶器、そしてマラボッティーニ教授の父であり画家でもあったピエロ・マラボッティーニ・マラボッティ(Piero Marabottini Marabotti ;1897-1973)も展示されている。

マラボッティーニ教授のコレクションは、これらの部屋に展示されているものに限らず、別に保存されているものあるという。

コレクションの全ては、学生たちが研究に使えるようになっている。

また、コレクションのカタログ(Collezione Alessandro Marabottini, De Luca Editori d’Arte, 2016)も出版されている。

個人的には、展示室の壁の色や女性のポートレイトに見るファッションの変遷(18世紀から20世紀)が興味深かった。


鮮やかな色合いの展示室。


現代アートの企画展も充実しているパラッツォ・バルデスキは、とても展示作品数が多く、きちんと理解するにはもう一度行きたいと思う美術館であった。

パラッツォ・バルデスキ(Palazzo Baldeschi)

住所:Corso Vannucci, 66,06121,  Perugia, Italy

入場料: 7ユーロ(割引4ユーロ)

開館時間:15:00-19:30(火曜から木曜)

                  11:00-13:30/ 14:30-19:30(金曜から日曜)

     月曜休館

公式サイト:fondazione cariperugia arte

公式インスタグラム:@cariperugia_arte

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