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見直し月間

加入している生命保険を、見直すことにした。
出産を機に、両親が長年契約している保険会社を紹介され、親が信頼を置いている相手であることにすっかり安心して、他社との比較検討もせずに契約した。保障内容も細かい部分まで理解できておらず、数年に一度、相手から新しいプランへの切り替えを提案されるたびに「なるほど、そうした方がよさそうだ」と素直に提案を受け入れながら、10年以上も継続してきた。

先日またプラン変更を提案され、月々の支払い金額もあまり変わらないし、一度は「いいですよ」と契約したのだが、その後なんとなーく、もやもやとした気持ちが残った。

その保険会社の担当者は、契約の更新やプランの見直しのたびに毎回自宅に来てくれるのだけど、とにかく滞在時間が長い。
もう70代の女性で、40代から営業をはじめられたそうだから、この道30年のベテランさんだ。母との付き合いも長いため、共通の話題としてまず母の近況についてしばらく話し、その後、本題の保険の話に入っても、「たとえばわたしもこれこれこんな事故(や病気)で数日入院したことがありましてね、そのときはこの保険に入っていたおかげで……」と実例を出しながら説明してくれるのだが、そうした話も一つ一つが長い。で、それらを聞いている最中は、わかりにくいところは何もないように感じるのだけれど、話があちこち飛ぶせいなのか、後から思い返すと核心がよくわかっていなかった、ということが多いのだ。

このもやもや感はどこから

もちろん一番の問題は、わたしの保険の知識が不足していて理解が悪い点にある。
でも深読みすれば、相手の営業テクニックもやはり巧妙なのだと思う。母と同じくらいの年齢の女性に「余談はいいから本題だけお願いします」なんてなかなか言えないし、そもそも本題と余談の境界線が見えない、ずーっと同じテンションで続いていく話し方なのだ。こちらはそれを真面目に聞いているうちに「たしかにそうした不測の事態で困らないように、この保障はつけておくべきかな」という気持ちになってくる。もちろん安心に安心は重なっていくわけだけど、そのぶん毎月の支払額は高くなるわけで、それが収入に見合っていないことに、10年かかってようやく気がついた。

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2,286字
暮らし・仕事・おしゃれ・健康を題材としたエッセイ(平均2000字)が28本入っています。

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