お前、もういいだろ?

「アイスと雨音」という映画を32回観た。

32回?嘘だろ?いいえ、本当です。

「何がそんなに面白いの?」
「何にそんな惹かれるの?」
よく言われる。

「正直自分でも分からない。」
が正解だ。

ただ、それだけではダメだ。
ふとした瞬間に思い立った。

30回も観ていれば、
キャストや監督やプロデューサーと
話す機会をいただくことが多くなり。

プロデューサーの
阿部広太郎さんから
「これは絶対書いた方がいい」
と言われた。

それもあり、筆を取った。

ということで、
なぜ僕はアイスと雨音を
そこまで観続けるのか

と言うのを書いていこうと思う。

【注意事項】
途中ネタバレあります、
予めご理解の上ご覧ください。

大前提として、「好きだから」。
当たり前だが、好きだから、観続ける。

じゃあなんで好きなのか、
ということになる。

[元から好きなものが重なっていた]

松居大悟
MOROHA
下北沢
田中偉登
青木柚
アイス
雨(雨音)
(敬称略)

以上が、キャストが公開された時点で
元から好きだったものである。
この時点でこんなに
好きなものが重なっていたのは、
今となっては奇跡だと思っている。
この段階で、「絶対好きだろうな」
と思っていた。

[東京国際映画祭でハマる]

「東京国際映画祭」に出るというのを知り、
柚くんと偉登くんが生で観れる!
と思い、行くことに。

上映日時が先に発表され、
どちらとも行けるように購入。
平日昼の方に柚くん・偉登くんが出ると知り、
初回の方に行くかどうか悩んだのだが、
休日夜だし、
一度ちゃんと確実に観れるようにしようと、
どちらも行くことに。

初上映日。夜。
この日は雨だった。

向かうまで、始まる直前まで
ワクワクやらドキドキ。

上映開始。

MOROHAのアフロさんの顔。
こちらを見て、話しかけている。

「なんだこれ」
一言目の正直。
だけど、何かに圧倒されたのか、
既に涙が流れていた。

それからは正直に言うと、
ハッキリともう覚えていない。

ただ、終わってからの
なんとも言えない空気、
そして「スゴいものを、目撃した」
という感情はハッキリと覚えている。

何がなんだか分からないけど、
素晴らしかった。
1回目の感想は、これだった。

終電の関係のため、下北沢の友人宅へ。
この想いを伝えたくて、急いで帰る。

下北沢から来て。
下北沢の映画を観て。
下北沢へ帰る。
とても不思議な感覚だった。

急いで伝えたいのにも関わらず、
気付いたら本多劇場の前にいた。
無意識に遠回りをしていたようだ。

雨の中、本多劇場の前で、
何を思っていたのかは、
もう覚えていない。

もうこの段階で、
アイスと雨音が好きになっていた。

この時に、僕の人生の歯車は、
動きかけていた。

[公開前に、もっと好きに]

その後、2回目、3回目と。
公開前に観れるものは全部行った。

この段階でもう観れば観るほど好きに。
ただ、この先公開日まで観れないというのがあり、
少ししょんぼりとしていた。

が、そんな公開前に、
映画すら観ていないのにも関わらず、
もっと好きになった。

理由は、プロデューサーの阿部広太郎さんだ。

公開が近づくにつれ、
様々な媒体で宣伝をする。
というのは当然のことだが、
アイスと雨音はその当然とは違った。

載せる媒体によって、
コピーを変えていたのだ。
チラシの裏に記載される文章も、
配る場所などによって変えていた。

そんな宣伝を、今まで見たことがなかった。

アイスと雨音にもっと興味を持ったし、
阿部広太郎という人間にも興味を持った。

その時期に
「宣伝会議 コピーライター養成講座 先輩コース」
の無料体験講座をやる、
というのを知り、
興味があったので、行くことにした。

[歯車が、動く]

そんな中、
「あなたのコピーが宣伝コピーに!」
という銘打ちで募集が始まった、
【激レアバイト アイスと雨音×タウンワーク コラボ企画】。
たった8人のみの募集に、もちろん応募をした。

1次審査の結果の日になり、
結果が来ない…。
少し粘ったが、それでも来ない。
あぁムリだ。絶対外れた。
いいや、外れても自分なりに書こう。
Twitterで書いて載せよう。
最初はそう思っていた。

そう思いながら、阿部さんの
先輩コース 無料体験講座を受けにいった。

受けて、まず思ったのは。
阿部さんの語り方、伝え方が上手い。
そして、何より熱い。

なんだろう。
年もそう変わらないのに、
何がこうも違うんだろう。

アイスと雨音を観た時や、
MOROHAのLIVEを観た時に、
似たような感情が、そこにはあった。

なんでこんな言葉だけで熱くなれるんだろう。
悔しさが溢れ出た。

どうすればいいんだろう。
と思った。

阿部さんは、講義内で言った。
「質よりも量」
「待っていても始まらない」

ガチャリ。

人生の歯車が、動いた。

終わった直後、とにかくコピーを書き続けた。

阿部さんは僕に、きっかけをくれたのだ。

そんな中、
Twitter上でコピーを集める、
「#アイスと雨音のコピー」
が始まった。
よし、タイトルはこれで決まりだ。

更に、
次に観る芝居のアフタートークに、
たまたま松居さんが来ることが決まった。
よし、渡す日はこの日だ。

これが、たった数日の間に起こった。
奇しくもその芝居の日は、
激レアバイトの当日だった。

体験講座から当日まではちょうど1週間。
とにかく書き続ける。

そして、最後に想いの丈を告げ、書き終えた。

表紙と最後の手紙を抜かして、
A4用紙20ページ。164個のコピー。

それを3部印刷して、
当日ガッチガチに緊張しながら
松居さんに声をかけて、渡して、
逃げるように帰った。

それを渡し終えてからは、
もう僕の頭の中から
アイスと雨音が抜けることがなかった。

そこから、返事をもらえたり、
まさかのポスターに選ばれたりするとは、
この時は思ってもいなかった。

[公開]

無料体験講座に感銘を受けた僕は、
先輩コースを受講することにした。

Twitter上では知っていて、
数回会話もしていて、
無料体験講座を受けていた、
にも関わらず。

阿部さんと初めて話したのは、
その先輩コースの初日、
映画公開1週間前だった。

「ようやくお会いできましたね」
この一言は、とても嬉しい一言だった。

その前後に、
アイスと雨音は写ルンですとの
コラボ展を発表。

観続ける理由としての
きっかけとなったのは、
今思うとこれなのだと思う。

たった2週間の瞬間を、
写ルンですで撮る。
「本人たち」が
しっかりと写るこの企画。
素晴らしいと思った。

気になりすぎて、
公開初日の公開前に行った。

前年11月末から間が空いて、
当日観る前に写真を観る。

観る前から
なんとも言えない感情になった。
ここにあるのは、当時の「彼女たち」。
今の「彼女たち」のことも考えたり、
映画内での「彼女たち」のことだったり。

ごちゃごちゃになっていく。

ワケが分からなくなった所で、
ユーロスペースへと向かった。

4ヶ月ぶり。
でも、ようやくスタートまで来た。
ここからだ。
っていう気持ちになって観賞。

あれ、こんな内容だったっけ?
記憶力が元々悪いので、忘れやすいのだが、
それとは違う感覚があった。

なんでだろう?
初日だから?

よく分からないまま、
それでも、初回舞台挨拶を終え、サイン会へ。

ここもまた、分岐点だったのかもしれない。

[まさか]

公開前からTwitterでたくさん書いていたり、
上記の書いたコピーを載せていたりもしたのか、
時にキャスト陣にも
リプライをもらえたりなどもあったので、
お礼ついでにと、
サイン会の時に自己紹介をしようと決めていた。

丈太郎くんは特にリプライなど、
反応をしてくれていたので、
特にお礼をちゃんと言いたくて。
リプのお礼と一緒に名前を言った。

その瞬間の、ざわつきは一生忘れることはないだろう。

なんと、キャスト皆さんに知っていただいていたのだ。

書いたものを観てくれていたんだという
嬉しい想いが強すぎて、
半分くらい泣いていた気がする。

アイドルを好きになる瞬間って、
こうなんだろうな。
僕はここで、キャスト全員が好きになった。

松居さんにコピーライター講座に通っていることを
言った時に言われた
「いつか僕の作品のコピー書いてください」
も、一生忘れないだろう。

そこからはもう、繰り返しだった。

キャストを知れば知るほど、
内容に面白みが深まる。

イベントで裏話を聞けば聞くほど、
これまた内容に面白みが深まる。

映画を観れば観るほど、
キャストを好きになる。

イベントで会えば会うほど、
キャストを好きになる。

そのキャストも、
イベントをやるごとに
成長をしていく。

体だけじゃなく、心の成長も
10週でとても感じられた。

松居さんに関しては、
仲の良い友人よりも会っていた気がする。

これもまた、
アイドルを好きな人の行動なんだろうな、と思う。

でも、好きがもう、止まらなかった。

さらに、Twitterのフォロワーさんに声をかけられたり、
先輩コースの人に知られていたり、
キャスト以外にも知られていて、
少し照れ臭いながらも、嬉しかった。

[好きでいても、飽きることはなかった]

だけど、いくら好きでも飽きるのではないか?
そう思う人は、いるだろう。

観るごとに見方を変えた。
キャストごとの目線で考えて観てみる。
人の感想を見てそれを参考にして観てみる。
小物を気にして観てみる。
イベントで裏話で出てきたところを気にして観てみる。
細かく観ている中で
更に気になったところをメインで観てみる。

更に、席でも、劇場でも観え方が違う。
まるで芝居を観ているかの感覚。
でも、内容は全く同じ。
だからこそ、飽きないのかもしれない。
同じだからこそ、注目して観れる。

にこだわっている、というのを知ったのは
数回観てから。

そこからは音にこだわって観ることが多くなった。

ユーロスペースでだって、1と2で音は違う。
2でも、公開中に音の出し方が変わったり。

トリウッドはスピーカーが目の前なので
音を物凄く感じられるが、音ズレが出てしまう。

イオンシネマ大宮のTHXという
475人入り、かつ最も音質の良いスクリーンで観た時は
今まで聞こえなかった音が聴こえてきた。
音は、今のところ1番素晴らしいと思っている。

宇都宮ヒカリ座は、こもった感じがしたが
MOROHAアフロの声がしっかりと沁みて聴こえてきた。

小山シネマロブレでは
今までと全く違う聴こえ方で感じ方も違った。

むしろ、問おう。
飽きるか?

それほどのたくさん見るところがある魅力が、
この74分の中に詰まっている。

[内容のリンク]

その魅力とは別に、
内容としてももちろん魅力がある。

それは、「内容がリンクしている」ことである。

ジャンルで言うのであれば、
映画でもあるし
芝居でのあるし
音楽(LIVE)でもある。

アイスと雨音という世界の中に、
様々な世界がある。

アイスの雨音では
「MORNING」という戯曲を参考にして、
劇中劇を行っている。

その「MORNING」が、
パンフレットにも書いてあるように、
嘘みたいにリンクしているのである。

なので、
「MORNING」を買ってみた。
翻訳をされていない戯曲だが、買ってみた。

何回か観ている人には、
感覚で読めるものだと思うので、オススメする。

感覚だけでしかまだ読めていないのだが、
とても面白い。

松居さんの言う
嘘みたいにリンク、
というのがわかってくるのだ。

次に投稿する画像(こちら)は、リンクとはまた少し違うが、
どのように進んでいるのか
自分なりにまとめたものである。

※僕自身の考察なので、
 間違いがある可能性があるので注意
※メモな感じなので「?」な部分有
※申し訳ないが、途中である
※ネタバレ注意

いくつか本編で僕なりの考察・思ったこと、
すげーって思ったことを
書かせていただこうと思う。


MORNINGは全部で12シーンある。
「遠郷タワー」に
[カウント10じゃ終われない人生
 その先にイレブンやトゥエルブが待ってる]
という歌詞がある。
これには、
[トゥエルブもあるから、
 さらにその先にはまた人生がある]
という風にも捉えられる。

「MORNING」という12シーンの物語はもう終わるけど、
これからまだまだ続いていく
というのを、
「アイスと雨音」という作品、「遠郷タワー」という曲を含め、
それを伝えたいのではないか。


「革命」の際に想のアップがあるが、
よく観ると、瞳の中にアフロがいる。

アフロのお前これからの世界変えてやるからな
っていう想いが伝わってくる。
(ちょうど「半径0mの世界を変える革命起こす幕開けの夜」の部分)


アイスと雨音の世界の中には、
確実に「現実」と「虚構」が存在する。
そこの境目は、「鎖」の部分である。

「現実」のまま進めるのであれば、
鎖が引き裂かれずにどうしようもないが、
諦めて帰る。

ただ、それでは終えられない。
松居大悟の願望によって、
「虚構」がここから始まっていく。

本多劇場に突入してからのアイスと雨音は、
普通に考えたらありえないことが多い。

舞台セットが並んでいる。
衣装が用意されている。
客が入っている。
直前に追い出した人が知らん顔で話しかけてくる。

あの「鎖」は、人の身体と、魂の繋がりなのだ。

それが引き裂かれたことによって、
アイスと雨音の住人全員の魂が、身体と分別した。

それによって6人は劇場内に入って、
また芝居の稽古をしながら本番へ近づいていく。

上司に抑え込まれた門井、
何も言えないと言っていた実森、
言われるがままだった松居、
この3名が止めようとするスタッフを
止めるという行動に出たのは、
身体と魂が分離され、
自分のやりたいことが出来るようになったからである。

さらに、その鎖を引き裂いたのが紅甘である、
というのも注目するところだ。
実際の「MORNING」を中止にさせられた1人が引き裂くことによって、
その魂は、より多くの人間に影響を与えたのではないだろうか。


最後の「1分前」のところからは、
すべてがそこにある。

最後の語りは、当初全てが松居大悟の言葉と思っていた。
だが、原作を読んでビックリした。
脚色はしているが、原作にあるシーンだったのだ。

そこでMORNINGの想は作文(最後の語り)を読み、
役者としての想はごちゃごちゃになりながらも演じていて、
素としての想はカメラが背を向けた瞬間にありったけの涙を流して、
その時にカメラマンという人間がそこにいて、
そこにアフロの言葉や、MORNINGの言葉や松居大悟の言葉があって、
それを観ている我々も巻き込んでいて、
すべてが1つになっている。

本当にもう、MORNINGは
松居大悟が別名義で書いた、
海外作品なんじゃないかと思うくらいだ。

このMORNINGがあったからこそ、
このMORNINGが中止になったからこそ、
アイスと雨音は生まれた。

だから僕は、
「MORNINGの中で、
 アイスと雨音は、僕らは生きている。」
そう思っている。

[嫉妬]

その好き・魅力以外にも、
観続ける理由は他にもある。

それは、嫉妬だ。

考察など考えれば考えるほど、
スゴい細かく考えてるな。

映画が始まってからの引き込み方、
演出力、カメラワークすげぇな。
とか、
どうしてこんなに見せ方が上手いんだろう
っていう、
毎回悔しさがある。

僕も、自分の団体で芝居をやっている。
とは言いつつも、
たった2回しか公演を打ったことがない
ただの趣味、自己満団体だけど。

その2回とも、どちらも歌詞を元に、
音楽を元に芝居をやっていたのである。
(友人のアーティストや、某アーティスト(無許可))

元より
「音楽や芝居を混ぜたものを感情的に表現する」
「芝居という概念をぶっ壊したい」
ということをやりたかった僕は、
2回やって失敗した。

上手く出来ないかなぁ…。
そろそろもう1回芝居打ちたいなぁ…
そう思っていた時に観たのが、アイスと雨音だった。

悔しかった。
これがやりたかったんだ。
どうしてこういう考えが頭になかったんだ
って、答えが見つかった気がした。
それほどまでに、自分が欲していた内容が、
そこにあったんだ。

[人]

アイスと雨音には
何人も出演しているのにも関わらず、
観ているとたまに1人の人間と
対話しているように思う時がある。

映画館の中であったり、
アイスと雨音の中であったり。

そう、アイスと雨音の中に
入っている時があるのだ。

良く知っている場所であったり、
何度も観ているから
カメラに映っていない後ろ側まで
わかるようになったり、
音が様々な角度から流れてくるからだと思う。

そうなった時に思ったことが、
「アイスと雨音は1人の人間だ。」
というものだ。

それは松居さんとはまた違う、
塩谷さんでもなく、
代弁者でもなく、
傍観者でもない、何者かだ。

その考えに辿り着いた時に僕は
「本当は人と話したいんだ」
という、気持ちになった。

今までずっとこちらに語ってきた「人」と、
会話をしたい。

だから、今こうして書いているんだ。

これが、冒頭の
「ふとした瞬間」である。

[答]

こうして、長々とここまで書いてきて、
僕は、アイスと雨音に言われた。

『お前、もういいだろ?』

…どういうことだ?
と思ったけど、納得がいった。

答えを見つけちゃいけない。
どこか一線引いて観ないと、
嫌いになってしまいそうになってくるのだ。

たぶん、
人を知りすぎると嫌いになるのと一緒なんだと思う。

それを、32回目の時に言われた。

言われて、悲しくなって、
遠郷タワーの時、泣いた。

でも、まだ観たいんだ。
ここはもっとこういうシーンなんだろうな、とか、

大阪で、怜子の遠い故郷で、
アイスと雨音を観て、
遠郷タワーを聴いて、
どう感じるんだろうとか。

もっと、もっと、もっと、と。
でも、その中で嫌いになってしまいそうになる
自分がそこにいて。

たぶん、気付いていたんだと思う。
気づかないふりをしていただけなんだと思う。

これだけ観ても、こう考えてしまう。
それほど、僕はアイスと雨音を考えてしまう。

その答えを、見つけたいんだけども、
見つけたくない。

だから、きっと僕はアイスと雨音を、
観続けてきたのかもしれない。
そして、これからも、観続けるんだろう。

#アイスと雨音 #松居大悟 #MOROHA #MORNING #阿部広太郎 #森田想