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雑学と課題を与えてくれた「とある本」

あえて書籍名はあげないが、雑学を集めた「とある本」が面白い。
200ちょっとの雑学が集められていて、物知りな私でも知らないお題が大量に載っている。しかし、面白いのはその雑学の内容ではない。

では、この本の何が面白いのか。それは、「雑学をうまく説明できていないところ」だ。(すべてのお題がそういうわけではないが)


この本の構成は、「あれがこれなのはなぜ?」という見出しに対し「それがこうだからである」と答えていく形式。
随分丁寧に「かくかくしかじか」と説明が書かれているように見えるが、肝心の「なぜ?」とは関係のない文章がほとんどだ。最高。


例えば
「相撲の土俵づくりになぜビール瓶が欠かせないのか?」
という題がある。これは初耳だ。相撲に関する知識が薄いので、是非とも聞かせていただきたい。興味の無い話題などない。

「かくかくしかじか」と説明が続く。以下文章を要約。


大きくて重い力士が暴れる土俵はとても頑丈である。やわであってはならない。それだけにさまざまなものを使って土俵を作っていると思えるが、実際に土俵に使われているのは土だけである。

ここまでは、「へー。やっぱ土なんだ」といった感じである。さまざまなもの(原文ママ)とあるが、それはツールなのか原料なのか?さておき、いよいよ具体的な知識が出てくる。

粘土質の強い土が土俵に向いていて、東京だと荒川沿岸にあった荒木田という壁土が最良とされていた。最近では東京の開発が進んだため、国技館の土俵には千葉県我孫子市周辺の土が利用されている。土台に使われる土は10トントラック4台分。表面だけでも1台分の土が使われている。

デートで我孫子市に行った際、「ここらへんの土が土俵に使われてるんだぜ」と彼女に披露してもいいかな。と思った。土俵というワードに彼女がどんな反応をするのだろうか。デートに行く前、身につけるべき物といえば、香水より雑学だ。

土俵づくりで重要なのは、その固さである。四股を踏んでも足跡がつかない固さと決められていて、柔らかすぎると足の指が土の中にめり込んで怪我をする。固すぎても怪我のもとになる。そこで活躍するのがビール瓶だ。

ビール瓶というワードが来た。

「タコ」や「タタキ」と呼ばれる道具で固めた土俵を、仕上げとしてビールの空き瓶で表面を叩いたり、転がしたりする。俵をつくるときも、ビール瓶で俵を叩いて形を整えたり、網目がしっかり食い込むようにする。なのでビール瓶は土俵づくりになくてはならない存在なのだ。(終)

ここまで読み終わり、ふとつぶやいた「なぜビール瓶なんだ?」
一度、今回の題を振り返ろう。冒頭に「相撲の土俵づくりになぜビール瓶が欠かせないのか?」と書いてある。

しかし、内容を振り返るとビール瓶に関しての説明がほとんど無い。私達が本当に知りたいのは、「ビール瓶でなければだめなのか?」「どこからやってきたビール瓶なのか?」「メーカーにこだわりはあるのか?」「力士はビールとか飲むのか?」「ちゃんこ鍋にビールが合うのか?」「再利用?エコ?SDGs?」そうだろう?



...と以上のような雑学が200ちょっと掲載されている。どれも途中で話がそれて、うまく説明できていないように思える。
この題に関しては、具体的な地名や、「タコ、タタキ」なんかの道具が出てきた。これは立派な雑学だ。しかしなぜビール瓶なのか....ビール瓶が無かった時代はいったいどうしていたのか....ビール瓶というのは具体的にいつの時代に生まれたものなのだろうか....


この「とある本」をすべて読み終えたころ、私は大量の課題を抱えていた。しかしインターネットで検索はしない。いつかきっと、どこかで解決されるかもしれない。雑学とはそのくらい雑に扱うべきだ。


ただ、これだけは覚えておいてほしい。


デートに行く前、身につけるべき物といえば、香水より雑学だ。

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