大阪教育大学学校教育教員養成課程小中教育専攻・中等教育専攻社会科教育コース 2023年度前期問題E


設問1 文字数の条件:600字以上800字以内

※構成を構成を考えよう


一 歴史教育が近代において果たしてきた役割と日本の高校の歴史教育の特徴について、筆者の考えをまとめる
 1 歴史教育が近代に果たしてきた役割  主権国民国家の建設のための「国民」を作り上げる
 2 日本の高校の歴史教育の特徴 日本史と世界史の二本立て
二 これからの歴史教育に期待されること
 問題意識ーこれまでの歴史教育では対応できないこと
 歴史的思考力の実践 資料を読み取って考える
 たとえば、ウクライナ戦争が生じた歴史的背景を考える

解答例


設問1
一 1、主権国民国家を実体化するために、歴史教育は、国境で囲まれた空間に住む人々を「国民」として統合させる役割を担った。その空間に存在する人々は、歴史を共有することによってはじめて「国民」であることを意識するようになる。近代の歴史教育は、自国への愛着を強く持たせ、国民国家としてまとまるための国民の育成に目的があった。そのため、主権国民国家の誕生と近代歴史教育の成立・歴史教育の開始は表裏一体の関係にあった。
 2、戦後の日本の高校の歴史教育の特徴は、日本史と世界史の2本立て歴史教育が行われてきたことである。日本史と世界史を比較して学ぶことによって、日本と日本の歴史の独自性を意識させることに目的がある。それゆえ、世界史の内容はすべての地域を詳しく学ぶのではなく、日本と世界全体の歴史の流れに大きな影響を与えたと解釈され、日本の高校生が知っておくべきだと判断された事項を選択し優先的に学ぶことになる。
二 主権国民国家が誕生した近代と異なり、国民国家が成熟した現在では、歴史教育に「国民」を育てる意義は薄れている。
 一方、グローバル化が進んだ現在では、日本から距離が遠い地域でおこった出来事であっても、直接的にせよ間接的にせよ日本への影響が強くなっている。したがって、地理的に遠く縁が少ない地域であってもその歴史的背景を知る必要性がこれまで以上に期待されている。
 
 もっとも、すべての地域や国の歴史を一から網羅するのは現実的ではない。むしろ、諸地域の歴史的背景、立場を理解できるような教育、資料から歴的背景を読み解くような教育が求められる。 
 今現実に起こっている事象から歴史的背景を探る方法論を学ぶことは、現代の事象が歴史的事実と深く関連していることを知り、歴史への興味をおこさせると考える。(740文字)



設問2 文字数条件:600字以上800字以内

 

※出題意図を考えよう


資料の読み取り方を考えてほしい

※構成を考えよう


図2の意味 4区分を各区分に該当する都道府県の数がほぼ同数になるように分けている。
     区分基準は都道府県の数
図3の意味 数値の最大値から最小値までの間を4等分した。
     区分基準は数値
図2と図3の違い
図2では、人口1000人当たりの高等教育機関学生数について上位4分の1の都道府県が旧帝国大学が存在した都府県に偏っていることがわかる。下位4分の1は大都市圏から離れた地域に分布していることがわかる。
図3では、人口1000人当たりの高等教育機関学生数が51名を超える上位4分の1の都道府県が東京都と京都府しかなく、37.2名より低い地域すなわち下位4分の2がそれ以外であることがわかる。さらに下位4分の1である23.5名よりも低い地域が大半であり、二極集中していることがわかる。

図1と比較して図2や図3が持つ特徴や問題点


解答例


一 図2と図3の違いについて
1 都道府県の数を4区分の基準とした図2では、都道府県別の学生の分布がわかる。高等教育機関に在籍する学生が、どの地域に多く分布しているか、その都道府県別の地域差が明確に表現されている。
2 これに対し、学生数を4区分の基準とした図3では、学生数の偏在が明確に表現されている。
二 図1と比較して図2や図3が持つ特徴や問題点 
1 都道府県の数で4等分する図2の場合、上位4分の1は、東京都、京都府、大阪府、愛知県(名古屋大学)、福岡県(九州大学)、宮城県(東北大学)といった旧帝国大学が設置されたいた都府県や大規模な総合大学がある地域であり、高等教育機関に在籍する学生がそういった地域に分散している。また、下位4分の1は大都市圏から離れた地域に分布しており、交通の便が高等教育機関に在籍する学生数に影響を与えているようにみえる。
2 ところが学生数で4等分した図3をみてみると、上位4分の1の都道府県数は東京都と京都府の2つしかなく、次の第二区分での都道府県数は0である大半は下位2区分に属しており、もっとも多いのは下位4分の1である。このことから、高等教育機関に在籍している学生の数は東京都や京都府の二極に集中しており分散しているわけではないことがわかる。
3 学生数の偏在という問題意識で図2だけを見ると、むしろ学生は全国に分布しているようにみえるため、誤解を生みやすい。高等教育機関に在籍する学生の分布をより明確に理解したいときは図3の資料が優れている。これに対し、都道府県別の地域比較、特に広域地域における学生の分布において大都市圏とそれ以外の地域の差について問題意識を持つ場合には図2が優れている。
4 このように、一つの事実に対してであっても、数字の切り取り方と表現の仕方によって読み取れる内容が異なるため、いかなる問題意識で図表が表現されているかを注意して、読み取る必要がある。(780文字)

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