大学院看護師の日常② 【大学院の受験】

今回は大学院の入試について書こうと思ったのですが、別に「東京大学公衆衛生大学院の入試について」を連載しているし、入試については「過去問をゲットして、傾向を把握して、反復練習」くらいしか言えることがないので、やめました。

というわけで、今回は大学院合格から入学までの期間で行なった方が良い準備について書いていきます。


①退職の仕方

合格が決まれば、社会人大学院でもない限りは職場を退職、ないしは休職することになります。
引っ越しやバイト探し、諸々の手続きを考慮すると、2月には退職して大学院の準備を進めた方がよいと思うのですが、働く病院によっては中途退職が嫌がられることがあるかもしれません。
私自身は南米での研修に参加するために1月末に退職することにしたのですが、その際にも「2年目の看護師が、中途半端なこの時期で辞めたことは前例がない」と管理部から難色を示されました。

ここで大切なことは、「管理部にはスタッフの退職を拒否する法的権利はない」ということです。
それを踏まえたうえで、「夢のために」と退職を押し切るか、「迷惑はかけたくないから」とギリギリまで働くかは意見が分かれるところだと思います。
私自身は迷うことなく前者を取りました。

周りに気を配って自分の意思が中途半端になるよりも、多少強引でも意思を貫いて、そうして研究者として充分に成長した時に、病院に恩返しをしようと思っています。
ご年配の管理部の方だと、大学院に行くことの意義を充分に感じ取っては貰えないかもしれません。
そこは、大学院進学をする看護師が闘って、理解を推し進めなくてはならない部分なのだと思います。
大学院を卒業して、臨床に戻ったはいいけど、ちっとも院卒のスキルが活かされないなんていう話も良く聞きますし、私としてはそうならないように、大学院進学が決まった時点で管理部の方たちには院卒看護師の強み、使い勝手をしっかりとプレゼンし、自分の居場所を作っておくという工夫が必要だと思っています。

臨床から大学院に人の強みとして、自前の研究フィールドを調達できる可能性があるということがあげられます。退職したとしても、元職場を研究のフィールドとして使わせてもらう可能性はあるかと思いますので、元職場の方とは良好な関係を保っていた方が良いです。
喧嘩別れにならないためにも、大学院に行くことで自分が職場に還元できる旨味をしっかりと発信し、理解して頂いた方が良いのではないでしょうか。


②金策

大学院に行くとなると、殆どの方が定職を離れ、無職になるのではないでしょうか。
金策は必須です。
学費免除や入学金免除を申請する場合には、入学の1~2か月前から書類などを揃え始める必要があります。”退職証明書”や”無職証明書”など、職場に書いてもらう必要のある書類もありますので、どんな書類が必要かは早めに大学院に確認しておくと良いでしょう。

国立系の大学院だと、学費免除、入学金免除に該当する条件がかなり細かく公開されているはずです。
ちょっと計算は面倒なのですが、免除になる見込みがあるかどうかはしっかりと計算した方が良いです。
ちなみに、”社会人→大学院”という進路をとる方には免除がほぼ必ず降りるであろう”独立生計扱い”というテクニックがあります。ネットに沢山情報が上がっていますので、そちらを参照してください。
なお、”独立生計扱い”を希望される方は、大学院に連絡して事細かに必要書類、条件を確認した方がよいです。これ、かなり手続きがめんどくさく、私が先日東大の教務課に連絡した際にも、「独立生計は手続きがめんどうで、こちらも良く分からないところがあって…」とたどたどしいながらに質問に答えてくださいました。
一方で、”独立生計扱い”になることのデメリットとして、国保料を自費で払わねばならないという点が挙げられます。
大きく分けて選択肢は二つで、

⑴親または配偶者の扶養になり、その保険に入る。すると、保険料は浮くが、”独立生計扱い”でなくなるので、親、配偶者の収入が申請時の収入に加味され、免除が降りる可能性が低くなる。

⑵扶養に入らず、国保に入る。すると、保険料は高くなりますが、”独立生計扱い”となり、国立大学であればほぼ免除が降りる。

どちらの場合が安くなるのか、自分の住んでいる地域の国保料と大学院の学費、入学金を加味して考えてみると良いかと思います。

次にやるべきは、奨学金の獲得準備です。
期間としては10月~1月に募集をするものがありますが、多くの奨学金が大学院入学後の4月から募集を始めます。
こちらもネットに沢山情報があがっています。
私は学部時代、学費、家賃、生活費と自分でやり繰りしていたために、奨学金が頼みの綱でした。
主に給付型を利用していましたが、学部時代を通して3~4箇所から奨学金を頂き、飯を食っていた次第です。
ちなみに、「借金」と揶揄されることもある貸与型奨学金の日本学生支援機構ですが、私としては非常にお勧めです。
大学院の場合は月額8万8千円と、学部に比べて増額されます。
さらに特筆すべきは、大学院に限っては成績優秀者に返済免除の特典があるということ。
「成績優秀者なんて無理だよ」と思われる方もいるかもしれませんが、ここで諦めるのは早計です。
実は、日本学生支援機構の”成績優秀者”の定義とは、”全国のトップ何人”というものではなく、”各大学の上位3割”というものだからです。しっかり勉強して、真面目に修論に取り組めば、大学の上位3割の成績を取るのってそんなに難しいものじゃないと思います。

最後にやるべきは、アルバイト先の確保です。
私も現在バイト探し中ですが、これほど看護師免許の存在をありがたく思ったことはありません。
学部時代は時給1000円程度の給料でこつこつ頑張っていたのに、看護師バイトなら夜勤1回で4万円前後。看護師バイトの場合は前もって登録会に参加することが必要なので、東京に行く機会があれば参加してしまうと良いかと思います。そうすれば、スマホのメールに定期的に単発から定期のバイト情報が流れ続けることになります。


③英語

大学院の課題や修論において、英語で執筆すること、英語論文を読むことが求められると思います。
英語の執筆に関しては大学院によって差はあるかもしれませんが、まず間違いなく英語論文は日常的に読むことになるかと思います(逆に、英語論文を読むことを求められない大学院は、教育のレベル的に問題があると思うので、進学先の候補からは外れるかもしれません)。
いざ大学院に入って、英文が読めないので英文法、単語の暗記からやり直すというのは大変な時間の無駄だと思うので、英語が苦手な方は入学する前からトレーニングを積んでいた方が良いと思います。


④リサーチクエスチョンの模索

私は、臨床経験のある研究者の強みは、自分の経験に根ざしたレベルでリサーチクエスチョンを提案できるということだと思っています。それができなければ、臨床に出た意味がないという気持ちもあります。勿論、修論のリサーチクエスチョンは指導教官と相談して決めていくことになると思いますが、私としては「自分からリサーチクエスチョンも提案できないのに、大学院に行く意味があるのか?」と思うこともあります。
まだまだ模索中で、焦ることもあるのですが、指導教官と面談する時点では幾つか手土産にできるリサーチクエスチョンを見出したいです。
そのためにも、残りわずかしかいられない臨床に眼を向けて、「取り組むべき課題はどこにあるのか」と批判的に捉えるのが良いだろうし、病院内外の様々な人々の話を聞いて、この地域の強みや弱み、病院スタッフや患者さんが困っているとこは何処だろうかと探求していきたいと思います。

以上が私が考える大学院の入学準備です。


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Naoki Hirose

「未開拓な医療資源である看護の潜在可能性を引き出し、公衆衛生の課題を解決する」ことがミッション。東大→看護師→東大大学院。*執筆はブログ「これからはじまる看護という時代について」中心(https://homo-curans.com/)

大学院看護師の日常

臨床の看護師さんの「大学院ってどんなとこなの?」という疑問にお答えするために。大学院の選び方から、受験時のアポの取り方、お金や生活スタイル、卒後の進路まで幅広く。
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