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有名人にはむしろ「マンガは読まない」と言って欲しい。

 かつてマンガやアニメは子どものためのものでした。私が子どもの頃に(多分)最初のアニメブームが来て、中学生、高校生・・・それ以上の大人も夢中になれるコンテンツとして認められるようになったと感じます。
 けれど、そういう人たちはまだ「オタク」と呼ばれてコソコソしなければならない時代でもありました。
 それが最近はアイドルから政治家まで、こぞって「マンガやアニメが好き」と言いたがります。それが本当かウソか(多分本当だろうと思いますが)はさておき、「マンガやアニメが好き」と公言するメリットがどこにあるのかと考えると、自分は庶民的でオタク的要素も併せ持ち、なおかつ、マンガやアニメをバカにしたりしない寛容さやイマドキの感性を持っている人間だというイメージを広めたいのだろうなと思うわけです。それと同時に「リア充」とか「勝ち組」と思われがちな人々が、妬まれないような防衛策として、また、オタク層の人気を得るための戦略として利用していることが透けて見える気がします。
 
 そんな風に利用されるなんて、マンガやアニメの地位はずいぶん上がったんだなぁと感慨深いものがありますが、マンガ家の端くれとして正直に言うと、こんな時代に違和感も感じています。

 かつて宮崎駿が、子どもたちにもっと外に出て遊ぼう!と言いたくて「となりのトトロ」をつくったら、子どもたちが逆に家にこもってトトロばっかり観てしまったという皮肉な話を聞いたことがあります。

 私は、マンガやアニメは「娯楽」として存在し続けて欲しいと思っています。クールジャパンだ、日本の誇れる文化だ、などと政府が主導して売り出そうとするなんてむしろやめて欲しい(笑)。
 マンガやアニメの地位を上げる必要性を私はほとんど感じません。むしろ、日常生活に疲れたオトナたちが自分で探してたどり着く宝物的な存在であって欲しいと思っています。
 外でたっぷり遊んだ子どもたちが、家に帰ってから観るもの、雨の日に観るものであって欲しいと思っています。
 
 それから、マンガ好きの人がよく「実はマンガも奥が深い」と言ったりしますが、描いている側から言わせてもらうと、本当の意味で人間を掘り下げて描くことが出来ないのがマンガです。本気で掘り下げたらアングラのお芝居みたいになります(笑)。そういうものはマンガという手法にはそもそも不向きです。
 絵で表現するということは、その絵を見たときに大多数の人が同じ感情を抱くであろうことを想定して描く必要があり、どうしても「記号化」せざるをえないという宿命を背負っています。また、売れるためには「売れた作品」を先例としたステレオタイプなものが好まれるので、少なくとも大手出版社から出ている作品はどこかでみたことがあるようなものが、娯楽として成立するラインで描かれます。だから言うほど深くはないんですよ(深いことが良いとは言ってません)。

 で、結局なにが言いたいかというと、有名人が「私のおすすめマンガ」なんて紹介しているのを見ると、「なんか違うんだよねー」と思ってしまいますが、みなさんはどうでしょう?

 

 

 

 


 

 


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