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【Concert】こがねいニューイヤーコンサート by The JADE

 久しぶりのThe JADEのコンサートは、小金井宮地楽器ホールで行われた「こがねいニューイヤーコンサート」である。このホール、武蔵小金井の駅前(本当に真ん前!)にあって交通の便がよく、デザインも素敵。さらに木を使ったホール内はアコースティックな響きが映える。歌を聴くのにはなかなかいいホールだと思う。

 さて、何を隠そうこの私、The JADEには立ち上げの時に関わっている。デビュー・アルバムをつくった時には夜中まで収録に付き合ったなあ…などという思い出話はさておき、私が色々とお手伝いをしたのはデビューの頃だけで、いざ歩き出してからのThe JADEとは、もっぱら聴き手としておつきあいをしている。今回は、コンサートのプログラム・ノートを書かせていただき、本当に久しぶりに彼らのパフォーマンスを生で聴く機会に恵まれた。

 The JADEは6人のメンバーから成るが、何しろオペラ歌手として尋常ではなく忙しい彼らなので、その時々のスケジュールによって登場するメンバーが変わる。今回はテノールが高野二郎と高田正人、バリトンが成田博之と北川辰彦という4人が出演した。前半は、彼らの本領であるオペラ・アリアを中心としたプログラムで、もちろんマイクなしの生歌を存分に聴かせる。「オペラ講座」は彼らの定番メニューで、それぞれテノールやバリトンの役柄の特徴などを紹介しながら、1人ずつ得意のレパートリーを披露していく。実はフルート演奏もプロはだしの高野二郎が、『魔笛』のタミーノのアリア「なんと力強い魔法の笛よ」を吹きながら歌うという離れ業をやってのけるのも、The JADEファンならお馴染みだ。前半ラスト、4人揃っての「Time To Say Good Bye」はさすがオペラ歌手という迫力ある歌いぶりをみせた。

 しかし、今回私がいちばん感心したのは後半のポピュラー・ソングのプログラムである。こちらはマイクを握っての演奏になるが、それぞれのソロがカッコイイのもさることながら、4人による四季の歌メドレーがとてもよかった。滝廉太郎「花」(春)、THE BOOMの「島唄」(夏)、ハイ・ファイ・セットの「燃える秋」(秋)、中田喜直「雪の降るまちを」(冬)、そして森山直太朗「さくら」(春)という5曲。ピアノの金井信の好サポートもあり、ノリ(「花」はジャズ調!)がよく、またハモりも美しい。4人のユニットとしての「まとまり」がかなりこなれていて、そのために耳に心地よく、素直に楽しめた。

 ラストをオリジナル曲「倖せのまわり道」と「祈り(You Raise Me Upの日本語バージョン)」でドラマティックに締めたあと、アンコールで『こうもり』からの「シャンパンの歌」、そしてこれもオリジナル曲の「翡翠」。この「翡翠」はメロディとハーモニーが複雑で、ソロとアンサンブルが様々に入れ替わるとても難しい曲。コンサートによってメンバーが入れ替わるから歌うパートがその都度違うわけで難易度は最高だと思うが、これが本当に素晴らしい出来栄えで、「The JADEもついにここまで来たか」という感慨を抱いたのである(ごめん、上から目線で。でも本当に産みの苦しみから付き合っているので、何というかもう親心みたいな感じなのだ。ファンの皆さん、許してね)。

 クラシカル・クロスオーヴァーの歌手はたくさんいるが、The JADEは個々の歌手のレベルがとても高い。それは、ステージ・パフォーマンスの楽しさや心地よさに繋がっていると思う。そして今回、長い間活動を続けてきた中でアンサンブルのレベルもかなりなものになっていることを再確認した。クラシックから歌謡曲、ポピュラーまで、オールマイティにこなすオペラ歌手のユニットThe JADE。これからもその「歌」でファンを魅了し続けてほしい。

2018年1月21日、小金井 宮地楽器ホール。

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