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【Concert】「樋口達哉のオペラ」第1弾 オペラ「道化師」プレ・コンサート

テノールの樋口達哉さんプロデュースの「樋口達哉のオペラ」。来年10月に行われるオペラ『道化師』に向けてのプレ・コンサートが晴海の第一生命ホールで開催された。今回は、第1部が出演者によるガラ・コンサート、そして第2部が『道化師』ハイライトという贅沢な構成。メンバーは樋口さんの他、ソプラノ佐藤美枝子さん、バリトン豊嶋祐壹さん、成田博之さん、テノール高田正人さん。

第1部はまず出演者全員による「乾杯の歌」でスタート。5人がそれぞれアリアを披露したあと、男声二重唱を2曲(「もう帰らないミミ」と「友情の二重唱」)。アリアでは、佐藤さんの「慕わしい御名」(ヴェルディ『リゴレット』)が出色のできばえ。高音の伸び、完璧にコントロールされたコロラトゥーラ、奥行きのある音色、すべてが完璧に近い。また、成田さんの「祖国の敵」(ジョルダーノ『アンドレア・シェニエ』)も良かった。後半のシルヴィオ役もだが、成田さん、以前に比べてグッと重心が下がって、とてもドッシリとした「男っぽい」魅力が出てきたと思う。

第2部の『道化師』ハイライトは、司会の朝岡聡さんがストーリーを紹介しながら歌でつなぐスタイル。まず、トニオ豊嶋さんが客席から登場し前口上を歌う。ネッダ佐藤さんの「鳥の歌」、カニオ樋口さん「衣裳をつけろ」の2曲はこのオペラの二大アリアだが、どちらも実にドラマティック。歌声を聴いているだけでオペラの舞台を観ている気分にさせられる。ペッペ高田さん、甘い歌声が「アルレッキーノのセレナード」にピッタリ。とにかく、適材適所のメンバーが揃ったという印象。来年5月の本公演もこのメンバーで上演されるそうだ。

今回、すべての曲は樋口さんがミラノ・スカラ座の合唱団で歌っていた時代から付き合いのあるピエロ・C・ジョヴァンニーニさんがピアノを弾いたが、ただの「伴奏」ではない彼のピアノによって、奥行きのある音楽に仕上がっていたといえるだろう。

樋口さんとはずいぶん以前から親交があって、「いつかは『道化師』を」というお話は伺っていた。『ダフネ』で二期会デビューした頃は、その甘いマスクもありいかにも「王子様」というイメージの歌声だったが、この2、3年声が太くなって安定感が増してきて、いよいよヴェリズモを歌う時が来たなと感じていた。今日のコンサートを聴く限り、その「時」は熟したと言えるだろう。『道化師』本公演は2020年10月10日、紀尾井ホールにて。演出に岩田達宗さん、指揮に佐藤正浩さんを迎えての上演。今日とはまた違った舞台が生み出されるだろう。とても楽しみだ。

最後にひとつだけ。実は、プログラムの曲目解説を書いたのは私である。樋口さんの長年の夢が実現するとあって心を込めて執筆したつもりだが、残念なことに記名がなかった。ちょっと悲しい。

2019年5月12日、第一生命ホール。


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