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オランダ人の休暇は神聖なり。小学校時代から楽しむ「何もしない」ホリデー

オランダ人の有給休暇は平均で年に5週間(25日)。2019年は祭日が好都合なタイミングに現れ、これに週末を合わせると、休日数は52日間に上るという。わずかな有給休暇さえ消化が難しい日本人には、ため息の出るような状況だ。

休暇中は旅行に出たり、キャンプでのんびりしたり、家でくつろいだり……ゆとりのない私は1週間ものんびりすると、だんだん落ち着かなくなってくるのだが、彼らは実にリラックスするのがうまい。それもそのはず、彼らは宿題もクラブ活動も「何の縛りもない」休暇を小学校の時から楽しんでいるのだ。

バカンスに生きる

 こんなに休暇がたくさんあると、その間の仕事はどうなるのだろうか……と、日本人なら気になってしまうところだが、その間はやっぱり結構仕事が滞ることが多い。他の同僚がカバーできる場合はやるのだが、その人にしかできない仕事だったり、その人に聞かないと答えられない質問が来たりもする。そんな時、よっぽど緊急の時はスマホに電話をしたりもするが、大抵はその人が休暇から戻るまで「ペンディング」となるのである。

 そのため、休暇を取るのはかなり仕事がヒマな時期を選ばなければならないはずなのだが、これも好き勝手に取ってしまうケースが見られ、生真面目な日本人としては、「え……この忙しい時にバカンス……?!」と、開いた口がふさがらないことも。彼らは、子供たちの学校休暇に合わせて1年ぐらい前からバカンス用のホテルやアパートを予約していることもあるため、その場合はなかなか仕事のためにそれをキャンセルする……というのも難しいのだろう。仕事のスケジュールより、休暇のスケジュールが優先されるのは、ある意味「何のために生きたいか」を忠実に反映しており、清々しい潔ささえ感じさせられる。

 もちろん、グローバル競争の激しい業界で、日々最先端のところで戦っている人達は、バカンスにもラップトップを持って行って、大事なメールには対応できるようにしている。しかし、「私は〇月〇日まで休暇なので、お返事は戻ってからになります」という旨の自動メールを設定している人も多く、これが返ってくると、こちらはもうあきらめて待つしかない。休暇は何人も犯すことのできない、オランダ人の神聖なる権利なのである。

小学校の休暇は宿題ゼロ、クラブ活動もお休み

 大人たちの休暇も長いが、子供たちの休暇は当然もっと長い。我が息子たちはオランダの小学校に通っているが、6週間の夏休みに以外にも1~2週間の休暇が春、秋、冬にもやってくる。それ以外にも祝日、先生の研修日、先生によるストライキ(オランダの小学校の先生は待遇改善を求めて、このところストを繰り返している……)などで、学校はしょっちゅうお休みになり、親としては「いったいいつ勉強しているのか?」と、心配になるほどである。

 さらに、こうした休暇の間も宿題はゼロ。小学生の間は、普段も宿題がほとんど出ないのだが、こういう長い休暇であっても、ドリルや復習といったことは全く求められない。国語、算数の復習ドリルに加え、理科や社会の自由研究、家庭科や図工の作品作り、読書感想文、絵日記など、長期休暇ほど宿題てんこもり状態だった私の小学校時代を思うと、我が息子たちの生活は「こんなに楽でインカ帝国!」と叫びたくなるほどである。

 これに加え、夏休みにはサッカークラブやピアノなどの習い事も完全ストップ。ピアノなど、夏休み中はたっぷり練習する時間があるにも関わらず、休み中は課題練習曲がわざわざ減らされるぐらいである。休暇はとにかく「何にも縛られずに楽しめ!」というスタンスで、我が息子たちも休暇中は完全にリラックス。そんな彼らを見ながら、私の心の中はいつも「インカ帝国?!」が渦巻くとともに、こうした環境で育ったオランダ人の休暇の過ごし方や考え方には、到底到達することはできないなあ……と思う次第である。

オランダ人との連絡は時間的余裕を持って

 オランダ人によると、昔のオランダの小学生は今より休暇が少なかったらしいが、それでも宿題フリーという点では今も昔も変わらず。そんなのんびりした休暇を子供時代から楽しんできたオランダ人は、もう徹底的に休暇を楽しむ体質になっている。もしかしたら、これはキリスト教の安息日に徹底して何も労働をしないという、もっと歴史的、宗教的なものに遡るのかもしれない(西欧全体で全般的に休暇のあり方が似ているのはそのせいか……)。いずれにしても、オランダ人とビジネスをする場合は、彼らの休暇中に仕事が進まないことを前提にしなければならない。

 休暇のあり方が性格全体に影響を与えるのかは定かでないが、オランダ人は往々にしてのんびり屋が多いような気がする。仕事でメールを送っても、2回も3回も催促しないと返事が返ってこないこともしばしば。いろんなプロジェクトも、いつもぎりぎりのタイミングにならないと動き出さないような印象を受ける。せっかちで小心者の私は、早くスケジュールを確定して今できることから仕事を進めたいのだが、オランダ人の返事待ちでぎりぎりになるまでスケジュールが確定せずに、やきもきすることも多い。

 タイミング悪く休暇を取得する人や、もともと週3日だけ勤務の人などもいたりするので、オランダ人との仕事連絡には、とにかく時間に余裕を持つことをおススメする。さらに、数日間で返事がない場合は、何度も催促のメールや電話をしなければならない。「こんなに電話したら、図々しいと思われるのではないか……」と、遠慮することはない。ただし、彼らが休暇中の場合は別。運悪く「〇月〇日まで休暇中なので、お返事は休暇明けになります」の返答が来たら、座禅でもするしかないのである。

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