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高校での常勤講師としての日々(4)「自分が何人かわからない」と言った生徒のことば

高校中退から、大学現役合格、フリーター卒業からの起業を学ぶための鞄持ち...そして高校教師。

常勤講師として働いた工業高校での日々は今でも私の宝物です。

さて、私が常勤講師として働いた工業科の高等学校は東大阪に位置し、それこそ様々な国籍を持つ生徒がいました。
悲しいことに「本名がバレて欲しくない」と、"通称名"というのを使用し、名前を日本人らしくすることで自分がどこ出身かを隠して生きる生徒がいたことも確かです。
こういったことは比較的どこの学校でもあり得ることではありますが、そういった「自分を偽らないと不利益を被る」という社会の在り方に、私はいつも疑問を抱いていました。

日本という国が、誰もがありのままで、自分のままであることに誇りを持って生きられる社会ではないこと...そういったことに悲しさを感じることもありました。

さて、前述した通り、私が担当した生徒の中には様々な家庭環境を持つ生徒がおり、それこそ外国籍であったり、国際結婚などのバックグラウンドを持つ生徒も少なくなかった訳ですが。

そうした中で私が英語の教員として感じたのは、やはり"言語の重要性"です。
これは私の教える"英語"だけの話ではなく、むしろ"国語"の話です。

私が教えていた外国籍の生徒は、日本で暮らしながら、日本国籍以外の両親を持ち、日本の高等学校で勉強していました。
しかし、日本語の習得は高校生レベルのものではなく、国語の考査でもいつも欠点を取ってしまうのです。
かといって英語がとびきり得意な訳でもなく、両親が話す言語に関しても会話は出来るものの、"文法"となればめっきりわからない。つまり、両親とのコミュニケーションツールとして感覚的に身につけてきただけ。ということになります。

そして、そんな彼が私にポツリと言ったのです。

「正直、自分が何人なのかわからない」と。

私はこの時、この生徒はとてつもなく深い闇を抱えているのではないか。と思いました。
彼は人とコミュニケーションをとるためのどの言語にも自身が持てないことで、「一体自分は何者なんだ」
と、自分に問い続けてきたのではないか。と思ったのです。

先日、ニュースで日本に住む2万人の外国籍の子どもたちが小学校に通えていない。という衝撃的なニュースを目にしました。

私はこのニュースを見たとき、真っ先にこの生徒のことを思ったのです。
彼の抱えている「言語が不安定なことで生じる生きにくさ」は、いつかどこかで爆発してしまうのではないか...
そして、その予備軍とも言える子どもたちが日本に2万人もいる...

オランダでは子どもを小学校に通わせない場合、保護者に罰金が課せられます。
驚くことに私が今の家に引っ越してから、1番最初に受け取った手紙は、
「あなたの子どもはどこの小学校に通うつもりか知らせてください」
という手紙でした。

オランダという国は移民が多いこともあって、子どもの教育に関する管理をきちんとすることで、国内で学校に行かない子どもたちが溢れたり、そういった子どもたちが社会的不利益を被らないように。と考えているようです。

そして、オランダの小学校では移民の生徒のための特別クラスが開講されている小学校も少なくありません。そこで子どもたちは"オランダ語"を学びます。
家庭の言語がオランダ語ではない生徒にとって、オランダ語を習得することは学校生活の安定へと繋がります。

今、日本の教員数は全国的にみても減少傾向にあります。
しかし、移民の受け入れなどにより、言語的サポートを必要とする子どもたちはどんどん増えている...

日本国籍ではない保護者に育てられながら、日本の学校に通う。
その中でも「私は◯◯人だ」と胸を張って言える子どもたちが増えるために、必要なものは教育予算の確保だと私は強く思っています。




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