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高校での常勤講師としての日々(1)

4月から高校教師(常勤勤務)になった私。
私は正規教諭(教育公務員)ではないのと、1年目ということもあって担任などは持ちませんでした。(校種、都道府県によっては教員不足により常勤講師であっても担任を持つことがあるようですが)

よく、「常勤講師と正規教諭は何が違うの?」と聞かれますが、大きく異なる点と言えば前述したように"教育公務員"ではないことが挙げられます。
給与面などについても異なる部分はあると思いますが、詳しいところまでは分かりません。

教育公務員ではない、ということはそれに付随して給与の変化の仕方、昇給の仕方やスピードも異なります。また、責任の重さも変わってきます。
高等教育の場合は、常勤講師の場合、担任を持つことがなかったり(例外もあります)、学年主任を持つことがなかったり、もちろん常勤講師のままでは首席、教頭、校長などといった役職のある職につくことは出来ません。

ただ、常勤講師であれ給与は正規教諭と同じように保証されますし(額は多少異なりますが)、賞与(ボーナス)も正規教諭のように受け取ることが出来ます。

ただ、これは教員間の話であって、生徒にとっては正規教諭も常勤講師もほとんど変わりありません。何故なら常勤講師は正規教諭と同じように授業数を担当することも多いですし、基本的には常勤講師も正規教諭と同じだけの時間を学校で過ごしています。
また校務分掌という分掌の仕事、教務や(生徒(生活)指導、総務、保健というような係も担当します。部活動を持つことも多く、働き方としてはほとんど正規教諭と大差ない。というのが私が1年、常勤講師として働いて感じた感想です。

ということで、私は4月から工業高校の英語の常勤講師として勤務を始めました。

年度の最初(4月)に他の教員と同様、新着任の教師として全校生徒の前で紹介され、分掌は進路指導部となりました。
そして、担当学年はほぼ高校3年生でした。

私は自分自身が高校生活を1年半で終了したということもありますが、そもそも私学に通っていたので"公立高等学校"という場所に属することが初めてでした。
そして、彼らが普通科の生徒ではなく、工業科の生徒である。ということも一般的な高等学校と少し異なる点です。

...とにかく、4月当初に開かれた英語科会議でテスト範囲や成績処理の方法を教えてもらい、どういった配分で成績を決定するのか、欠点となる成績の算出はどのように統一されているのか、日々の授業では何を要素に成績の一部が決定されるのか、最初のテスト範囲、全体で統一して行われる小テストの有無やその点数をどのように成績に反映するのか、教科書のどの部分を共通項目として教え、授業担当者にどれだけの自由裁量が与えられるのか、誰が最初の考査問題を作るのか....などなど。
ここには書ききれない内容を4月1日の勤務開始から、4月8日あたりの生徒が学校に登校し始めるまでに決定しなければいけません。

4月1日が勤務開始の日のため、それよりも前に教育活動の内容について話し合う時間は確保されません。仕事の話をすると、それは給与に反映されなければいけなくなるからです。そうは言っても、3月末には少し学校へ出向きました。つまり、4月1日からでは、到底間に合わないからです。
その際にはこれから使用する教科書を渡され、「この本を使って、生徒と1年間勉強するんだ」ということだけがわかっていました。

「どれくらいのペースでこの教科書を消化していくのか」とか、
「最初の1学期中間考査ではどのページまでが考査範囲なんだろう」とか、
「1年を通して使用する教材(教員の間では"帯教材"と呼んだりします")はどれくらいのペースで進められるんだろう」とか...

とにかく、初めて教壇に立つ私にとって学校にまつわることは謎ばかりであり、生徒の成績に関わるということは落第や留年など、人生が関わってくる部分でもあるため、しっかりとやらなければ...という感じなのですが、なんせ学校現場は忙しく、
新入生や既存の生徒に関するあらゆる事柄(物販販売や健康検診など)の調整、
5月くらいにある遠足についての話し合い、
もっと先にある修学旅行について旅行会社とのやりとり、
配慮生徒に関する学習計画の話し合い、
工業に関するあらゆる検定の申し込みに関する手配、
1年を通して総合の時間に何をするか、
奨学金に関すること、
部活動のグラウンドの調整、
他校との練習試合の調整

などに費やされます。(これだけ書いても全然書ききれていません)

私は教員生活を通して全ての分掌に関わってきた訳ではないので、ここに書いていることは全体の10%くらいにしかならないと思いますが...
もちろん1人でこれらの仕事を処理するのではなく、学校全体の教員が分掌に分かれ、その中で仕事を分担する訳ですが、とにかく仕事が多岐に渡るのが教育現場の特徴です。

一般企業であれば、人事部の仕事を総務部がすることや、経理部の仕事を社長がすることはないでしょう。何故なら、一般企業では「その部署に適した人材」を雇用するか、研修などを通して教育を行った後、本人の能力や希望に応じて、部署へと人を割り当てていくことが多いからです。

しかし、学校現場での教員は、1人で「経理も、総務も、社長もやります」という風に「マルチに働ける人」でなければいけません。全く種類の違う業務に片足を突っ込み(いや、タコの足並みに突っ込み)、あちらこちらで起きる会議に参加し、複数のプロジェクトを並行して進めていきます。

それらの業務は、教育現場にICT設備(WiFiをはじめとした情報機器設備)が充実していることである程度の部分は乗り越えられる。というのが私の持論です。技術革新を利用して、業務を効率化していく...そうすれば教職員はマルチに働きやすくなります。

しかし、教育現場のICT設備は絶望的だということが、勤務初日にして発覚しました。これは、ベンチャー企業からきた私にとっては衝撃的でした。

教育現場にあるICT機器はとにかく前時代的なものも多く...というか、そもそも全ての機器が有線でしか繋がっていません。WiFiなど夢のまた夢です。
与えられたセカンドハンドのPCは簡単にフリーズしたり、スムーズに業務が前に進みません。また、書面での処理が多く、印刷ばかりを強いられたり、捺印や署名を求められることも多かったです。

そういったことを含め、とにかく忙しい。人は絶対に足りていない。
これが、赴任した4月にはっきりと感じたことでした。

教員の主たる仕事は「授業」にあるはずなのですが、前述した通りあらゆるプロジェクトに足を突っ込んでいるため、それらの処理で1日の大半が取られます。そして、授業準備をして実際に授業を行うのですが、その傍らノートやプリントの点検、小テストをすれば成績処理があり、1日8時間では到底処理できない仕事量でした。
「これは、私の仕事における能力が低いからに違いない」
最初はそう思っていたのですが、周りを見渡せば多くが残業をしています。
勤務時間を超えた保護者対応や、ノート点検、配慮が必要な生徒に関する話合いやなど、業務の終わりが見えないことだらけであることが明らかでした。

私が勤務していた高等学校では、
1日約6限の授業×5日=30時間(単位)の授業
となる訳ですが、学校によっては火曜日と金曜日は7限目まである。ということもあります。
私は「合計16時間(単位)の授業」を受け持っていたのですが、30時間のうちの16時間を授業に費やすことで、残りは14時間となります。
つまり、その14時間/週が私に与えられた時間です。もちろんこの時間は生徒の授業が終わる16時前までの時間なので、17時の就業時間まで1日あたり1時間あるとすると、1時間×5日=5時間となり、約19時間/週で学校業務を行う計算になります。

その19時間を細々とした事務処理と日々の教材研究に費やすのです。
もちろん15時や16時に授業は終わるので、17時まで1~2時間はあるのですが、その時間は部活動に費やされたり、生徒の相談、放課後の個別/集団補習などに費やされます。
そうなると、またそれの準備と処理...という風に仕事がかさみ、余計に時間がなくなってしまいます。

また、生徒の素行に問題がある場合は、これらの仕事を隅に寄せて緊急会議に参加したり、家庭訪問や生徒への聴取、そこからまた会議...というようなことも頻繁に起こります。

「教育現場やばいな...」

これが、私が約7年前、常勤講師として勤め始めた頃に感じたことでした。

さて、そんな日々の中、
私は常勤講師として進路指導部に所属し、主に"専門学校や大学"に重きを置く生徒の指導を行うことになりました。
そして週16コマ、高校3年生に英語の授業を始めたのでした。


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