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高校での常勤講師としての日々(7):(主に)褒められて育てられた生徒はすぐわかる

教師として働いていると、自己肯定感の高い生徒と自己肯定感の低い生徒の違いというのがだんだん分かってきます。
また、実力は伴わないのに、やたらと自己肯定感の高い生徒...という生徒も近年は増えてきてるなぁ。と感じるようになってきました。

要するに「自分はできる、自分はできている」と自分自身を評価し、結果が伴わない時は「運が悪かっただけ」とか「本当はできるのに」、「試験を実施した方に問題があった」などと、責任の所在を曖昧にしたり、転嫁したりするのです。

私が勤務していた工業高校にはどちらかというと自己肯定感の低い生徒が多かったと思います。私が彼らを褒めると「授業で褒められることなんてあるんか」という顔をしたりすることも多く、「先生、もうえぇで」と褒められることを嘘だと思うような生徒もいました。

これはとても悲しいことで、人間誰だって褒められる箇所はたくさんあるのです。
それを別の人と比較される中で「それは褒められるに値しない」と位置付けられ、「自分はまだまだだ」「満足することは罪だ」と教えられます。

もちろん目指すゴールに全く到達したいこともたくさんありますが、少なくとも「褒めるに値する箇所」を発見し、そこをポジティブに捉えてから改善すべき箇所が指摘されるべきです。
そうでなければ「自分は何も達成できない気がする」と自分で自分の価値を決定してしまうことにもなり得ます。

青年期を迎えそういった自己肯定感を取り戻せたら良いですが、実際のところ高校生を教える中で、この年齢にまで達すると純粋な自己肯定感を取り戻すのはより難しいことなのかもしれない。と思うようになりました。

...というのも、やはり自己肯定感の高低差は家庭環境による。ということが感覚的に見えてくるからです。
もちろん高校生になってから自己肯定感を育てることが不可能な訳ではありません。しかし、適切に褒められて育った生徒とそうでない生徒とのマインドセットの差は歴然であることも多いです。

そして、それは十数年かけて築き上げて来れられた蓄積であり、それを高校生になってから一気に取り戻す...というのは、ギャンブルで一発当てる。のようなものだと感じます。

そもそも、自己肯定感の高い生徒というのは自分が褒められた場合、「何故褒められるのか」「どこを褒められているのか」ということが理解できます。
それは長年の経験によって「褒められる理由がわかる」という感覚が身についているからです。

しかし、自己肯定感の低い生徒にはそれがなかなか浸透しません。
とにかく称賛の言葉を単純に受け入れられる心の状態が築き上げられていないのです。褒められる時の言葉を疑うこともあれば、聞き流したりすることもあります。

そして、"称賛"が蓄積されないことによって、その経験をバネにすることが出来ないため、次のチャレンジをしよう!という気持ちになりにくいこともあります。

当時生徒からよく聞こえてくる言葉の中には、
「どうせここしか受からなかった」というものがありました。

要するに、努力して精一杯やったとしても、この学校レベルにしか受からなかった。ということです。
そして、この学校レベルというのは実際に自分たちが感じるのではなく、周囲からランク付されたレベル...ということなのです。

箱は関係なく、あとは自分がどれだけその与えられた箱の中で輝こうとするかが問題だと言っても、自己肯定感の低い生徒は言い訳を繰り返します。
前述した通り、次のチャレンジに向かうためのバネ...蓄積してきたポジティブな言葉や経験が自分の中にないのです。

それは、彼らの家庭の話をさせた時に想像がつきます。
自己肯定感の高い生徒は家族のことを聞けばポジティブに明るく話すことが多いのですが、そうでない生徒はあまり嬉しそうに話したがりません。
要するにそういった思い出や家族に対するイメージが明るいものではない、褒められ、嬉しかった...そういった経験や感情が思い浮かぶ場所ではないからではないか。と推測します。

そういった生徒たちに必要なのは"適切な褒め"です。
大袈裟に、しかし時に謙虚に褒める。高校生なのであまりにも意味もなく褒めら過ぎると「逆に馬鹿にされてるんじゃないか?」と思うこともあります。
よって、適切に褒めることはとても大切です。お互いに「これは進歩だね」と納得できる部分をきちんと褒める。ということです。

褒められた経験は次の挑戦をする時の後押しになります。
私は授業で多くの話をして、彼らを褒めたつもりですが、どれだけ響いたかはわかりません。
ただ、彼らが社会に出て困難にぶつかった時に「それでも立ち上がれる」と思う燃料はきっと「褒められた」という自信である。
そう思いながら目の前の高校生たちに接する日々でした。

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