見出し画像

1000万円の借金・未払いを背負った僕のジェットコースターのような2年間。【#2】

↓これまでのお話し↓

それでも折れなかった理由。

それでもなんとか心折れずに前を向けたのは、当時関わっていたあるコミュニティのおかげなのではないかと思っています。

辛い状況に置かれると人と関わるのが辛くなる一方、ピュアな気持ちで前を向く人たちと触れ合っているとポジティブなエネルギーをもらえます。

当時、emoleを利用してくれていたユーザーの1人に「持続可能な音楽社会をつくる」というビジョンとして掲げ、『エンタメ共創部』というコミュニティを運営している方がいました。

そこには、アーティストやエンタメに興味を持つクリエイター、ビジネスマン、学生などいろんな方々が参加していました。

問い合わせからメッセージもらって話してみると、お互いビジョンに共感をし、エンタメ領域で目標を持った方々にむけたイベントを一緒に企画することになりました。

画像1

emoleのメンバーだったわけでもないし、資金繰りの相談をしていた訳でもないですが、一緒に目標に向かって走ることのできるメンバーがいるというのは、今考えると本当にありがたい状況でした。

当時は家から出るのも億劫でしたが、いざ行くとみんなが純粋な笑顔で迎え入れてくる。

画像2

そういうコミュニティに出会えたのは幸いでした。

アーティストやクリエイターの方々にもemoleを気に入ってもらっていたし、ビジョンにも共感してもらっていました。

「いつか一緒に、好きなことで生きたい人に向けた大規模なライブをやろう!」「エンタメ教育事業をやろう!」と盛り上がったりもしていました。

そんな環境の中、僕は少しずつ元気を取り戻し、こんなところで夢を諦めるわけにはいかないと強く思うことができました。

とにかく、稼いでまずはこの状況を打開するしかない。
今が地のどん底なのだからもうこれからは上を見るしかないだろう。

そんな思いで、とにかく稼ぐことに必死でクライアントワークをやりました。

幸いなことに、学生インターンをしていた時の先輩デザイナーや、僕にデザインの魅力を教え、初めてのクライアントワークを振ってくれた先輩、emoleをきっかけに出会った方々がお仕事を振ってくれたり、僕が持ってきた案件を一緒にやってくれていました。

おかげで、そこから3ヶ月ほど立つと未払い分の支払いは完了し、残りはキャッシングのみ!という状況になっていました。

後少しで完全返済!のはずが...借金倍増

2019年8月、ついにこのクライアントワークの案件を終えればキャッシングしていた分の借金も返済できるというところまで来ていました。

そのクライアントから受けた依頼は、同時に3つのプラットフォームを作りたいというもので、しかも納期がかなり短い案件でした。

予算は1200万円ほど。

妙に焦っている様子で、少し怪しいなと思ってはいたものの、当時の僕は、とにかくお金を稼ぐことに必死でその依頼を引き受けてしまいました。

その際に、開発チームのメンバーとして声をかけたのは、僕に初めてデザイン案件を振ってくれた先輩でした。

こうして、早速案件に着手をしつつも金額がそこそこ大きかったので、着手金をその月の末に支払ってもらうように依頼していました。

そしてその月の末。口座を確認したところ、着手金が振り込まれていませんでした。

クライアントに問い合わせたところ、今週中に振り込むと連絡がありました。

それであれば問題ないだろうと、デザイン/開発を続けましたが、しばらくしてもお金が振り込まれません。

これは怪しいと、やっと疑い始めた僕は、その会社の社員さんから密かに情報収集をし始めました。

すると、なんとその会社がキャッシュアウト状態で、社員の給料すら振り込まれていないという状況であったことが発覚したのです。

既に開発も着手してしまっていたため、その時点まで着手してしまった開発費用分はエンジニアに支払わなければなりません。

差し伸べられたのは救いの手か...?

前回の失敗を生かし、今回はガチガチの契約書を巻きました。
支払いができなかった場合には、その会社の代表個人を連帯保証人とするという内容まで含めましたが、支払い能力がない場合は回収のしようがありません。

もうこれ以上落ちることはないだろうと思っていたのに、これは崖っぷちどころではない、、、
大ピンチです。

そんな中、この案件を紹介してくださった方で、クライアントから同じくビジネスの案件を委託されていた方からいくつか提案がありました。

1つは、クライアント企業に出資をしている投資家の方が開発中のサービスのうち1つを買取ってくれるかもしれないので、その投資家に請求をするというもの。ただし、現状クライアントの代表が開発中のサービスを投資家の方に引き渡すことに納得するかはわからないとのこと。

さらにもう1つ。その投資家の方が、既に着手してしまっている開発費分で今回買取をしない分の費用を利子なしで貸してくれるというもの。

どちらも救いの手に思えましたが、提案をしてくださった方は最後に、「その投資家も信用できる人かわからないから気をつけた方が良い」という言葉を残しました。

ただでさえ疑心暗鬼だった僕は、またもや誰を信用すれば良いのかわからない状況に陥ってしまったのです。

とにかく、この状況では情報が少なすぎてなんの判断もできない。
そもそも、案件を発注してきたクライアントの代表からは全く内部事情を聞いてない状況でした。

そこで、その会社に突撃して真相を探ることにしたのです。

疑心暗鬼の心理戦

アポなしで突撃したため、最初は少し驚いた顔をしていましたが、問い詰めるとあっさりと認めました。

ただし、社員の方々や案件を紹介してくださった方とは言っていることが異なり、支払いの目処は立っているとのことでした。

当時、そのクライアントは、webサービスの運営と同時にリアル店舗の経営もされていて、その売上げを最優先でemoleに支払うとのことでした。

それだけでは信用できなかったため、その場でPOSデータを開示させるのと同時に、その売上金がどのタイミングで口座に着金するのかを確認し、着金当日の午前中に振り込みをするように伝えました。

一方で、紹介者から連絡があり、サービスをクライアントの代表には納品せずに、投資家に納品して欲しいという連絡がありました。そうすれば、見積もり金額の一部を支払うと。それも、クライアントの代表には言わずにこちら側に納品して欲しいとのことでした。

プロダクトは納品もしていない状況だったため、所有権はうちにありましたが、そんな筋の通らない話があるかと思いました。

さらに、紹介者は、クライアントの代表は誰にでも、何かしらの理由をつけて支払いはできると言うが、実際には支払われない。だから投資家にプロダクトを渡して一部の資金だけでも回収をした方が良いと言うのです。

まずは、その投資家を紹介するので一度あって欲しいと言われ、会ってみることにしました。

投資家の企み

実際に会って話を聞くと、クライアントの代表は既に借金地獄状態ヤクザに取り立てられている状況で、ブラックリストにも載っていて、銀行からお金を借りることもできない。とのことでした。

投資家曰く、クライアントの代表は自分に追加の出資について相談をしてきているが、増資するつもりは一切ないと言います。

さらに投資家は、クライアントの社員を水面下で引き抜いて新しい会社を作ろうとしていました。代表だけを引き剥がすつもりだったのです。

その上で、開発中だった3つのプロダクトのうち1つを100万円で買い取ると言ってきました。見積もり金額の1/4ほどの金額。

ここで、僕の選択肢は2つになりました。

1.クライアントの代表に黙って、投資家にサービスを引き渡し、本来得るはずだった金額400万円のうち、100万円だけでも確実に回収をする。
*この場合、300万円は確実に失うことになる
*この投資家が何者なのか調べても一切出てこず、本当に支払われるのかも怪しいし、その人自体が信用できる人なのかわからない状況

2.投資家にサービスを渡さずに、クライアントの代表に請求し続ける
*この場合、1円も回収できない可能性がある

どちらにせよ、依頼人に黙って別の人に勝手にプロダクトを引き渡すと言うのはどうしても気持ち悪かったので、まずこの状況を代表に伝えない限りはプロダクトは売ることはしないと伝えました。

そして、2週間ほどの時間をもらいクライアントからの入金を待つことにしました。

再度クライアントへ突撃

2週間後、、、入金はありませんでした。

そこで、再度アポなしで突撃。

いつも通りの謝罪から始まり、向こうから1つ提案がありました。

それは、3つのサービスのうち1つを投資家に譲るので、投資家からお金を回収して欲しいとのこと。

そして、残り2つのサービス分は支払うとのことでした。

こうして、選択肢が1つに絞られてしまい、ひとまず100万円を回収するために投資家と再度話をすることになりました。

本当は、その投資家とも取引をしたくはなかったのですが、巻き込んでしまっていた先輩の開発チームに少しでも早く支払いをしなければいけない状況でした。

というのも、その先輩のチームも1つ前にやった別の案件で未回収が発生していて、先輩の開発チームも危うい状況だったのです。

そのため、僕は追加で途中まで返し終わっていたキャッシングのお金を再度借り直して、支払いをした上で、投資家にすぐに支払いをしてもらうように依頼しました。

そこからの支払いは思いの外スムーズに進み、話をした次の日には着金がありました。


それ以来、その投資家とは一切やり取りをしていません。

ラウンド2

そんなわけで、300万円の損失は発生してしまいましたが話はシンプルになりました。
1200万円の見積もりをしていた分のうち、2つのサービス開発で着手してしまっていた分、500万円弱の金額をクライアントの代表から回収すること。

しかし、ここからまた長い戦いが始まります。
状況的には誰がどう見ても回収不可能な状況だったのです。

ちなみにこの間、開発チームを動かしていた先輩は、とりあえず継続可能な資金は回収できたので、お金が回収できるまで待つよと言ってくれました。

そして、回収できた金額に関しても、デザインと開発で元々出していた見積もり分の割合で割ってもらえれば良いと。

弁護士を連れて突撃

この状況を顧問の弁護士に伝えると、一度クライアントの代表に一緒に会いに行ってくれることになりました。

スマホで録音をしながら、クライアントの代表に弁護士と伝えたのは次の内容です。

次の月の末日までに支払いがなければ、訴訟を起こす

今回は、契約書をガチガチに巻いているので裁判を起こせばほぼ100%勝てる状況でした。

ただ、裁判を起こせばそれなりに費用もかかります。
しかも、差し押さえができたところで全額回収できる確率はかなり低い。

それでもやるしかありませんでした。

ちなみに、この時点でも未だにクライアントは支払う意思があるようでした。

前回は入金直後に取り立てに合い、全て回収されてしまったとのこと。
しかし今回は必ず支払いができると。

1ミリも信用できないのですが、もう待つしかありません。

こうして、もう一月待つことに。。。

失踪、、、?

10/31、口座を確認すると、、、



入金なし。


終わった。
これで裁判が確定。

ここからまた長い戦いが始まる。。。


まずは、クライアントに状況を確認しようと電話をしたところ、、、
電話番号が使えないものに、、、
これまで繋がっていた電話番号が突然、、、

嫌な予感しかしない。

その日急いで、クライアントの店舗に突撃するも閉まっている。
ノックをしても出てこない。

終わったか、、、

そう思い、店舗の前で立ち尽くしていると、道路を挟んで反対側のお店から出てきた人が声をかけてきました。

冷静に考えると僕、完全に不審者じゃん!
怪しまれたーーーーー!!

と思っていたら、〇〇さん(クライアントの代表)ですか?と、、、

え。。。?

と固まりつつも、なんとか、はい、、、と答えると

実は、向かいの店舗を貸してるのうちなんですよ。賃料の支払いを催促しているのですが、未だに支払いがなくて、、、と。
(こいつはどこまでやっとるんだ、、、と思ったが)

一応、まだ逃げてはいないようですよ。
僕、目の前なので見張っておきますね。

何かあれば連絡します。
と連絡先を渡してくれた。

同じような状況の人が他にもいるんだな、、、となぜか安心する気持ちになりつつも、、、

これって訴訟を起こしても、あっちこっちから同時に訴訟を起こされればさらに回収できる金額が下がるのではないか、、、

と不安にもなりました。
*同時に訴訟があり、各方面の請求金額の合計金額分が被告人の所有する合計資産を超えた場合、各方面の請求金額の割合で割って回収する形になる。

とりあえず、その方には連絡先を伝えて、その日は帰ることにしました。

まさかの提案

それから数日、クライアントの代表に電話をするも繋がらず、、、
やはり逃げられたのでは?と思っていると、突然ショートメッセージが届きました。

支払いが滞り、携帯も止められてしまっていたとのこと。
なんとか支払いをして携帯は復活させたらしい。

その上で、裁判ではなく別の方法でどうかという提案だった。

それは公正証書を結ぶというもの。

公正証書は、ものすごく簡単にいうと、それを結べば、約束が履行されなかった場合に裁判で勝訴したのと同じ権利を得られるというもの。

つまり、裁判をせずに差し押さえの権利が得られるのだ。

こんな提案は普通債務者からすることはありません。
何を考えているんだか、、、
弁護士も不思議がっていました。

公正証書は、債権者と債務者が同時に公正役場に行き、公正人立ち合いのもと結ぶ必要があります。

裁判を起こされたくないから提案してるだけで、実際に公正役場にはこないのではないか?とも弁護士は言っていましたが、この提案に乗らない選択肢はありませんでした。

こなければ予定通り裁判を起こすだけです。


そして約束の日。

弁護士と一緒に公正役場の前で待つも、なかなか姿を表しません。

やっぱりその場凌ぎの言葉だったのか、諦めかけた時、
道に迷ったといいながら彼は現れました。

本当に来た、、、
この人、本当に何を考えているのだろう、、、
そう思いつつも、僕はなんとなく、本当に支払い意思はあるが支払い能力がないだけなのではないかとも思っていました。

そう思うと自分も立場は一緒で、なんだか同情してしまいそうになります。。。
が、前回そういう考えで痛い目に合っていたので、心を鬼にして相手を詰めていくしかありません。

回収できなければ、自分の仲間に迷惑がかかる。

こうして無事公正証書は結ばれました。

内容としては、その月の末日に振り込みがなかった場合、emoleはクライアント企業、及びその代表に対して差し押さえができるというもの。

その月も、月末に必ず支払いができるので待って欲しいと言われ、とりあえず末日まで待つことになりました。

差し押さえができたところで、、、

11/30、口座を確認すると、、、


やはり入金なし。


電話で確認すると、いつも通り夜中に取り立てにあってすぐにお金を持っていかれたとのこと。
恐ろしい世界、、、
それが本当なら映画のような世界だ、、、

しかし、この日を迎える前からこうなるであろうと弁護士とは話していました。

なので、差し押さえについての戦略を立てていました。

差し押さえができるからと言って、お金を回収できるかというと回収できない可能性の方が高いのです。

差し押さえの対象は様々ですが、今回は店舗で上がっているクレジットカードの売上分差し押さえと銀行口座の差し押さえでした。

銀行口座については、クライアントも代表個人もいくつか口座を所有していました。
全ての口座が空の可能性もありますし、どこかの口座一箇所にまとまってお金が入っている可能性もあります。

ここで大きく分けると僕には2つの選択肢があります。

①各口座に対して差し押さえを行う
*その場合、総請求額の500万円弱を全ての口座に対して差し押さえることはできず、A銀行200万円、B銀行200万円、C銀行100万円と割り振って差し押さえをしなければいけません。

②1つの口座に絞って全額請求する
*この場合、その口座が空だった場合は回収額は0円になります。

ちなみに、クレジットカード会社に対しては、銀行とは別で500万弱の差し押さえが可能だったため、とりあえずクレジットカード会社は差し押さえを行う予定でした。

そして、銀行口座に関してはどちらにするか悩みつつも、信用できるかは分からないがまずはクライアントの代表に各銀行口座の状況を聞きにいくつもりでいました。

謎の提案再び。最後のチャンス

そんな中、突然クライアントの代表からショートメッセージで謎の明細書のような画像が届きました。

これが何かを電話で確認すると、クライアントの会社の消費税の還付金の明細書だそう。

このお金はまだ振り込みが実施されていないため、この還付金の請求権を差し押さえれば、確実に回収できるという話だ。

本当に返済の意思があるのだろうか。。。

信用しきれない状況だったので、まずは税務署に弁護士が確認の電話を入れました。

すると、本当にあったのです。
まだ未入金の還付金が。

それも約800万円の還付金。

こうして、ほぼ確実に回収できるであろう税務署を差し押さえることになりました。

奇跡の大逆転か...最終局面へ

1000万円の借金・未払いを背負った僕のジェットコースターのような2年間。【#3】へ続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?