薬

痛み止めのススメ


みなさんこんにちは! Naonardo です。
暑い日が続いていますがいかがおすごしでしょうか?

今日は
「痛み止めなんて、ただ痛みを止めるだけでしょ?
治療効果なんて無いし、それなら我慢した方がいいのでは?」
と思っていた私の話です。

そして、薬物の乱用についても考える機会になりましたので、その点について取り上げます。

※この記事は、何か特定の医療や治療を推奨するようなことを意図したものではありません。
 また、記事では主に鎮痛薬について言及していますが、特定の薬剤を推奨するものではなく、体験を通して、薬は良い面もあれば、正しく服用しないと大変な社会問題にもなり得るということをお伝えしています。
 処方薬は医師の処方のもと、医師や薬剤師の指導に従って適切に服用してください。


そもそも私がアンチ痛み止めになった経緯

わたしはもともとアンチ痛み止め派です。
私が子どもの頃から椎間板ヘルニア持ちだった母の影響が大きい。

母は、ヘルニアの痛み止めのブロック注射をして、
なぜかショック反応を起こして気を失った恐怖体験が抜けず、
それ以来、母はブロック注射や痛み止めのたぐいが嫌いになっていた。

「痛み止めなんて結局痛みを止めるだけで、
 根本的には何も解決しない。
 ブロック注射なんてもってのほか」

子どもの頃からそう聞かされてきた私は、
我慢して済むなら痛み止めは飲まない人間になっていた。

おまけに、母と骨格が似ているらしく、
高校3年生という若い青春真っ盛りの夏休み前に
初めてギックリ腰になって以来、
年一回ぐらいのペースでギックリ腰を繰り返す人生になってしまっている。

しかしながら、こうなってしまったのには、私に大いに原因があって、高校生当時、大好きだったバスケを、腰が痛くてもやめきらなかったことが原因だ。

お遊び程度のバスケだったのに、その当時の自分にとってはバスケが生きがいだった。楽しくて仕方なく、腰がボロボロになっても、楽しくてやめられなかった。

それで今も、腰痛で苦しんでいるわけだが、
因果応報、蒔いたものは刈り取るということだ。

母から再三、痛み止めは意味がないどころか逆効果という風に聞かされてきたことに加えて、このように若い時から長年、腰痛と付き合ってきて、その痛みにも慣れっこになってしまっていた私は、腰の痛みはなんて我慢しとけばなんとかなる、と思っていた。


最終的にこんなに椎間板が飛び出て、
痛みで立っていることも、歩くこともできなくなっていても。

この状態になった時には、完全に神経を圧迫していて、何もしなくても右足の痺れと痛みがMAX。

足を動かしづらく感じ、なおかつ少し排尿障害も出ている有様でした。
ひどい椎間板ヘルニアになると、神経の圧迫により排尿障害を引き起こします。
みなさんはそうなる前に、すぐ受診を!

最初に受診した近所の病院で即MRIを撮ってくれて、手術が必要なレベルで、うちでは手術できないので、紹介状を書きましょうか、と言われました。

また、実際に手術を受けた大きな病院、他にもヘルニコアという椎間板ヘルニアを溶かす画期的な薬の治療を受けに行った病院。

今回手術に至るまでにトータル3つの病院を受診したわけですが、いずれの先生からも口々に、

「こんなになるまで放っておいて、何で早く来なかったの???」

と言われてしまいました。


前述の通り、これまで万年、椎間板ヘルニア・腰痛持ちでしたので、我慢してちょっと安静にしておけばどうにかなると思っていました。

仕事がちょうど忙しかったのもあり、
一日15時間ほどのデスクワークと毎週飛行機での出張でも痛いのを我慢して病院にも行かず、無理を続けていたのが悪かったようです。
(というか、病院に行く間も惜しかったのです)


手術後の痛み止め

椎間板を人工骨に置き換えて、上下を4本のボルトで固定する「腰椎後方椎体間固定術」の手術後、早速痛み止めが出ました。

手術直後は、硬膜外モルヒネ鎮痛法による強力な痛み止めが体に入れられ、痛み止めの袋を手術当日を入れて2日間ほどぶら下げていました。

これがあっても、痛くて痛くて激痛で、
病院のベッドで横たわっている時に同じ体勢を30分も続けられず、でも自分では痛みで寝返りすらも打てない状況でした。

それで、30分ごとにナースコールを押して寝返りを打たせてもらっていました。しかも、私は男性で、肥満体型ではありませんが体重は68kgほど。

その時の当直の看護師の方は女性でしたので一人では私の体を抱えて寝返りを打たせることはできないため、他の看護師も呼んでくださり、二人掛かりでした。

術後、HCUに入っているとはいえ、夜中も30分おきにナースコールを押すたびに、看護師の方々には本当に申し訳なく思いました。
献身的に看護してくださったことに感謝しかありません。

術後のあの痛みを思うと、鎮痛剤が無かったら気絶していたと思います(笑)


術後3日目以降の痛み止め

術後、3日目以降は下記のような薬を処方されました。

痛み止め:カロナール 500mg  朝昼晩 食後 1日3回
頓用の痛み止め: アセトアミノフェン200mg
睡眠薬:ブロチゾラム0.25mg (痛みで夜眠れなかったため)


座薬は自分では入れられないため、看護師さんが入れてくださるわけです。手術前の説明で、術後の痛みへの対応についての説明を受けた時、座薬なんて恥ずかしい、という思いがありました。

でも術後は手術部位のあまりの痛みに、そんなことを考える余裕もなく、アンチ痛み止めを自認する私でも、ほぼ5時間おきに座薬を入れてもらっていました。

入院していた病院の私の病棟では、同じように腰椎や頚椎の手術を受けた患者さんばかりでした。それで、入院しているほぼ全患者さんが座薬を入れるのなんかは当たり前、コーヒーを淹れるのよりも朝飯前な感じで、ササッと事務的にしてくださったので、こちらも恥ずかしがらずに済みました。

一週間後、そこまでの痛みはなくなってきて、座薬はだんだん使用しなくなりました。


退院後の様子

退院後は、前述のカロナールが引き続き処方されました。

術前の説明では、

軽いデスクワークなら通常は術後1ヶ月ほどで始められるようになります。

とのことでした。

しかし、椅子に座ると10分ほどで手術部位の奥から感じるような激痛があり、ほとんど椅子に座れない状態が2ヶ月ほど続きました。
ご飯も、病院でも、退院して自宅でも立って食べていました。

こんなことでは、仕事に復帰するどころではなかったため、果たしてまた働けるようになるんだろうかという不安が募る毎日を過ごしました。

そのころ、手術した病院からの紹介で最初にMRIを撮った近所の病院にリハビリで通っていたのですが、その医師がある提案をしてくれました。

「Naoさんは長年痛みがあったので、神経に痛みの回路のようなものができていて、脳に過剰に痛みの信号を送り、それに脳が過剰反応して必要以上に筋肉をこわばらせたりして、悪循環で痛みが増えているみたいですね。

いろんな痛み止めを併用して、一気にその悪循環を断ち切りましょう

へぇ、そんな状況ってあるんだな、と思った反面、それまでアンチ痛み止め派だった私は、
 「痛み止めにそんなことができるのかな?
  痛み止めなんて、痛みを一時的に取るだけで、
  根本的には何も解決しないんじゃないのかな?」
と感じました。

しかし、他に当てもなく藁にもすがる思いで、その医師に処方をお願いしました。


退院後2ヶ月時点の痛み止め

痛み止め:ワントラム100mg 朝2錠 (オピオイド鎮痛薬)
痛み止め:リリカ75mg 朝1錠 晩1錠 1日2回 (神経性疼痛用)
抗不安薬:エチゾラム0.5mg 朝1錠 晩1錠 1日2回 (デパスの後発品)
下剤:マグミット250mg 必要に応じて朝・夕に適宜
薬効分類:オピオイド鎮痛薬(非麻薬)
 鎮痛作用などに関与するオピオイド受容体に作用することで強い鎮痛作用をあらわす薬

効能・効果
 ・慢性疼痛の鎮痛
 ・癌の疼痛の鎮痛

(上記、日経メディカルより引用)


薬効分類:プレガバリン
 中枢神経系において神経細胞を興奮させるシグナルとなるカルシウムイオンの流入を抑え、興奮性神経伝達物質の過剰な放出を抑えることで鎮痛作用などをあらわす薬

効能・効果
 ・神経障害性疼痛
 ・線維筋痛症の疼痛

(上記、日経メディカルより引用)


薬効分類:ベンゾジアゼピン系抗不安薬
脳の興奮などを抑えることで不安、緊張、不眠などを改善する薬

効能・効果
・胃潰瘍の身体症候, 胃潰瘍の緊張, 胃潰瘍の睡眠障害, 胃潰瘍の不安, 胃潰瘍の抑うつ
・筋収縮性頭痛の筋緊張, 筋収縮性頭痛の緊張, 筋収縮性頭痛の不安, 筋収縮性頭痛の抑うつ
・高血圧症の身体症候, 高血圧症の緊張, 高血圧症の睡眠障害, 高血圧症の不安, 高血圧症の抑うつ
・十二指腸潰瘍の身体症候, 十二指腸潰瘍の緊張, 十二指腸潰瘍の睡眠障害, 十二指腸潰瘍の不安, 十二指腸潰瘍の抑うつ
・神経症の緊張, 神経症の神経衰弱症状, 神経症の睡眠障害, 神経症の不安, 神経症の抑うつ
・心身症の身体症候, 心身症の緊張, 心身症の睡眠障害, 心身症の不安, 心身症の抑うつ
・腰痛症の筋緊張, 腰痛症の緊張, 腰痛症の不安, 腰痛症の抑うつ
・頚椎症の筋緊張, 頚椎症の緊張, 頚椎症の不安, 頚椎症の抑うつ
・統合失調症の睡眠障害
・うつ病の緊張, うつ病の睡眠障害, うつ病の不安

(上記、日経メディカルより引用)

エチゾラム、先発薬名は「デパス」といいまして、主にうつ病に使われるお薬です。
「え? 鬱の薬???」 と思われるかもしれませんが、抑うつだけでなく、幅広く筋緊張を取る効能があります。

不思議ですね。筋肉などの物理的な緊張と精神的な緊張ってつながってるんですね。


薬効分類:塩類下剤
便の水分バランスなどを改善させ排便を促す薬

(上記、日経メディカルより引用)

Naonardo コメント:ワントラムが便秘になりやすい副作用があるので、便をゆるくする下剤です。


これらの薬を飲み始めて、1週間ほど経ってから劇的に改善してきました
腰部の手術箇所の痛みや、背中の筋緊張による極度のこわばり、痛みによる不眠。
これらが次第に収まってきました。

初めて処方してくれた術後2ヶ月経過する前から、
処方してくれたその医師はこのような薬の提案をしようかと思っていたそうですが、私が手術を受けた病院からの紹介でリハを担当してる立場上、あまり薬の変更などはしない方がいいだろうかと思っていたそうです。

あんまり書くと薬事法に触れるため、書けませんが、私の場合、副作用も特になく、上記の効果・効能がすべて良い方向に作用しました。

今も服用が欠かせませんが、
私の場合、特にオピオイド鎮痛薬のワントラムが効果的でした。

現在、術後3ヶ月半ほど経っていて、薬の用量などは徐々減ってきています。そして、通院しながらやっと半日分ほど仕事に復帰できる様になりました。

処方してくださった医師が、痛みの悪循環を断ち切るようにといろいろと検討してくださったことに、心から感謝しています。

また、支えてくれてる家族や友人、読者の皆さんにも心より感謝申し上げます。


オピオイドとは何か?

それにしても、こんなに強力に鎮痛効果のあるオピオイドとは、一体何でしょうか?

そもそもオピオイドとは何か。オピオイドとは、アヘンと似た性質を示す化合物の総称である。オピオイド(opioid)という言葉も、アヘン(opium)から派生してできた言葉だ。WHOによれば、例えば、モルヒネ、ヘロイン、トラマドール、オキシコドン、メサドンなどがオピオイドである(注8)。

(途中省略)

オピオイドは、中枢神経や末梢神経に存在するオピオイド受容体に結合して神経の伝達を抑制することにより、強力な鎮痛作用をもたらす(注9)(注11)。しかし、オピオイドは鎮痛作用だけでなく、多幸感をもたらしたり不安感を除去したりすることでも知られ、その依存性も問題となりうる

(上記、シノドスより引用)

オピオイド鎮痛薬は、手術後に注入されていたモルヒネと同じ分類なんです。つまり、麻薬に近い作用があります。
知ってはいましたが、効くはずですね。

実際に日本では、モルヒネ、オキシコドンなどは「麻薬及び向精神薬取締法」の対象として厳格に管理されている鎮痛薬です。
(もちろん、モルヒネからさらに抽出される、より強力なヘロインも麻薬取締法の対象です)

上記引用記事に出てきた「トラマドール」ですが、オピオイドに対する吐き気などの副作用が出ないか適正を観るために、私も一時期処方されて服用していました。(それでなくても記事が長いので省略)

私の場合、適正に問題が無かったため、より容量が多くて、かつ持続性のあるワントラムの服用に変わりました。

オピオイド鎮痛薬は、ガン患者の疼痛コントロールにも使われるほど強力なものです。

じゃあ、これを飲んだらどんな痛みも取れて、みんな幸せハッピーになるのか?

というと、私は当初、医師からオピオイド鎮痛薬を処方してみましょう、と告げられた時、「オピオイド」と聞いて少し身構えました

なぜならば、私自身、製薬会社向けの創薬支援のシステムを開発していますので、製薬業界の話題が入って来やすい状況ですし、日頃から薬そのものに対しての興味も高いです。

そして、米国ではオピオイドが社会問題になっていることを聞いていて、その問題にも興味がありました。
それで、正直なところ「そんな薬を飲んで大丈夫なのか?」と感じました。

また、日本でもトヨタの役員が辞任した件が衝撃的で、鮮明に覚えていたからです。


オピオイドを巡る問題

少し前の話になりますが、2015年、トヨタの役員が同じくオピオイド鎮痛剤を輸入しようとして、麻薬取締法違反の容疑で逮捕され、トヨタの役員を辞任した例があります。

2015年07月03日 15時27分 JST | 更新 2016年07月02日 18時12分 JST
 トヨタ自動車のジュリー・ハンプ常務役員(55)が6月18日、麻薬取締法違反の容疑のため、滞在していた都内のホテルで逮捕されました。中身が「ネックレス」と記載されていた米国からの国際宅配便の小包に、麻薬成分の「オキシコドン」錠剤57錠が隠すように入っており、密輸の疑いが持たれているためです。ハンプ容疑者は、「麻薬を輸入したとは思っていない」と容疑を否認しています。現在、警視庁が詳細を調べていますが、7月1日、トヨタ自動車はハンプ容疑者の辞任を発表しました。

(上記、ハフィントンポストより引用)

私が処方されているワントラムもオピオイド鎮痛薬ですが、ワントラムは非麻薬(麻薬及び向精神薬取締法の対象外)に分類されています。

同じオピオイドでも、彼女が輸入しようとした「オキシコドン」は、日本では医療用麻薬に分類されているため、一般の人が所持すると麻薬取締法違反となってしまいます。

詳細は上記のページでご覧いただけますが、米国と日本とでは、疼痛管理にかなりの差があり、日本は疼痛管理の面では後進国といえます。

疼痛緩和が必要な末期がん患者なのどへの、適正な理解や使用が進んでいない印象があります。

その一方で、上記の記事にもあるように、

米国ではオキシドコンがあまりにも手軽に入手できるため、多くの人が痛みを緩和するために医療用麻薬としてオキシコドンを使用している一方、医療目的ではなくヘロインなどのように乱用されている現実があります。
(ハフィントンポストより引用)


また先ほどの記事の引用になりますが、
現在、アメリカでは大問題となっています。

薬物関連死の多くを占めるのがオピオイドである。米国における2016年の薬物関連死による死亡者数6万3,632人中、オピオイドによる死亡者はおよそ66%(4万2,249人)であった(図2)。1日に115人もの米国人がオピオイドの過剰摂取で死亡している計算となる。このうちおよそ4割が処方されたオピオイドによる死亡とされる(注15)。つまり、毎日46人が処方薬で死亡しているのだ。

(途中省略)

(本文中にグラフあり)
「図3 医療用麻薬消費量の国際比較 2013-2015年」
米国は、ドイツ、オーストリア、カナダに次いで、医療用麻薬消費量第4位

見てわかる通り、米国のオピオイド消費量は諸外国と比べて多い方だが、突出しているというわけではない。そうすると、オピオイドの消費量だけが問題なのではなく、不適切に処方されたり、処方薬であっても家族や友人から入手・購入したり、麻薬の密売人から購入したりしていることも問題であることになる(注24)。米国では、処方されたオピオイドを乱用した人は1,200万人(2015年)に上ると推定されている(注20)。

(上記、シノドスより引用)

(写真はイメージです)


トランプ大統領も真剣に取り組んでいるようです。

2017年

2019年


まとめ

術後の痛みで苦しんだ私はオピオイド鎮痛薬に救われつつあり、アンチ痛み止めだった私も、このような鎮痛薬があることに感謝しています。

その一方で、米国のように社会問題ともなり得るオピオイド
先ほども引用したシノドスは下記のように締めくくっている。

米国の社会問題を対岸の火事とせず、これを機に「麻薬」についての正しい理解を深めるため、一般市民を対象にした教育や意識啓発が大切であろう。疼痛緩和が必要な人に対する過少治療も、そうした治療が必要ない人に対する過剰治療も、あってはならない。患者が抱えるさまざまな痛みを取り除きQOLを改善するには、医師が痛みの原因と痛みの評価を適切に診断することが必要だ。また、その診断に基づき適切にオピオイドを用いる医療体制の整備も重要である。

(上記、シノドスより引用)


日本では、常習性の高いオキシコドンなどは麻薬取締法の対象であり厳格に管理されています。

私たち自身も、一般的に処方されるトラマドールやワントラムなどのオピオイド鎮痛薬なども、他の人にあげたりせず、適切に管理する必要があります。
そして、これはオピオイド鎮痛薬に限らず、どんな処方薬にも言えることです。

処方薬は、必ず医師の処方や医師・薬剤師の指導に従って正しく服用しましょう。

私の父はガンで比較的若くして亡くなりました。

米国のような社会問題にならないように気を配りつつ、末期ガンなどなどの疼痛に苦しむ方々が適切に痛みを緩和できることを願っています。


それではまた!
Naonardoでした。


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