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交差することのない「彼」の人生に思いを馳せて

久しぶりに前の住人宛の郵便物が届いた。


半年ほど前にも見たことがある宛名だ。
きっと直前の住人宛なのだろう。


姓名でどんな人物なのか想像してみる。
男性のようだ。
年齢は20-30代くらいだろうか。
それから郵便物は「ドメイン契約更新のご案内」とある。
自分で事業をしている人だろうか。

彼はこの部屋でどのような生活をしていたのだろうか。
私のように家でのんびり過ごしていたのだろうか。
それとも寝に帰るだけの生活だったのだろうか。
はたまたこの部屋で仕事をしていてほとんど外出しなかったかもしれない。



この「部屋」を介在して繋がった「彼」と「私」の人生。


繋がったように思えた。
けれどこの「部屋」の歴史の中に「彼」と「私」が時間をおいて登場しただけであって、
この「部屋」を介在して繋がることのない「彼」と「私」の人生。


どこかでそれぞれの人生が交差してこの部屋をめぐる物語を語り合うことができたら面白いかもしれない。
同じ部屋でも住む人によって異なるストーリーが展開されていく。


この部屋に私の人生はどのように映っているのだろうか。
彼の人生はどのように映っていたのだろうか。





この部屋から見て私の人生は「いいね!」をもらえているのだろうか。
他者がどう思うかを気にする必要はないけれど、せっかくなら私の人生を見守っていてくれるこの部屋にも「いいね!」と思っていてほしい。


そんなことを考えながら、郵便物をポストに投函する。
発信元へ還付されるだろうか。
集荷場でしばらく経ってから破棄されてしまうのだろうか。
彼の人生の中にあの郵便物が出現することはないだろう。



今は私が住むあの部屋で過ごした、交差することのない「彼」の人生がよきものでありますように。

#エッセイ #人生

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