図書館紀行No.2 只見振興センター(福島県只見町)2020年2月23日

公民館の一室として12帖ほどの図書室がある。
最低限の地域資料と福島・会津・只見線に関する著作、あとは読書をしないぼくでも知っている人気作家・著者の著作がほとんどを占めている。
それでも「SNSで話題の本」として『岩田さん』をピックアップするなど、情報更新を怠るような姿勢は全くない。だれがプロデュースしているんだろう。

特に読みたい本はなかったが、桧枝岐にしてもここ只見にしても、過酷な豪雪地帯、そして過疎化が深刻な地域に住んでいる住民のモチベーション、ここに住む理由が知りたくなり、市政だよりや議会だよりを読んでみた。

しかしながら、市政だより等からは、彼らがなぜその地にとどまるのかの動機を見出すのは難しい。
昭和40~50年代の減反政策に苦しみながらも適応していく様、厳しい住環境の中でも住民が各々の分野で活き活きと過ごす様だけが読み取れる。

市政だよりをだらだらと読み進めること1時間、『広報ただみ』昭和53年7月No.98にてようやく住民の意識調査を発見することができた。

「町民の生活意識実態調査まとまる」。
只見町選挙人名簿から無作為に選出された1858人の成人者(当時の住民の役38%)が対象。郵便による質問紙の回収。有効回答数1045(回答率56.24%)。

各家庭の主な収入源など、それらもかなり興味深いデータだが、本題に目を向ける。

問2 あなたの一番の楽しみは
・伝統的な行事 13%
・再会 15%
・宿泊旅行 30
・休息 10%%
・一家団欒 12%
・その他 20%
やはりこの地域だけで娯楽を完結させることは難しかったようだ。

問3 あなたは暇なときに何をして過ごしていますか
・休息、ごろ寝 9%
・テレビ、ラジオの視聴 31%
・庭の手入れ、盆栽 14%
・友達とおしゃべり 11%
・子供の相手 9%
・その他 16%
基本的にインドア。現代ならネット、ゲームが上位に食い込みそう。夏の時期の調査なので、ウィンタースポーツなどは選択肢になかったのだろう。
それにしても、読書、音楽、勉強などのいわゆる「文化活動」がまったく上位に食い込んでこないのが気になる。

問6 あなたはこれからも今の部落に住みたいと思いますか
・長く住みたい 38%
・住むより仕方ない 45%
・住みたくない 4%
・機会があれな移転したい 12%
・わからない 1%
本題。「住みたくない」「移転したい」が想像以上に少ない。「住むより仕方ない」が昭和までのイエ制度から解放されつつある?現代なら、この選択をする層は減り、「移転したい」に流れそうだが。

問7 問6で住みたくない、移転したいと思う理由(質問要約)
・仕事や勤め先がない 23%
・離れている子供と一緒に暮らしたい 7%
・雪が多く産業が興きない 31%
・経済的に不安だから 11%
・生計を立てていけない 5%
・その他 23%
娯楽がどうとか以前に食い扶持がない。
実際、問1では季節労働、日雇い労働が貴重な収入源になっている人が44%もいることが明らかになっている。

問8 移転する場合どこに移転しますか
・町内の最も利便性が高いところ 9%
・県内の都市 34%
・県外の都市 18%
・県内の町村 10%
・そこまで考えていない 18%
・その他 11%
おら若松さいぐだ。

問9 あなたの暮らしについて
・満足している 12%
・一応満足している 60%
・不満である 23%
・きわめて不安である 4%
・わからない 1%


これらの結果から見える、どことない「妥協」。
壮大な山や豪雪の中で生きる彼らには、「適応」に必要なエネルギーが多分に必要で、現状の「打開」に精力を費やすのが困難なのではないか。


イワナ、南郷トマト、そば、おいしい空気と水、雪景色…
資源が全くないわけではない。しかし、武器にするにはどれも小ぶりだ。

この町が生き残っていくために必要なのは、これらの「小刀」を上手に使いこなすための訓練と、軍団としての統率ではないか。


図書室の外では、こどもたちがずっと激しめのかくれんぼを楽しんでいる。
こどもたちにこのきれいな図書室へ踏み込む習慣ができれば、この町の存続と成長のための英知は十分育めると思うが。


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