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PRアワードグランプリ2023受賞エントリーまとめ

先日発表された、PRアワードグランプリ2023の受賞エントリーを分析しました。以下よりツリー形式で全エントリー分見られるようになっていますので、よろしければ御覧ください。


筆者について

私は、これまで代理店・企業広報・キュレーションメディアの企画とコミュニケーション領域でキャリアを歩んできました。中でも代理店のキャリアが一番長く10年ほどで、いわゆる攻めの広報・PR領域の戦略プランニング・コンテンツ開発・メディアプロモートを強みとしています。

PRアワードについては、2018年頃よりクライアントの要望で、定例会の中で報告したのがはじまりでした。コロナ禍で会社の新規営業担当としての活動もスタートし、クライアントとの雑談ネタや社内・競合他社との情報交換ツールとして2020年より資料化して活用してきました。というと、仕事目的っぽくみえますが、実情はほぼほぼ個人的な趣味でやっています。

※もしPDFで欲しい方がいれば上記X上の投稿へのコメントやリプライをいただければ差し上げますのでお気軽にご連絡ください。

全体を通した総括

昨年は、「人を動かせたのか」を軸とし、その中でも社会に浸透していったものが比較的上位に輝いていた印象でした。今年は、「社会への浸透」が具体化されて「事業活動そのものに企業のコミュニケーション姿勢を組み込んで動けているか」がポイントとなっていたように思います。

※昨年のエントリーまとめは以下より御覧ください。

PRの根本には「第三者の巻き込み」があります。第三者を巻き込むことで、話題が生まれ、いつしか世の中ごととなっていきます。

近年、計測型マーケティングが主流となり、PRにおいても短期的な視点での活動成果を求められることが増えました。企業活動である以上、短期的な売上獲得(販促)はもちろん必要です。ただ、販促と同じ指標で測るのではなく、PRは中長期的にどんな人を巻き込み、どんな認知形成をしていきたいのかを見据えた活動をしていくべきではないでしょうか。
※このあたりは、以下の記事を是非ご参照ください。12/20まで無料で全文読むことができます。

それを踏まえて各種エントリーを見ると、より大きな世の中ごとを作るために「事業活動」に食い込み、社会を巻き込んでいくのだ、PRパーソンはその立役者となれ、という審査団からのメッセージがあるのかもと思います。

以下は、個人的に重要だと感じたトピックスです。

①第三者が、自分の物語を紡げるか

グランプリの「さかさま不動産」、シルバーの「こども気温プロジェクト」、ブロンズの「ラジオ体操 第バ」などがこれに該当します。

これらに共通するポイントとしては、なんらかの形で情報に接触した人が、語り部となり、物語を紡いでいけることです。これぞナラティブ、共創ということなのかもしれません。

「さかさま不動産」は、これまでに無かった逆転の発想で、「借りたい人」を「貸したい人」が応援するの不動産マッチングサービスです。サイトには、マッチング募集のコンテンツのみならず、借りた人がその後どうなっているのかのアフターストーリーもしっかりと追いかけられるコンテンツが用意されています。

このコンテンツは、さかさま不動産運営が語り部ではあるけれど、そこで語られるエピソードは、参加者(借り手・貸し手・地域の人々)が紡ぐ別の物語です。そして、今後も十人十色の物語が生まれていく余地もあります。

「こども気温プロジェクト」は、上記のサムネイル画像のとおり、ファクト(大人と子どもの目線での温度差)を基に「子どもの方が+7℃暑い」とひと目で分かるコンテンツに翻訳し、自販機に設置したものです。話題づくり・商品接続までの設計が本当に美しい。

特に、今年は酷暑だったこともあり、熱中症関連報道が多数ありましたが、このデータはかなりの高頻度で使われていました。

このコンテンツをきっかけに、子どもが親に飲み物をせがんだり、子どもに飲み物を買おうとする親、孫を心配する祖父祖母や近所のおじちゃんおばちゃんから声をかけられたり、なんて場面もあったかもしれません。少し考えただけでも、これだけの情報からいくつものやり取りが想像できます。

建設現場の労働災害の一因となる、コミュニケーション不全を解消する目的で、業界的な朝の習慣を生かした多言語版のラジオ体操「ラジオ体操第バ」もそのひとつ。

「この方言ホント?」「言いますよ/じいちゃんばあちゃん位しかこの方言は使わないですね」とか、「これって方言だとどうやって言うの?」「●●です。」なんてやり取りや、「●●語では、これってなんて言えばいいの?」と話しかけたりもできそうです。更に「自分が住んでいた地域では、こうやって言ったりします」とか発展的な会話のきっかけにもなったり…というのが容易に想像できます。

企業の都合で言いたいことを伝えるのではなく、それを受け取った第三者がそれぞれの捉え方で物語を紡いでいける構造が、今PRには求められているのだろうと思います。

②「自分はどう思うか」を言いやすいテーマか

これには、ゴールドの「敷金を成長資金に。プロジェクト」、シルバーの「匿名宝飾店」、「味の素PR」あたりが該当します。

このプロジェクトは、その名の通り、契約時にプールしておく敷金をスタートアップの成長資金として活用してもらおう、という一連の啓発活動です。

個人で賃貸物件を借りる際には、通常1~2ヶ月ぶんの家賃を貸し主に収めて退去時の修繕費用などに当てますが、事業者の場合、6~12ヶ月ぶんの家賃を敷金として集めることが慣例とのこと。会社経営をしている方ならばおそらく一家言あるでしょうし、貸し主側からしても「(そこが足かせで、借りてもらえないなら)事業投資に使ってもらいたい」「いやいや敷金は必要だ」といった様々な意見があることでしょう。

事業主体の日商保さんは、借り手でも貸し手でも無い中立な立場だからこそ推進できたのだと思いますが、賛否含め様々な議論が巻き起こることは世の中ごと化には必要な過程と言えます。

「匿名宝飾店」は、SNS上でのイメージが先行していた4℃が、ブランドを隠して純粋にジュエリーを楽しんでもらう店舗体験を提供したものです。

僕自身、「Eternal Loveとか刻印されてるのはちょっとキツイなぁ」と思った経験があり、旧Twitter上での「4℃をプレゼントする男は…」みたいな議論を定期的に目にする中で、ややネガな印象を持っていました。

実際に足を運んだ人から話を聞くと、「このデザインいいかも」と言っても恥ずかしくない店舗空間だったとのこと。公表されているアンケートでも83%の来場者が、4℃に対するブランドイメージが変わったそうです。

PRテクニック的にも、初動の話題づくり(インフルエンサーによる拡散、無料ノベルティの充実)や種明かしによる二次的な話題の山場づくりなど非常に参考になるエントリーでした。

このエントリーは、詳細は不明ですが、「味の素=健康に良くない」という誤解を払拭するための一連の活動と推測されます。

この誤解は、元々中華料理店で体調不良が発生し、その原因がMCG(グルタミン酸ナトリウム)である、と医学論文誌に掲載されたことに端を発するもの。そこから「味の素=身体に悪い」イメージが形成されていったようです。

「旨味成分があることで少ない塩分量で済む」情報を受け取った消費者が、「味の素いいじゃん」「別に使っても身体に害を感じたことは無い」と言い出しやすい情報環境を生み出した点が評価されたのではないかと思います。

ちなみに、味の素ラバーとして知られる料理研究家・リュウジさんはLOW SOLT CLUBにアサインはされていません。どんな経緯で推奨に至ったのかは知りたいところです。

第三者が意見したくなる、というのも非常に重要なんだなと改めて思わされました。

まとめ資料に関して

ちょっと長くなりましたが、冒頭でご紹介の通り、以下投稿にツリー形式で全エントリーをまとめています。投稿へのリプや引用投稿でまとめ資料欲しいとお伝えいただければ、すぐに共有しますので、お気軽にどうぞ。

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