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受け手に委ねられたセンスのない"ジョーク"

なるべく早く吐き出したい(と言いつつ消化に1週間ほどかかった)から、できる限り簡潔に。

僕がよく遊びに行く場所に、DJ BAR BridgeというDJバーがある。
国内でもトップクラスのDJ達がレギュラーとして名を連ね、落ち着いたサウンドと美味しいお酒が毎晩楽しめるお店。
渋谷のんべい横丁入り口に建つビルの10階にあり、山手線とスクランブル交差点を見下ろせる最高のロケーション。
週末になったら一人で遊びに行くこともあるし、普段クラブで行くことのない友達との飲み会終わりにもう一杯だけって使い方もする。
クラブなんかで出会った外国人に「良いとこある?」と訊かれたら、真っ先に挙げるクラブ・バーのひとつでもある。

そんなお店もコロナウイルスの影響で4月頭から営業を休止している中、先週クラウドファンディングのプロジェクトを立ち上げた。
Don’t stop DJ BAR Bridge(CAMPFIRE)

このプロジェクトで、お店のスタッフが普段から着ているTシャツがリターンのひとつとして出されていたのだが、そこに書かれていたテキストがすごく引っかかった、というより気持ち悪くて吐きそうになった。

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"I understand fucking Jap, asshole."

開店当初からだったのか、ずっとスタッフの制服として使われていたらしいんだけど(あれ?ってどこかのタイミングで思った記憶も確かにあった)。
俗に放送禁止用語と呼ばれるワードのオンパレード、そんなのをドヤッと着ていたのかって気持ちと、これまで気づけなかった悔しさだったり、色んな感情が渦巻いてこの一週間くらいずっとモヤモヤ・イライラしていた。

バーに並んでいる海外のお客さんが着用してくれているスタッフを見て爆笑している絵を見ててそれだけで僕のモチベーションに繋がりました。

とデザイナーの人がTシャツについても触れているので、お店としてはお客さんもお墨付きのジョークなんだとは思うけど、あまりにもセンスがなさすぎる。
一応メッセージを説明すると「(見た目ガイジンだけど)オレ日本語しゃべれるよ!」という、外国人のお客さんとスタッフの間で交わされるクラブあるあるなシーンがネタなんだろう。

なんでこんなに気持ち悪いんだろう?って、自分の気持ちを整理するとこんな感じ。
1. 誰かを侮蔑するワードを使った表現
→F/J/Aワードのどれも、普段の会話であればあえて使う必要のないワードである。それぞれを単一で考えてもポジティブに使われることがほぼない。個人的にはワードどうこう抜きに、テキストまんま言ってくる客がいれば出禁にしても良いくらい笑えないジョークだと思っている。
同じ業界の話でいけばNina Kravizがコーンロウにしたことで批判を集めるなんてこともあった。
2. それをリターンとして選んだ想像力のなさ
→主にお店のファンがこのTシャツを手に入れることになると思うけれど、その人達がお店の外に(ただのジョークとは伝わりにくい)Tシャツを着て遊びにいった時に本人はお店を応援しているつもりでも、着ている姿を見られることでその人のセンスが問われることが出てくる。そういう雑なジョークをひとり歩きさせるリスクにお店が無頓着なこと。
3. 差別的な表現がスルーされてる現状
→お店の存続がかかっているという状況下だからなのか、そもそも誰も気にしていなさそう、①②をあんまり問題視する声が見られない。「センスないよね」って話は数人の友人としたけれど、SNSだったりテキストでは見ていない気がする。

人種や性別や年齢などに関係なく、誰もが安心して遊べるようにすべきお店でこういった表現をしてしまう想像力のなさ。
これまで「クレームなんてなかった」のかも知れないけれど、例え発信する側のジョークだったとしても、なにか表現に対して「イケてない」と言うことはハードルが高い。その気持ちを伝えること自体が多様性を否定しかねない、みたいなジレンマがいつもついて回るから。

お店としての意図はどうであれ、それを見た人が嫌な気持ちになる可能性があるものをおおっぴらに発信するのは配慮がなさすぎる。
プロジェクトページに書いているように、お店の歴史からくる歴史的価値やお客さんの幅広さについて言及するのであれば、コロナ禍でも話題に上がるエンターテインメント業界の中にいるお店であること、インバウンド云々の流れでは日本を代表するパブリックな場であることに対して、より責任感を抱いてほしかったなと思う。

既に公開され支援も集まっているプロジェクトでもある中、お店に対してコメントを求めるとか、リターンを考え直せとか偉そうに言うつもりはさらさらない。
思い入れもあるし普段の生活の中に入り込んだお店ではあったので、ただ黙って「もう二度と行かない」なんて選択肢は取れず、飛ばされたジョークに嫌な気持ちを抱いた一人の客として、少し落ち着いて思いをまとめてみました。

P.S.
プロジェクトページのトップにも貼られているResident Advisorのドキュメンタリーはめちゃくちゃ良いので、目薬代わりにどうぞ。

毎週金曜日にレギュラーとしてプレイするDJ NORIを観ながら「たった1000円払うだけで、NORIさんのDJを週2回(ZEROというクラブでもレギュラーイベントがある)も観られる東京ってめちゃくちゃ恵まれてるな!!しかもワンドリンクついてくる!」ってリアルに涙したこともあるくらい良いお店なので、営業再開したタイミングで遊びに行ってみてください!

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