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伝説のウォッシャーマン

ぼくは、ウォッシュレットが好きだ。

最高のリフレッシュアイテムの1つと言っても過言ではない。数多くの巨人(便意)たちを前にして立ちそびえてきた、ぼくのウォールマリア(肛門)を優しくほぐしてくれる。

ノズルから水を浴びているあの瞬間は、「うんち、よくここまで我慢できたね。頑張ったね」って誰かに、ねぎらわれている気持ちになるのだ。彼女のいない独身サラリーマンをねぎらってくれる存在は偉大なのである。今日はそんなウォッシュレット魅力を読者に伝えたい。


おっぱいがAカップ、Bカップと数えられるように、ウォッシュレット好きにはレベルがある。日常生活でウォッシュレットを使うくらいの人を「ウォッシュレッター」、便をしている時間よりウォッシュレットを使う時間の方が長い人を「ウォッシュレット狂い」と呼ぶ。

そして、ウォッシュレットの快感に取り憑かれ、TOTOが意図しないウォッシュレットの魔改造を施すものがいる。それが全世界のウォッシュレッターから、あがめられる存在「伝説のウォッシャーマン」である。

これは、とある「ウォッシュレット狂い」が「伝説のウォッシャーマン」になるまでを描いたドキュメンタリーである。

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男は、23歳で「ウォッシュレッター」としてデビューした。ウォッシュレット界では、遅咲きの年齢。だが、デビューしてからは、その才能はすぐに開花した。男の家にはウォッシュレットがなかったため、技のチャレンジは常に実家のウォッシュレットであった。男はそこで、次々に難易度の高い技を習得していった。

まずは基本技。ウォッシュレットの水圧をあらかじめ「強」にしてから発射させる「ストロンゲストマン」。そして、便座を上げてウォッシュレットとの間合いをゼロにして発射させる「ゼロリリース」。そして、「ストロンゲストマン」と「ゼロリリース」を複合させた高難易度技「ストロングゼロ」。これらの技をわずか1年足らずで会得した。

また、これらの技を使うたびに実家のトイレマットが引くくらいビッチャビッチャになっていた。その度に、トイレマットを洗濯していたのだが、母親には「ウォッシュレットで全力で遊んでいた」などとは決して言えず、「おしっこを引っ掛けた」と嘘をついて、トイレマットを洗濯していた。その度に、母親には「お前は、おしっこ座ってやれ!!」と怒られていた。

男は、その後も次々を技術を磨いた。大便とウォッシュレットを短いスパンで繰り返す「コンビネーション」。男性なのに「ビデ」をあえて使う「メンズビデン」、冬場なのにあえて温水を使わない「Coldplay」などの芸術点重視の技を会得。気がつけば「ウォッシュレット狂い」になっていた。

もはや、ウォッシュレットのために、うんこしてたし、うんこするために、飯を食っていた。つまり、ウォッシュレットのために生きていたといっても過言ではない。表面こそただの独身サラリーマンだが、その下には窺い知れないほど、ウォッシュレットへの野望を秘めていた。

誰もが、男は「伝説のウォッシャーマン」になれる。そう信じてやまなかった。

しかし、男は病に倒れた。

男は痔であったのだ。肛門を騙し騙し使い続け、己の限界に挑んだ結果、痔の状態は悪化。肛門からは便座が血の海と化すくらい血が出た。痛すぎてウォッシュレットさえも使えず、少し濡らしたトイレットペーパーでお尻をちょんちょんと触れることしかできないくらいに肛門がダメージを受けていた。

さらに、不幸は重なる。

2年前の冬、男は肛門科でポリープと診断された。復帰は絶望的であった。男は、大腸を修復するために、手術を受け入れた。手術前に飲まなくてはいけない下剤が原因で、病院までの道のりでうんこを漏らすなどの軽いハプニングがあったが、手術は無事に終了した。

術後、大腸は無事に回復し、痔の状態もかなり良くなっていた。だが、男はウォッシュレットに恐怖心を覚えていた。今までのようなウォッシュレットの使い方をしていると、すぐに肛門が崩壊してしまう。その恐怖心が原因でいつからか男は普通のウォッシュレットの使い方で、おしりを洗う、ただのウォッシュレッターになってしまっていた。


数年後。男に転機が訪れた。男が引っ越した新居のトイレにウォッシュレットがついていたのである。いままでウォッシュレットがない家に住んでいたため、ウォッシュレットをこれほどまでに身近に感じたことがなかった。すると、男のウォッシュレットに対する恐怖心が徐々に消えていき、いつの間にかウォッシュレットの水圧ダイヤルは「強」に固定されていた。

「また、ウォッシュレットと本気のバトルがしたい」男はそう思うようになっていた。幸い一人暮らしなので、トイレマットをどれだけ洗おうが、誰にも何も言われない。環境は整っていた。男は決断する。「伝説のウォッシャーマン」になろうと。

「伝説のウォッシャーマン」。それは、TOTOが意図しないウォッシュレットの魔改造を施すもの。それは孤高の存在。それは、飽くなき探究心が生んだ魔物。男は、ウォッシュレットというゴールのないダンジョンへ突き進む。

男は針で穴を空けたセロテープを取り出し、ウォッシュレットに巻きつけた。ウォッシュレットの射出口をあえて絞ることによって、水圧を最大限にしたのだ。人類の英知の結晶、でんじろう先生も驚きの科学。そのとき、ウォッシュレットは洗浄という本来の役目を捨て、エクストリームスポーツとして昇華されていたに違いない。

今から行われようとしていることは、男の肛門に相当なダメージを強いることになる。ただ、男は快楽に負けた。「快楽」か「肛門」か。ウォッシュレッターにとって、避けられない選択肢だが、男は「快楽」を選んだ。そして男は深い深呼吸をして、ウォッシュレットにボタンを押した。

ついに、その時がきた。

「ウゥィィィイィィィィィン」というモーターの回転音とともに射出されるノズル。便座に座っている状態では、その状態が確認できない。まるで目隠してジェットコースターに乗っている気分だ。

いつもより、音が長く、そして近く感じる。いつもは、肛門を癒してくれる存在のウォッシュレットのノズルが、まるでバズーカ砲を突きつけられいるかのようだ。

そして、振動と音が止まった。

水が来るのはもう間も無くと悟った男。手に汗を握る。こわばる大腿四頭筋。男は、足の指でトイレマットを全力で掴んで踏ん張った。その直後だった。


「シュャァァアアアアアァァ!!!!」


猛烈な勢いで発出された水は、男の肛門ではなく、右太ももに突き刺さった。なぜか。セロテープを貼ったあと、ウォッシュレットを一度便座の奥に戻してしまったため、セロテープの位置がずれてしまったのだ。

男は、痛みのあまり仰け反り、便座から立ちあがり、ドアにもたれかかった。すると水はトイレの壁に突き刺さる。そして壁に叩きつけられた水はトイレ全体に拡散する。小さな水の粒が飛翔する。

「トイレに雨が降っている」

多分、この表現が正しい。それくらい悲惨な光景だった。しかし、男は痛みのあまりすぐに動くことはできなかった。

映画「ショーシャンクの空に」より


男は、痛みをこらえながら、ウォッシュレットのボタンを押し、水を止めた。トイレは、今までで最高にビッチャビッチャであった。

芯まで水を吸ったトイレットペーパー。冷たくなったトイレマット。髪から滴る水。男が着ていたniko and ... で買ったベースボールシャツは濡れて乳首がくっきり透けていた。niko and ... の最後の"..."くらいくっきり乳首が透けていた。

男は、膝のあたりまで降ろしていた、濡れたパンツとズボンをしっかりと履いた。

そして心の中で確信した。これだからウォッシュレットはやめらんねぇ。

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ウォッシュレット好きの読者も是非、ウォッシュレットに魔改造を施して伝説のウォッシャーマンにチャレンジしてもらいたい。

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